クラスメイトたちは開放的な笑顔に溢れ

鐘の音と共に早々に去っていった。

旅行に行くとか、塾の夏期講習だとか。



俺は1人立ち上がれず、窓の外を眺めていた。

最近は溜息すら出ない。



今日で1学期が終わった。

リミットとされた今日、相葉さんは帰っては来なかった。

留年が決定なんだろうな。

もうやめてしまうのかもしれない。




結局、相葉さんの気持ち、分かんなかった。

なんでバスケ辞めちゃったのか

なんで学校に来れなくなっちゃったのか

一番近くにいたのに、

あんなに楽しそうに笑ってたのに。


もうあの笑顔、見れないのかな


会いたいな


こんにゃろって、

全然痛くないヘッドロック

相葉さんから香るボディソープの匂い


会いたいよ


帰ってきてよ


相葉さん




「ニノ!!いた!!」

ガラッと力任せに開けられたドアから

ゼェゼェと肩で息をする潤くんが叫んだ。


「早くっ!早く来いっっ!」


荷物をまるでかき集めるように抱えて

俺の手を取って走り出した。


「潤くんっ!?何っ!?」


「いいからっ急げ!!」


固く掴まれた手首がジンジンとするし

全然止まってくれない!


待って待って

どこまで行くの!


声すら出ない



結局寮まで全速力で走らされ

俺は息も絶え絶え玄関にへたり込んだ。



「じっじゅっじゅんっくんっなっに


ダイニングからドタドタと足音が聞こえ、

呼吸がままならない俺の背中に声をかけたのは細木のおばちゃんで。


「松本くんありがとねぇ。二宮くん!今ねぇ相葉くんのお母さん来てるのよ。待ってもらってるから!話聞きたいでしょ?」



相葉さん、お母さん



相葉さん!!



靴を脱ぎ捨て

もつれる足で転がるように走った。