知らない街をウロウロ散策。
少し歩けば何でもある
片道1時間かけてようやく大型ショッピングモールに辿り着くような田舎とは比べものにならない。
ここには何でもあるんだなぁ
服にコスメに…雑貨にブランドもの…
右を見ても左を見ても見慣れないお店ばかり
ここが和也の日常
本当に字の如く、住む世界が違うんだなぁ
全く知らない街で
たった1人自分だけが居場所がないような
そんな不安を感じていた
「あらぁ〜あなたこないだニノちゃんが連れてきた子じゃな〜い?」
声のする方を振り返る
「カオルさん
こないだはお世話になりました」
和也に連れられていった美容室の店長さん。
身振り手振りは女性のように綺麗で、姿は綺麗目なお兄さん。
「いいのよぉ〜女の子を綺麗にするのが私の仕事なんだから♡ところで、こんなところで何してるの?」
「あ、いえ、散歩を」
「ふ〜ん。
あ!そうだお昼は?もう食べた?」
「いえ、まだ」
「じゃあ美味しいところ連れてってあげるわ着いてきなさい」
「えっあ、はい」
言われるがまま後をつけていく。
着いていった先は、オープンテラスのあるお洒落なカフェ。
案内された席に座る。
「好きなもの頼みなさい」
「あ、はい。えー…っと」
「ふふ、このお店ならコレか…コレがおすすめよ♪」
「じゃあコレにします」
「ん」
「ところでアナタ名前は?」
「あ!朝陽です」
「そう。朝陽ちゃんねよろしく。
こないだは突然だったし、ゆっくり話もできなかったから」
「そうですね
私も突然のことで驚いてばかりで」
「ふふ、そんな初々しいところが良いのかもね、ニノちゃんも♡」
「えっ」
「あー、大丈夫。ニノちゃんから聞いてるから彼女なんでしょ?」
「あ…はい」
「ふふ、照れちゃって、可愛い」
「えっ」
ふいに頬を撫でられ驚いているところに
「お待たせしましたーご注文の…」
食事が並べられた。
「ほら、冷めないうちにいただきましょう」
「あ、はい」
ただのスキンシップかな?
男の人を好きみたいだし…ね
その後何事もなく食事を終え、帰りに夕飯の買い出しをして帰宅する。
夕飯の支度を終えて、ひと息つく。
何度も何度も時計を確認する。
和也からの連絡はまだない…
「遅くなるって言ってたし…」
テレビの音だけが鳴り響く
内容は全然入ってこなくて
つまらない
ご飯は一緒に食べたいな…
やることもなく
お風呂に入ることにした。
シーンとする浴室
…私の何してるんだろ
好きな人にご飯を作って、好きな人の帰りをただ待つだけ
寂しさと不安が押し寄せる。
お風呂から上がっても
まだ和也は居ない
連絡も…ない
時計はもうすぐ23時…
テレビも見飽きて
用意した夕飯を前に机に突っ伏した
だんだんまぶたが重くなる
「お疲れ様でしたー」
やっと終わった。
思ったよりも仕事が押しちゃったな。
朝陽はもう寝たかな?
「二宮さん、お疲れ様でした
どこも寄らずに自宅へお送りしてよろしいですか?」
「うん、自宅まで。七海さんも疲れてるのにごめんね。ありがとう。」
「いえ、これが私の仕事ですから
ここのところお疲れですよね?着いたら起こしますから、寝ててください」
「ふふありがとう。
でも、朝陽が待ってると思うと眠れなくて」
「…そうですか」
「まぁ、でも遅くなっちゃったから、寝てるでしょうけどね」
「そう…」
ピロリン
「ん…寝ちゃってた」
着信音に目を覚ますと、和也からのメール
“今から帰るよ”
“お疲れ様”
“起こしちゃった?”
“ううん。起きてたよ待ってるね”
“遅くなってごめんね。すぐに帰るから”
朝陽待っててくれたんだ
疲れも吹っ飛んじゃうね
窓ガラスにニヤけた顔が映り込んで
恥ずかしくて慌てて口元を隠した