Jun side


「潤の荷物…俺が用意したマンションに移してある。」

ボンヤリ灯る街灯の下で次から次へと流れる時間に自分だけ置いて行かれてる。

『翔さん…一体何なんだよ?』

「ここじゃなんだから、車乗って」

押し込められるようにして高級車の助手席に座った。


車は静かに走りだし、店を遠く後にする。サイドミラーでそれをジッとみつめていた。


『ねぇ…どこ行くの?』

「新居だよ」

『しっ新居って!言い方…仕事…どうなったんだよ…俺、借金が…』

ハンドルを握る翔さんは片手で俺の頭を引き寄せた。

「借金はもうない。…おまえは自由だよ」


『う…そだ』


「本当だよ。おまえはもう自由。だけど…約束したよな…俺から離れんなって。手、離すなよって。だから…今度は店のモノじゃなくて、俺のもんだな」

ニヤリと前を見ながら満足そう微笑む翔さん。


俺はカタカタと身体が震えて前が見えなくなった。

『もう…他の男に…抱かれなくて…いいのか?…俺…もう、あんな…あんな風に』


翔さんがぎゅっと抱き寄せて言う。

「必要ないよ。もう、そんな目には合わせない。」

ハラハラと流れた涙はいつのまにか滝のように流れ出し、嗚咽が漏れた。

車は途中で停車して、翔さんは俺を抱きしめた。


「帰ろう、俺たちの家へ」

ゆっくり重なる唇


髪を撫でる手のひら


大好きな香り


嘘みたいな本当の今。


『翔さん…俺、愛してるよ』

「フフ…先に言うなよ…潤、愛してる」