僕は特科大隊第1中隊に配置されました。
ラグビー中隊で、明るく健やかなカラーの中隊でした。
(第1空挺団には、風林火山と言って、風は駆け足、林は射撃、火はラグビー、山は武道を表す四つの競技会が年間を通じてあります)
中隊に配置されたと言っても、空挺徽章(ウイングマーク)を取るまではお客様扱いでした。
中隊に配置されてしばらくすると、空挺教育隊の基本降下課程に入校しました。
僕の期は第262期で、4個小隊あり、総勢100人以上いたと思います。
普通科、特科、施設科、需品科、などたくさんの職種の同期と出会いました。
落下傘で航空機から降下する技術を身につける教育です。
訓練はとても厳しかったです。
僕は緑の20番の布を鉄棒につけていたので、20番と呼ばれていました。
『20番、動作急げ!』
と棒で叩かれた事もありました。
厳しい訓練の中に、『空挺式体力向上運動』というものがありました。
腕立て伏せなどの筋トレを、みんなで合わせてしていくのですが、一回注意されたら10回腕立て伏せをしなければならず、かなりキツイ訓練でした。
それが終わると、全員で上半身裸になり、駆け足をしました。『空挺、落下傘!空挺、落下傘!』
と言う掛け声を出しながら走り、気合いが足りていないと助教達から背中をバシバシ叩かれました。
『ザ・男祭り』という感じの訓練でした。
基本降下課程は5週間に渡り、
最後は航空機からの五回の降下の実施でした。
初めて降下したのは航空自衛隊のCー1輸送機からでした。
初めての降下に緊張していた僕は航空機に乗っているときに何回も同期と『頑張ろう!』のポーズをして気合いを入れました。
『降下用意、立てー!』
『この位置まで、前へ』
『位置につけ!』
『用意用意用意、降下降下降下』
前方の同期がどんどん空中に飛び出していきます。
もうすぐ自分の番だ!
ドキドキしながら、降下する位置へと前進していきます。
『降下!』
助教にお尻を叩かれて、空中に飛び出しました。
強風で身体がガクガクっとなりました。
『初降下、2降下、3降下、4降下、点検!』
カウント中、C-1輸送機の日の丸が見えました。
僕の落下傘は綺麗に開いていました。
『右よーし、左よーし』
あとは着地まで待ちます。
初めての落下傘降下、滑空中はとても景色、見晴らしがよくて感動しました。
しばらくすると、菜の花畑のようなところが近づいてきました。
ドスン!
無事着地できました。
その後駆け足で集合場所まで行きました。
息を切らせていると、
『臭い息をかけるな』
と嫌味で怖い助教に言われたのをよく覚えています。
残り4回の降下も無事終え、空挺徽章を胸に輝かせ、
晴れて空挺隊員になった僕は中隊に戻る事になりました。
そして、暗黒の一年目が始まる事になります。
続く