いつもはちゃんと準備してるのに・・・



いつもはできるのに



肝心な時に限って大事なものを忘れたりって



ありませんか?







準備万端。ケーキも作った



きれいにラッピングした。



あなたの誕生日に相応しいいつもと違って




恥ずかしいほどかわいいワンピースに身をつつみ、



時計に目を向けると、出発時間を10分も経過していた




流行のカーディガンを肩に巻いて、ケーキを抱えて



家を出た。



時間に厳しい潤くんの顔を想像しながらエレベータが今日に限って遅く感じるのは



気のせいなんだけど、でも、4階でとまり、2階でとまり


そのたびに開閉ボタンの前に立つアタシは「閉」ボタンをさわしなく連打した




エントランスを駆け抜けぬと、ワンピースが翻り、


1回転したりする余裕


こういうときは落ち着いて。



階段を3段ゆっくりおりると、案の定車によっかかる潤くんは腕を組んで



しかめっ面で靴でコンクリートをカツカツと鳴らした



「待った?」




「待ったよ。でもさ・・・・」




アタシの顔をみて吹きだす潤くんが



「その方が全然かわいい」



そう口にした



その方?



特に変わったことはしてない。



髪もストレートアイロンで伸ばし、



ルージュは塗って・・・・・



メイク?いつした?



パックでお肌の手入れして・・・




「あっ・・・・アタシ」




「すっぴん・・・それスキだな」




えっちのときもちゃんと薄化粧してたのに



まさか、こんなときに限ってメイクし忘れた



ケーキを片手に持ちかえると、動揺する自分の手から大事なバースデイケーキの箱が落下した




「あちゃー」



「やっちゃった」



ふたり同時にしゃがんで箱に手を掛けるとまじまじすっぴんをみられて



うつむくと、アゴに手をかけ、グイってもちあげられ



30歳になった潤くんの唇がせまってきた





「オレに抱かれるときくらいすっぴんになれよ。かわいいんだから」




・・・・・・・・・




アタシのコンプレックスだった小さく垂れた目じりも、薄い眉も



もう隠さなくていいんだね



「おまえが風呂一緒しない原因ってメイクが落ちるからだったとか・・・」




「うん。まぁ」



「じゃ・今夜はこのぐちゃぐちゃなケーキ食って、そのあとで一緒するか?」




「するぅ」





おわり



ドリパスで隠し砦の上映券かっちまった。


武蔵のセクシーさスキだもん