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→ road
平日の昼下がり。
澄んだ空気に、絵の具を落としたような一面の水色。薄い白がやわらかく空に広がる。
行き交う車の流れに、手をつなぎ歩道を歩く親子。
そよぐ風、揺れる木々、隙間からちらちらと淡く射す光。
そんな日常の景色にすら、どうしてなのか 涙がこぼれる。
「人を好きになる」とは、こんな感情だっただろうか。
押し寄せるこの感情に抗うなんてこと、どうしたって不可能なことのように思えた。
恋とは”する”ものではない、とはよく言ったもので。
これが、「オチル」ということ--------
洗濯物を干し、買い物に出かけ、笑顔で挨拶を交わす。
毎日をこなす私は、きっと何も変わってはいない。
けれど。
「恋をする」ということは、こんなにも世界の色を変えてしまうんだ。
季節は冬を迎えようとしていた。
*
カズの仕事は激務で、深夜を越えて帰る日が続いている、らしい。
(ごめん!今日行けない 夜連絡する)
約束していた日の昼過ぎに入ったLINE。
ま・た・か・よっ!(`Д´)
(わかったよー あんまりムリしないでね)
ムリせず仕事ができるかよ、と自分にツッコミつつ返事を打つ。
ちゃんとご飯食べてるかな。ちゃんと寝てるかな。ゲームばっかしてないでしょうね?
決して弱音を吐かないひとだから、余計に心配になる。
そして、心配の裏ににじむ、あたしのキモチ。
昔した恋愛のように、会いたい気持ちを最優先した言動はできなくて。
飽きられたとしても、他に女がいたんだとしても。
それも仕方がない、とどこかで冷めたように思う自分も確かにいる。
(言いたいことあんなら言えって。そんな ものわかりいいフリすんなよ)
その言葉を思い出してみるけれど、これが我慢なのか、後ろめたさを感じてのことなのか、自分でもわからない。
いっそ、10代の頃のように周りなんて見えなくなってしまったらいいのに。
経験を、はじめて邪魔だと思った。
《 終わりから始めた恋 今はかみしめさせて 夢でもいいから 》
*
夜。夕飯を終え、お風呂に入り、録画したドラマをみる。
ぽっかり空いてしまった予定は、日常の夜に消えていった。
そろそろ寝ようかなー、と思っていた頃、LINEが鳴った。
カズからごめんねメールかな、と携帯を見る。
(電話していい?)
ええええ!で、電話となっ!?
電話ごときで驚くなあたし!いや、でも電話…(゚Д゚≡゚д゚)アタフタ
やりとりはいつも 短いLINEだった。
あたしのこの環境を知ってるから…
それも思い上がりかな、ただあたしとは そーゆーんじゃないってだけなのかもしれない。
(10分待って)
舞い上がる気持ちを抑え返信すると、すぐにOKのスタンプが返ってきた。
慌ててその辺にあった厚手の服を羽織る。
どきどきどきどき
先に寝室に入った彼を起こさないようにそっと玄関をでた。
電話。電話!カズの声が聞けるっ!!
深夜0:30
携帯だけを握りしめ、家を出た。
とりあえず灯りを求め コンビニへと早足に歩いていると、手の中の振動が着信を知らせる。
ばくばくばくばく。だから落ち着けってば!あたしの心臓!!(。´≧Д≦`。)
「もしもし(どきどきどきどき)」
『いまどこ?』
「え。外だけど…」
『だからどこ?』
「うちの近くのコンビニ…」
しばらく間があって、『ローソン?ファミマ?』
「え…?ローソンだけど…??」
ええと。話しの趣旨がまったく見えませんけども?
『そこで待ってて。今から行く』
「えええっ!?」
『3分で着くから』
そう言って一方的に切られた。
えええええ???どゆこと!?そこってどこ!ここ?3分!?
パニクっていると、3分もたたずに1台のnoteがコンビニの前に停まる。
う、そ、でしょ…
でてきたのはカズだった。
《 今はまだ 想い出にはできない したくないの
あなたと二人で見てるこの夢が 終わるまで 》
continue
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