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平日の昼下がり。

澄んだ空気に、絵の具を落としたような一面の水色。薄い白がやわらかく空に広がる。





行き交う車の流れに、手をつなぎ歩道を歩く親子。

そよぐ風、揺れる木々、隙間からちらちらと淡く射す光。

そんな日常の景色にすら、どうしてなのか 涙がこぼれる。


「人を好きになる」とは、こんな感情だっただろうか。



押し寄せるこの感情に抗うなんてこと、どうしたって不可能なことのように思えた。
恋とは”する”ものではない、とはよく言ったもので。


これが、「オチル」ということ--------




洗濯物を干し、買い物に出かけ、笑顔で挨拶を交わす。
毎日をこなす私は、きっと何も変わってはいない。
けれど。
「恋をする」ということは、こんなにも世界の色を変えてしまうんだ。


季節は冬を迎えようとしていた。








カズの仕事は激務で、深夜を越えて帰る日が続いている、らしい。


(ごめん!今日行けない 夜連絡する)


約束していた日の昼過ぎに入ったLINE

ま・た・か・よっ!(`Д´)


(わかったよー あんまりムリしないでね)


ムリせず仕事ができるかよ、と自分にツッコミつつ返事を打つ。

ちゃんとご飯食べてるかな。ちゃんと寝てるかな。ゲームばっかしてないでしょうね?

決して弱音を吐かないひとだから、余計に心配になる。


そして、心配の裏ににじむ、あたしのキモチ。


昔した恋愛のように、会いたい気持ちを最優先した言動はできなくて。

飽きられたとしても、他に女がいたんだとしても。

それも仕方がない、とどこかで冷めたように思う自分も確かにいる。



(言いたいことあんなら言えって。そんな ものわかりいいフリすんなよ)


その言葉を思い出してみるけれど、これが我慢なのか、後ろめたさを感じてのことなのか、自分でもわからない。

いっそ、10代の頃のように周りなんて見えなくなってしまったらいいのに。


経験を、はじめて邪魔だと思った。








 《 終わりから始めた恋 今はかみしめさせて 夢でもいいから 》








夜。夕飯を終え、お風呂に入り、録画したドラマをみる。

ぽっかり空いてしまった予定は、日常の夜に消えていった。


そろそろ寝ようかなー、と思っていた頃、LINEが鳴った。

カズからごめんねメールかな、と携帯を見る。


(電話していい?)


ええええ!で、電話となっ!?

電話ごときで驚くなあたし!いや、でも電話…(゚Д゚≡゚д゚)アタフタ




やりとりはいつも 短いLINEだった。

あたしのこの環境を知ってるから…

それも思い上がりかな、ただあたしとは そーゆーんじゃないってだけなのかもしれない。


10分待って)


舞い上がる気持ちを抑え返信すると、すぐにOKのスタンプが返ってきた。


慌ててその辺にあった厚手の服を羽織る。

どきどきどきどき

先に寝室に入った彼を起こさないようにそっと玄関をでた。




電話。電話!カズの声が聞けるっ!!

深夜030

携帯だけを握りしめ、家を出た。



とりあえず灯りを求め コンビニへと早足に歩いていると、手の中の振動が着信を知らせる。

ばくばくばくばく。だから落ち着けってば!あたしの心臓!!(。´≧Д≦`。)


「もしもし(どきどきどきどき)」


『いまどこ?』


「え。外だけど…」


『だからどこ?』


「うちの近くのコンビニ…」


しばらく間があって、『ローソン?ファミマ?』


「え…?ローソンだけど…??」


ええと。話しの趣旨がまったく見えませんけども?



『そこで待ってて。今から行く』

「えええっ!?」

3分で着くから』


そう言って一方的に切られた。

えええええ???どゆこと!?そこってどこ!ここ?3分!?


パニクっていると、3分もたたずに1台のnoteがコンビニの前に停まる。




う、そ、でしょ…



でてきたのはカズだった。




  

  《 今はまだ 想い出にはできない したくないの 


       あなたと二人で見てるこの夢が 終わるまで 》




continue



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