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nino side


相葉さんは明日は居酒屋のランチからラストまでのシフトらしい。


麻雀からご機嫌に帰って来た松岡さんに店を返して2人で家路を歩いた。

もうすぐ大学も冬休みに入る。

大学生にとっちゃ稼ぎ時ってやつらしい。 


相葉さんは帰り道、バイトが忙しくなるかもって言ってた。

両親に少しでもお金の工面をさせたくないみたい。

本当に優しくて俺は相葉さんが大好きだと思った。

こんな素敵な人と出会えてあのバイトの面接に行って良かった。


大丈夫って言ったんだけど相葉さん、今日の事気にして、絶対送るってきかなかった。

家の前に着いて、上がってって言ったんだけど


『雨降りそうだし帰るよ。明日学校、朝からだし』

うん」

俺があんまりに俯いて返事するから心配させちゃって

『ニノキスしよ

俺が言わされてた言葉を

相葉さんが言ったもんだから思わず顔を上げてしまった。

相葉さんはちょっとだけ首を傾げて目尻に皺を寄せて笑う。

『キスしよ?』

「ふふうん

相葉さんに抱きついて、少しだけ背伸びすると丁度良い。

唇もあったかい相葉さんはゆっくり俺の頰を包んで、舌を絡めてくる。

優しく甘くて、いやらしい。

俺は幸せだ。

「んっいばさん好き。」

額を重ねて、相葉さんが笑う。

『俺もだよ。ニノが大切。大好きだよじゃあ行くね』

相葉さんが俺の腰を引き寄せて唇に軽く触れた。

うん

『連絡する。』

「うん

相葉さんが困った顔をする。

『ニノそんな泣きそうな顔しないで。帰れなくなるよ』

「ぁあ、ごめ!大丈夫!俺も連絡するね!」

『うん!じゃ!』

相葉さんの影が遠のいて行く。

街灯より向こう側へ行ってしまった相葉さんは影だけじゃなくて、全部見えなくなってしまった。



俺はさっきから

ポケットで鳴り響く携帯のバイブ音が

鳴り止まないのを


感じていた。