今日は仕入れの日。

相葉さんは車で、ちょっと店を開ける。

簡単なものは俺も手伝えるから店はOpenのままだ。


モーニングの時間が終わってすぐに出て行った。

こないだ夜景を見せてくれた近所に住んでるおばあちゃんにまたおすそ分けして帰るからちょっとだけいつもよりかかるかも知れないって言ってた。


相葉さんが居ないカウンターの中の厨房をカウンター席からボンヤリ眺める。


背が高くて、顔が良くて、とっても優しい。

笑顔が一番素敵で、いつもココでニコニコ向日葵の笑顔をくれる。


幸せすぎるよな…

なんてペタンとカウンターに頬をつけた。


カランコロン


あ、潤くん?

カウンターから身体を起こしベルの音に目をやった。


そこには何だか物凄くガラの悪い雰囲気の3人組。

「いらっしゃいませ。」

立ち上がって呟くように漏れた声には不安しかなかった。


見たことない客だな…


黒いスーツはどう見てもサラリーマンじゃない。

男達は辺りをグルッと見渡して何か探してるようだった。

ボックス席に座って、踏ん反り返る。

「ご注文は…」


1人の男がニヤニヤ俺を見つめる。

『お兄さんは注文できんの?可愛い顔してんじゃん。ねぇ、コイツあの店ぶち込んだら稼ぐぜ?』

内輪で話始めた内容を聞きながら、やっぱりまともな人間じゃない事を悟る。


「すみません…ご注文」

ガターッッン

机が男によって蹴飛ばされ派手に音を立てて歪む。

俺はその拍子にペンを床に落としてしまった。

慌てて拾おうと屈む。

ペンに伸ばした手をガッと掴まれ引き寄せられた。

「ちょっ!…んっん!!んぅゔ~っ!!」

さっき俺をからかった男に唇を塞がれていた。

腕を胸に突っぱねて暴れるのに、凄い力で腰を抱きしめられて身動き出来ない。

後の2人がケラケラ笑いながら茶化す。

『おいおい!こんなとこでおっぱじめんなよ~ハハハ』

『や、でもいい顔するぜコイツ』

「やっめっ!!」

ガタンっ!

ボックス席の机に背中が乗る。

男が両手首を抑えつけて覆い被さる。頭の両サイドにはニヤけた男2人も俺を見下ろす。

男は俺の首筋に顔を埋めてベロっと大きく舐め上げた。

ゾクっと背筋が凍りつきブルブルと身体が震え出す。

「やめっ!やめろっっ!!」

グッと身をよじったらバチンと頬に衝撃が走った。

平手打ちされた俺はだらしなく動けなくなる。

胸元のボタンが引きちぎられ、身体が固まった。

カランコロン


扉の音がして首だけで目線を合わす。

そこには潤くんが目を見開いて立っていて。

俺をテーブルの上に組み敷いた男は構わずもう一度唇を重ね舌を入れてきた。

潤くんと目が合ったままだ…

涙が流れ落ちるのをやっと感じた。

『良いとこだったのにな!また来るぜハニー』

男はチュッと俺の開いた胸元に派手に音を立ててキスすると身体を退かせた。

固まった潤くんの肩にバンっと手を乗せて

『コイツも上玉だな!』

クスクス笑い合いながら最後に言った。

『雅紀が居る時また邪魔するわ。ハニーちゃん伝えといてよ。じゃあな~』


カランコロン

カランコロン



俺はテーブルに背中を押し倒されたままの姿勢から、ズルズル床に座り込んだ。

震えながら服の袖でゴシっと唇を拭く。


固まっていた潤くんが駆けつけて、着ていたコートを俺にかけた。