妄想小説です。ご注意ください。BLの意味がわからない方はブラウザバックでお願いします。

 

 

 

 

翔の感覚では積載されていた荷物の半分にも満たないような、そんな体感なのだ。

 

香辛料を仕入れるための銀貨や、ヴェネツィアから持参したはずの交易品・・・食糧にしろ何にしろ、これで全量だと言われても翔には納得ができなかった。

 

「ねぇ・・・潤、これって誰かが荷物を隠してるとかないんだよね?だって、うちの船・・・沈めて奪った戦利品でしょ」

 

潤にだけ届くような小声で・・・けれどそこには無意識に翔の怒りの感情が込められ低くなった声でそう確認する。

 

その言葉の意味を瞬時に理解した潤は、

 

「余計なこと気にしてんじゃねーよ?これで全部だ」

 

翔を疑問をかき消すように強めの口調で言った。

 

「あの・・・潤、怒ってるの?」

 

「怒ってない!」

 

「怒ってるじゃん!」

 

「怒ってないって言ってんだろう?!」

 

突如として始まった軽い痴話喧嘩的な言い争いを興味深げに見つめていた面々も、

 

「もう、喧嘩は後にして!作業が終わらないでしょ!」

 

クォーターマスターである雅紀の一声で視線は獲物に戻し、潤もは極まり悪げな表情で雅紀の隣に立つ。

 

・・・素直に事情を説明すれば、翔の恨みは1/5程度にまで軽減されるだろうに・・・変なプライドというべきか意地というべきか。

 

そんな複雑な感情が、潤の口を素直にしてはくれないらしい。

 

雅紀から布袋に入った・・・0.5と言われたものの、それでも両手で抱えて余るくらいの布袋。

 

受け取った翔は、中身を確認してからザッとこの場にいる全員に視線を走らせ人数を心の中でカウントする。