須藤花井さんにお会いする少し前、作家の芹沢光治良氏の新刊本「神の微笑」が出版されました。そこに、伊藤青年なる人物が登場しますが、教内では有名なので詳細は割愛します。
 
 私は夢中になって著書を読み、これが事実ならば大変なことだと感じたものです。教校の先生に質問すると、馬鹿者、もっと真面目に勉強せよと叱られ、然りとて答えは分からず悶々とした日々を送ることになります。後にこの作品は神のシリーズと呼ばれ、本当に九十過ぎの作家が書いたのか、と思うほどの早さで続編が出版され続きました。
 
 全国の信者がこの本の内容に心酔し出し、あちこちで伊藤青年のことが話題になり出した頃、私は詰所主任も彼に傾き始めていることを知り、大いに語り合いました。ただ、共通の認識として、当の伊藤青年に会いに行くにはハードルが高過ぎるとして、やはり昂る心を抑えていたのです。
 
 ところがそんなある日、出入りの業者の社長が伊藤青年に度々会いに行っている、との話を直接聞きました。しかも、今晩出発するから主任と私に行かないかとも。私は時間的に無理でしたが、主任は早速社長の運転する車で数人の方と埼玉県川口市の伊藤青年の自宅へ向かいました。翌日、戻って来た主任は、

 「彼は本物や。おやさまが降りたはる」
 
 と目を輝かせて私に話します。社長も言っていましたが、その頃には教会長や本部関係の人達も沢山訪れているとのこと。同じ頃、友人も会いに行っていて、感動してテープレコーダーにその模様を録音したものをダビングしてくれたので、早速聞くと、

 「よろづよの、世界一列見晴らせど、まだまだ分からぬ者ばかりなり」

 と、女性の声色で語る声が流れて来ました。私は総毛立ち、身震いが止まりません。単純に感動したのです。「本物かも」正直そう思いました。

 ところが、その後何本かのテープを貰ったものを聞くと、その内容があまりにも単純な話の繰り返しで、稿本教祖伝逸話編を熟読している者なら誰でも言えるような言葉に終始している点、また、皆が涙すると言う、見抜き見通しの言葉の数々に付いても、ほとんど同じ言葉、

  「大変やったなあ」

  「何にも心配ないで」

  「ちゃんと分かってます」

  「神さんがしっかり見ているで」

 と、当たり障りのない内容になっていることに気付いてしまい、その辺から急に冷静さを取り戻しました。 
 
 また、教えについても、夫婦は天地の理で男は地、女は天と、天理教の教えとは反対の見解を示し(間違って認識してしまったものか)おやさまのお立場も、神界に数人いる天の将軍の一人であるとし、その上に天理王命が存在する。天使もいるとしています。

 更に、おやさまを降ろす時は赤衣、親神様は紫の着物と使い分け、マリア、釈迦、キリスト、あらゆる心霊を降ろして(大○隆法のよう)話し、時には混線して声が入れ替わると言う演出もあり、それがやたらイカサマ感を増長させて、思わず吹き出してしまいます。
 
 やがて著書が人を集め、噂が噂を呼んで広い場所に移ることとなり、現在の湯河原に天命庵を構えて活動しています。初め、信奉者の殆どが天理教信者でしたが、ネットから拡がり、今はスピリチュアルに敏感な人達の支持を得ているようです。天理教の人達は、やはり中身を見抜いてしまって心離れた方々が多いようです。


 伊藤青年こと伊藤幸長氏は、途中から大徳寺照輝を名乗り、スポンサーを得てラジオ番組枠を取得し、毎週おやさまの物真似で培った裏声を駆使し、天理教色を一切排除した奇妙なお話しを全国に流しています。
 以前この番組の中で、リスナーの質問に答えるように話したのが、

 「私は昔から女性の声色や男の声色を上手に使い分けてお芝居が出来る特技があるんです。(いろいろやってみて)どうです?うまいでしょ?」

 と、本音を暴露してましたから笑えます。

 彼は信奉者から一切の金銭を受けていないと言われますが、彼の書いた書は数十万から数百万円で飛ぶように売れ、通信教育で学んだとおぼしきお地蔵様の愛らしい墨彩画、ちょっと上手に歌える素人が出した歌声を収録したCDの売上、そして、後援者が定期的に開催する、高級ホテルでの講演会やディナーショーの莫大な収益で、全く清貧とは裏腹な生活を送っているようです。 
 おやさまが御在世の頃、一日中お部屋でお座りになっておられる時に側にいた先人が、おやさまもさぞ退屈されているだろうと思い、

 「只今道頓堀に大変良い芝居がかかっておりますが」

 と、言いかけると、おやさまは皆まで言わさず

 「わしはな、四十一の頃から世間の話しはしないのや。この屋敷は神一条の話より要らんのや」

 とお戒め下さった。とあります。そのおやさまが、今の世に現れてラジオ出演したり、ディナーショーを開いたりすると思いますか?よくよく考えれば何のことはない。ただ惑わされて来ただけのことでしょう。
 
 プライベートでは、過去に彼氏とのハワイ旅行中に撮ったディープキス写真がネット上に晒されたり、某有名俳優との熱愛ぶりも上げられて、同性愛者であることも暴露されています。

 そもそも、ほんみちから別れた異端の宗教団体と密接な関係者で、縁あって修養科に入った時も、大学時代に演劇部に所属して裏声も上手く出せると豪語した上で、おやさまの真似をしたところ、修養科仲間に誉められたことに気を良くしたことに端を発している裏事情については、所属の大教会サイドは百も承知のことです。偶然が重なりいろいろな出会いを経て、芹沢氏に出会えたことが、彼の運命を大きく変えたのでしょう。

 現在は、側近達も不信感を抱かざるを得ないような言動を取るようで、天理教やおやさまを踏み台にして成長した伊藤氏は、今は独自の路線を歩んでいるようです。もうそろそろおやさまの真似はやめて、江原啓之みたいなポジションで生きて行けば良いと思います。

 因みに、伊藤氏に会いに行って心酔した詰所主任は、後に多額の借財を抱えて投身自殺。私にテープをくれた友人も、理由は分かりませんが、自殺してしまいました。伊藤氏との因果関係があるのかどうかは分かりませんが。