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快気祝いは1番強い長瀬さんが酔い潰れるまで続いた。
もう殆ど誰もがベロベロになっていて、そのままリビングで雑魚寝状態だった。
朝が来て、相葉さんに抱きしめられた状態で毛足の長いラグに横たわっている事に気づいた。
松兄も長瀬さんもソファーでぐっすり眠ってる。
相葉さんの絡まる腕をゆっくり解いて、俺は片付けを始めた。
静かに…誰も起こさないように。
洗い物を済ませて、自分が世話になっていた部屋の扉を開いた。
そこは暗くて、まだ相葉さんの帰りを泣きながら待つ俺が居るようで辛くなって苦笑いした。
ふわっと後ろから抱きしめられて、振り返る。
相葉さんが少し屈んで耳元で囁いた。
『ここで…待っててくれたんだね』
俺は小さく頷いた。
「寂しくて…日が経つにつれて怖かった」
『うん…』
「荷物…松兄がゆっくり運べってさ。俺が急に居なくなんの寂しいんだって、へへ」
照れたように笑う俺の顎を掴んで上向かされる。
重なった唇に、すぐ…溺れてしまう。
『松兄には悪いけど…ニノは貸し出し出来ないからね』
クスッと笑うから、俺も一緒に笑った。
辛い日々は長かった筈なのに、不思議だよな。
お前が側にいるだけで…
そんな事は嘘だったように感じてる。
お昼を過ぎても起きない2人を叩き起こしてから家を出た。
別れる前にDASHの店の鍵を預かって、松兄は俺と相葉さんを抱き寄せて、頼んだぞって頭をクシャクシャ撫でてくれた。
帰り道…
相葉さんが鍵を俺にぶら下げて見せる。
『寄ってから帰ろうか』
「そうだな…ブルーにちゃんと挨拶しなきゃ、アイツだってずっと待ってたんだ」
『うん!そうだね』
すっかり溶けた雪が泥水になって足元で跳ねる。
俺達はそれを避けながら店の入り口に鍵をさした。
「ブルー…ご主人様が帰ったぞ」
店の照明スイッチをオンにする。
暖色の明かりが灯り、少し大きな水槽に入ったブルーがユラリと体をうねらせた。
相葉さんが水槽の前に屈んで、指先をコンと静かに寄せる。
優しい目で微笑んで、ただいまって言うから…
俺は胸がキュッとなって耳が赤くなるのを感じた。
屈めた腰を伸ばして立ち上がると、ゆっくり俺に歩み寄ってくる。
『一杯だけ付き合ってくれる?』
「もちろん」
相葉さんはカウンターに入って、俺はカウンター席に腰を下ろした。
白ワイン…
カシスリキュール…
カランとマドラーが軽くステアして俺の前にシャンパングラスで赤いカクテルがやってきた。
冷えたグラスを手にする。
まるで俺の心の中に溜まったあの水溜りを知っているような赤だった。
甘酸っぱい味が白ワインを飲みやすくしている。
俺はグラスのカクテルを見つめながら呟く。
「あるんだろ?俺にコレを出す理由…」
ゆっくり視線を上げると、相葉さんがふわっと微笑む。
『キールって言うんだ。もう、ニノは知ってるかな…カクテル言葉は…最高のめぐり逢い…陶酔…だよ。』
俺は相葉さんからカクテルに視線を落とす。
最高の…めぐり逢い。 陶酔…。
カウンターから相葉さんが出てくる。
俺の隣に座って小指を差し出した。
俺もソッと小指を出して、病室でしたように指を絡め合う。
あの時の指切りが…最後になったって….
おかしくなかったんだ。
額を合わせて、相葉さんが囁く。
『俺達は…一つだね』
俺はクスっと笑って、合わせた額をより摺り寄せた。
鼻先が触れ合う。
「一つだよ…もう…離れない」
おまえの心臓には…俺が赤い血を流してやる。
赤い
赤い
この想いは
おまえの中を流れ続けるんだよ。
きっと…あの出会った頃から…
俺達は少しずつ…少しずつ近づいてた。
いつか一つに重なるように…
最高の…めぐり逢いだったんだ。
小指がほどけるかわりに
身体を包み込み合う腕。
口づけに酔いしれる。
口づけに溺れていく。
一緒に…生きていく。
ただ、相葉さんと歩く平凡な未来。
俺にはそれが何より大切で…
何にも変える事は出来ない。
この先を ずっと…ずっと
一緒に…
生きていくんだ。
END