出産も難航して入院生活が長かったので
入院自体は悲しいことに慣れたものだった



ただ出産のときの入院と違うのは、

わたしの体調うんぬんではなくここさんの状態が良くない

ということ。




自分が病気であれば楽なのに。


オカーサンのせいで…


変わってあげたい…


ほんとうにごめんね。







妊娠中や出産のときにわたしのお腹の中でなにか異常が起きて

ここさんをこんな目に合わせたんじゃないか。



原因がわからない病気だけど、
少なくとも母親であるわたしに原因はあるのだろうとおもうとつらくて堪らなくなる。










検査は朝からだった。

他に合併症がないか調べるために、
心エコー、心電図、レントゲンをした。



全て同席させてもらって、

心エコーの検査ではここさんの心臓が一生懸命動いてるのを先生と確認した。



赤ちゃんの心拍数は大人よりも数倍早くて、

どくどくとたくさん動く。



こんなに一生懸命に心臓を動かして、ここさんは精一杯生きようとしてるんだ。




…絶対どんな病気でも助けよう。




ここさんの一生懸命うごく心臓を見ながら、そんなことを思った。





血液検査をしたときに、
明日以降の検査で必要になる点滴をついでにつけて、

ここさんは病室に帰ってきた。



小さな身体の小さなお手手に、
大きな包帯を巻いたここさんを見て

また胸が押しつぶされる思いだった。








検査でその日はあっという間に過ぎた。


夕方の先生の回診で
血液検査の結果を教えてもらう。


そのときの数値は


T-Bill…8.2 
D- Bill…3.5 
AST…36
ALT…22
ALP…1158 
GGTP…293 


…ネットでよく見た数値が並んでいる。


他にもたくさんの項目があって、
先生は細かくひとつひとつ教えてくれる。
(この先生をM先生とします)





「栄養状態、白血球、その他感染症などは問題ありません。」




胆道閉鎖症の他に考えられる病気で
新生児肝炎があり、

その病気の方が幾らか軽いかなとおもっていたので、
ここでその可能性が否定される。


心がざわつく。





「このAST、ALTというのは肝臓そのものの数値です。この数値は正常の範囲内。なので、肝臓が大きくダメージを受けているとは考えにくいです。」




…そうか、ということは、
肝不全が進んでるわけではない。


少し安心する。




「ただ、やはりビリルビンの値が基準値を超えています。また、胆管に異常があると高くなるALP、GGTPの数値が高い。心配していらっしゃる病気であるか、または遺伝子的な病気が考えられます。」




M先生は優しく穏やかに、
そして細かく丁寧に、

いま考えられる病気を教えてくれた。


そして決して、
胆道閉鎖症、という言葉は使わなかった。



でもまたひとつ、
胆道閉鎖症であることが濃厚になった。




次の検査として、
明日胆道シンチグラフィを予定していた。


胆道シンチとは、
肝臓から胆汁が流れるかを確認できるのだが、

新生児がこれをやる場合、
眠剤を使うことが多いそう。


その眠剤にももちろん副作用があって、

その副作用で心不全を起こすことも
ごく稀にあるという。




ごく稀にあるという心不全は、
確率的に1000分の1らしい。


でも、
胆道閉鎖症の確率は10000分の1。


それに見事あてはまっている可能性のあるここさんが、
その副作用にあたらない、とはいえない。



主人と話し合い、
先生とも1時間以上話し合い、

できるだけ眠剤を使わないでいい方法を考えて実行することにした。