朝食を食べた潤くんは相葉さんが居る事に遠慮してくれたのか、すぐに帰ると言った。


いつもなら、俺のベッドでそのまま眠ってしまうくせに、少しだけ赤くした目をして帰るよって言うから、ちょっとだけ寂しくなった。

「相葉さん、ちょっと下まで送ってくる」

『いいよ!俺んちもすぐそこだし』

「良いから下まで送るよ!」

潤くんと一緒に玄関で靴を履いて外へ出た。


玄関扉が閉まってすぐに廊下の壁に潤くんを押し付けた。

顔を傾けて、いつものように軽く口づける。

ソッと離れた唇。

潤くんが俺の肩を掴んでため息をついた。

『どした?』

「いつもと違う俺たちは怖いよ」

俺の言いたい事はすぐに理解できたらしい潤くんが背中をパンってはたいて笑った。

『下まで送ってくれよ…な』

「うん…ふふ」

潤くんはエレベーターが一階に着いて開く前に額にキスをくれた。

いつも通り、変な感情がある訳じゃない口づけ。

あんな仕事をしてる俺たちはきっとこんな行為一つで、身体が浄化された気になっていたんだ。それはお互いに…。


「じゃあねまた仕事で」

潤くんは軽くウインクして手を挙げエントランスを出て行った。


後ろ姿が完全に見えなくなった時、後ろから肩にジャケットがかけられた。

振り向いたら、そこには相葉さんが立ってる。

『シャツ一枚で出て行くから…風邪ひくよ。』

相葉さんは昔から物凄く過保護。

愛情が柔らかくて、優しくて、気持ちがフワフワする。 

当たりの優しい喋り方は昔から俺のお気に入りで、変わらない。


「んふふ、すぐ戻るのに」

『あんなにかっこいい人が側に居たら…心配になっちゃうよ…』


俺はこんなに貴方が好きなのに、不安になるなんて本当に不思議な事言うな…。

相葉さんの自信の無さがくすぐったくて、腕にしがみついた。

「ヤキモチだね、相葉さん」

『ヤキモチだな』

あっさり認めて目尻に皺を作ってクシャっと笑う。



俺は幸せで、だから、潤くんの幸せも…

願わなくちゃ嘘なんだ。



部屋に戻って、シャワーを浴びる。

相葉さんは顔が見たかったからと言って帰ろうとしたけど、俺はワガママを言って帰らせなかった。


『ニノ…休まなきゃ…』

「じゃあ、寝るまで一緒に居てよ。じゃないと寝ない!」


相葉さんは苦笑いして、ベッドの側に座る。

ゆっくり手を引っ張ってベッドの中に連れ込んだ。


相葉さんにしっかり抱きしめて貰って、胸の中で目を閉じた。


目が覚めた頃には、太陽も相葉さんも居なかった。

部屋は暗くて、仕事用のスーツだけが視界を塞いだ。



急に寒くなって身震いする肩を抱いた。


それからも数日、いつものように仕事は続いた。