子供の頃、つのだじろうという漫画家が書いた『うしろの百太郎』を愛読していました。霊魂の世界や幽霊の話しなど、怖いけど読んでしまうオカルト要素満載のマンガです。

 その中で、主人公の百太郎が「幽体離脱」をしてあちらの世界を旅するお話がありました。布団の中でおへそを囲むように手でひし形を作り、守護霊に語りかけると出来るとか何とかいうやり方まで書いていたので、子供心に実践を試みますが所詮子供ですから怖くなって出来ませんでした。

 高校卒業後入社した会社の先輩に、精神世界にどっぷり浸かっている方がいて、何度も幽体離脱を経験しているとの話を聞き、忘れていた好奇心が目を覚ました私はそのやり方を伝授してもらいました。
 百太郎に出ていたことに似ていましたが、もっと簡単な方法でしたのでこれなら今晩にでも出来るぞと意気込んでいる私に先輩は、

 「失敗したら大変なことになるから」

 と忠告してきました。どうやら体に戻るきっかけを間違えると肉体にダメージが加わってしまい、最悪死ぬこともあるとのことです。戻る気持ちがわいたら直ぐに戻ること。だそうです。


 早速実行です。

 初日、離脱直前に金縛りになり、女性の霊が登場。私の布団に潜り込み、金縛りが解けた私と掛け布団の引っ張り合い。恐怖しかなかった。笑

 二回目、教えられた通り、体から霊体が分離するイメージを持ちつつ、へそを中心として霊体をシーソーのように動かす。(これが出来るまでがきっと大変なんだと思いますが、私は簡単に出来ました)
 イメージ的には、頭が上、下、上、下、と動く、それと反対に足は下、上、下、上、となるように(体自体は決して動かさない)動かす。その動きが大きくなったら、ある瞬間

    グルン!!

と、でんぐり返しをしたようになり、体から霊体が外れたことが分かります。ゆっくり上昇しつつ下を向くと寝ている自分の姿があります。

 見たことのない天井裏を抜け、月明かりに照らされた夜の街が見えてきます。言われた通り、頭から細いヒモのようなものが出ていて肉体と繋がっています。この時点では全く恐怖心はありません。
 泳ぐ格好をせずとも意識するだけで行きたい方へ進めます。ビル上の看板の裏など、普段行くことの出来ない場所を見ることが出来ます。
先輩も言ってましたが、座禅を組んで瞑想をしている僧侶らしき人の霊体が浮かんでいました。きっと本物の瞑想が出来ると幽体離脱するのかも知れません。

 どれくらいの時間だったのか覚えていませんが、一度目は戻ろうと思った瞬間に、ものすごい勢いで体に引き戻される感覚が来て、ズン!という感じで戻りました。
 これに味を占めて行った二度目は、戻ることをためらっていたらなかなか戻れなくなってしまい、その瞬間から今まで見えなかった気持ちの悪い霊体が近付いてきたので振り払うようにしていると、グワッと引き戻されて、思いっきり打ちのめされたように体に入りました。その時は心臓はバクバク、脂汗がダラダラ流れて呼吸も荒く、死にそうなほどつらい思いをしました。

 こんなことがあったので、それ以来幽体離脱はしていません。


 天理教に限らず、肉体には霊体(霊魂)が宿っていて、死ぬ時にそれが離れる。それを死と言うのだと考えられています。大昔の研究では、人が死ぬと21グラム軽くなるのだとか。そこから魂の重さは21グラムなのだと言われています。
 おつとめの時に、【てんりおうのみこと】と21回唱えます。ここにも何か共通点があって興味深いです。


 人間は死んだらそれで終わりだ、なんてことはないんです。魂は生き通し。新たな肉体を借りてまたこの世に産まれ出るのです。その時には前の世界で蓄えたお金も、地位も、名声も、何も持たずに裸で出てきます。でも、癖性分、徳分、いんねんは、生前の記憶として持って産まれます。だから、今生きている時の心の使い方、身の行い方が重要なんです。良い種撒けば良い芽が吹き良い実がのる。その身から種が出て一粒万倍となる。逆もまた然り。

 
 いつも人様に産まれ替わりのお話をさせていただきますが、幽体離脱の経験も私にとっては大きな収穫だったと思い感謝しています。