放課後。
夕焼けの色が入って
屋根の間から渡り廊下を照らしている。
教室も、下駄箱も。
すべて夕焼け色に染まっていた。
見た人は「綺麗。」だと言うだろう。
普通の人なら立ち止まる景色。
そんな景色の中を1人だけ可笑しい人が歩いていた。
むしろ歩くにしてはスピードが早すぎる。
どっちかといえば走るに近い。
なで肩の肩からずり落ちそうになるパッションピンクの
少し派手なリュックをおさえながら彼女は走っていた。
『廊下は走るな!』という
もう何年も前に張り出された張り紙の横を通り過ぎ、
彼女は額に汗を浮かべて下駄箱へと走っていった。
―――――――――――――――――――――――――――・・・
靴箱前に呼び出された。
「あ・・・あのっ、えとー・・・」
んだよ。早くしろよ。
俺は生徒会の仕事が残ってんの。
そんな事を思ってる胸の中とは正反対の
爽やかスマイルで答える。
「ん?どうした?」
「えっ・・・///
すすすすすすっ・・・好き・・・です//」
だろうな。お前の言いたい事なんか
呼び出されたときから分かってたっての。
相手の女は顔をりんごのように赤くして
うつむきながら返事を待っている。
返事なんて分かってるくせに。
面倒くせーなぁ。
「顔・・・上げて?」
「・・・っ///」
俺の顔を見るなり
りんごが一気にゆでダコになった。
どうやら返事に期待をしているようだ。
・・・ぶっ。
哀れな奴。
知ってんだろうが。
俺が今までこの学校で女に告られても
一度もOKしたことないの。分かってんだろ。
「えっとー・・・まず、簡潔に言っちゃうと
・・・気持ちには答えられない。ゴメン。」
そう言った瞬間の女の顔の代わりようはすごかった。
真っ赤な顔を一気に青白くして目に涙を溜めながら
吐いた捨て台詞が
「意味わかんない。このハゲ!」
「・・・ぶっw」
おいおい。告白しといて何だ君。
ハゲでは無いよ俺。毛根活躍中だよ。現役ですよ。
思わず吹いてしまった。
そして吹き出した俺に向けて「信じられない」と
言ったような驚きに満ちた顔をしながらその場を走り去ってしまった。
俺におもいっきりぶつかって。
「・・・っち。しゃーねーな」
俺は(一応なんかもらえるかもしれないので)後を追いかけた。
―――――――――――――――――――――――――――・・・
廊下の曲がり角で立ち止まってる私をよそに
モデルになれるんじゃないかと思うくらいに
美人な先輩らしき女の人と、
この学校の生徒会長で、私が苦手とする種族。
同じクラスの”櫻井翔”がその後を追っていく。
一瞬、柑橘系の感じの甘い香りがしてゾッとした。
男のつける香水は嫌いだ。第一、何で男が香水を。
とか言うどうでもいい疑問を抱きながら
自分のクラスの靴箱へと向かおうとしたとき、
足に違和感があった。
「・・・・ん?」
ゆっくりと視線を落とすと
紺色の革に「南高校 第2学年 櫻井翔」と
金色の目立つ字でかかれた生徒手帳が落ちていた。
最悪だ。
この学校に来て、いまだに男子とあまり関わりを持ったことのない
私にとっては最大のピンチだ。
男子としたことのある唯一の会話が
隣の席の持田くんに
「ねぇ、そのウィンナー貰うってもいい?」
と言われただけ。
そのとき私は、
そんなにムチムチなのにまだ食うんだ。と思った。
とかいうのはどうでも良くて。
この生徒手帳。拾わないほうが身のためだが
案の定、周りにいる人達がこちらを見ている。
本校の生徒会長の生徒手帳だけ紺色だから。
櫻井翔のものだって誰だって分かる。
拾わなかったらイジメにあうだろう。
ちっ。生徒会長ってだけで何故こんなに莫大な
信頼を得てるんだクソ。
お前を信頼するぐらいならカツオを信頼するわボケ。
とか内心で叫びながらも視線を気にしつつ
ゆっくりと生徒手帳を拾おうとした
、とその時。
ひらり。
軽く持ち上げた衝動で
生徒手帳中から落ちた一枚の紙を反射的に拾ってしまった。
この紙が、歯車を狂わせていくのであった。
裏話。

うふ
