あの女通報しやがったな




俺はマンション中庭の樹木の影に身をひそめて


玄関前が静かになるのを待った。



逃げる元気なんかねぇ


それに、潤くんの少しでも近くにいたい



君のDNAがバルコニーから降ってくるような気がして


そびえる無機質な壁に沿って上に視線をあげていった




警察がうろうろしてんのに、窓から覗いてるやつがいないことが驚きだ



会いたい。



心も体もこんなにおまえを欲してるんだぞ





周りに目をやり、少しずつ尻から後ろへずり下がると、マンションの外階段が見えてきて



キーロックされているであろうドアノブをひねると


あっさり開いてしまった



「行くかっ」





いずれ捕まるなら、少しでも潤くんの傍にいきたい


甘ったるい香りの中から香る微量の青臭さ



少年のようなやんちゃな顔と掠れて低い声のアンバランスさ



もし、再会できたら、オレはお前を鳴かせてやりたい





体勢をで低くして、地を這うように昇っていく



階段に5階くらいで呼吸があがる。しかしながら



今夜のオレの心臓や肺は、かなりタフそうだ





20階まであがってやる。





潤くんを求めてなんとか上がった20階の廊下への



繋がっているだろう固いドアノブを握った。



氷のように冷たいドアノブに体中に鳥肌がたつ



ぎっ・・ぎっ・・




鈍い音は数ミリ動いただけで



残念な結果に終わった





「潤・・・オレはここだ。気づけ」




ここまできてあきらめんのか?




ここから1階に降りていくくらいなら



いっそ飛び降りてみるか・・・ふふっ



目がくらむような外の景色に


浮かぶパトカーの赤ランプ



蟻ん子のようにうごめくサツ





「潤。助けろ。」



19階の扉がカタカタ鳴っていることに



思いついた


もしかしたら、どこかの階の扉はキーロックされてないんじゃねぇかってな






カクカクする足で壁に沿って、階段を1段1段踏みしめるように


降りてゆく。



逸るキモチについていかねぇだらしない足元に向かって


ツバを吐き捨てた






19階の扉の前で掛けたドアノブは軽かった



重いはずの肉厚の扉がチカラつきたオレには不思議と軽く感じた




人気がない廊下で歩を進めると、靴音は絨毯に吸収されていく



10階で止まる2台あるうちの1台のエレベーターを押して、



しゃがみこんだ。



「まじしんどいわ」




顔は冷たいのに背中からは汗がタレ、オレは防犯カメラを気にしながらも



前髪で顔を隠して、アウターを脱いだ




サツって案外間抜けだな。クックッ・・



俺はここにいるぜ。



あの通報した女が何階かわかったら、



ひーひー言うまで・・・・



いじめぬいてやりたかったが



まぁアイドルだからな。





俺はこんなに近くにいる。。潤



20階について開くスローモーションのように遅い



ドアの間からむりやりカラダを外に放った




さてと鳴かせに行きますか・・・・



あの少年がいたとしても今のオレには



なんの問題もねぇ


むしろいてくれた方がいい





こんな俺は少し逝っちまってる




つづく



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