スプリットからバスで約9時間。ボスニアヘルツゴビナの首都サラエボへ。
建物の雰囲気がこれまでとはガラリと変わり、なんか昔の日本家屋っぽい。
なんか懐かしいような不思議な感じがした。
ここは15年前まで戦場だったらしい。街のいたる所に弾痕が残ってた。
僕にはこの街に友達がいる。ゴランって20歳くらいのマッチョマン。
ミルコ・クロコップを名前を変えて20歳にした感じの奴。
色々な経緯があって仲良くなった。
そいつがサラエボの街を案内しながら言った。
「15年前の戦争で俺のじいちゃんは死んだ。お前をじいちゃんが死んだ場所へ連れてってやるよ」
20歳のミルコは脳みそまで筋肉なんだろうな。
僕がそこに行きたいと思ってんのか?
まあいいや。逆らってもケンカでは勝てそうにない。
ミルコ(ゴラン)のじいさんが亡くなった現場。
ビルの壁に弾痕が馬鹿ほど残ってた。下手くそめ。
ゴラン(ミルコ)が言った。
「ここでじいちゃんは死んだ。あと数秒はやくこのドアに入ってれば今でもまだ生きてた」
弾痕のわずか1メートル横にビルへ入るドアがあった。
「そうか。とても気の毒な事だ。今、俺がじいさんの代わりにこのドアをくぐるよ」
僕はこんな無意味で非常識なジョークが彼に通じるとも思えなかったので黙ってた。
しんみりとなったところでゴランが明るく言った。
「サラエボのスイーツを食いに行こう」
カフェに連れてってくれた。
ドロドロの濃いコーヒーと、クッキーの上に舌が痺れるほど甘い蜜がかかったお菓子。
もう3日何も食べなくてもいいやと思うほど、
カロリーと甘味と苦味を凝縮したスイーツタイムだった。
「じいちゃんも甘いものが好きだった」
彼はこの甘味のブラックホールの様な食物をぺろりとたいらげてそう言った。
「お前のじいちゃん、あっこでドア入ってても糖尿でとっくに死んでるぞ」
もちろん、その言葉はとろみのあるコーヒーと一緒に飲み込んだ。
僕はこの街が大変気に入り、ゴランとの再会の事もあり長居する事になった。
