夏、甥のレオが日本にやってきた。


「僕の歯ブラシ、どっか行っちゃったんだ、新しいのに。

昨夜使って食卓に置いて寝たの。朝起きたらなかったの」


私は父が自分の歯ブラシを差しておく湯呑を調べた。


あった!! ありました、レオの歯ブラシ。


ああ、ここにしまって置いてくれたんだね、と思いながら湯呑から抜くと


ボタボタタッ


床に水が滴った


ヒョエー!!

部分入れ歯と一緒に洗浄液に浸かってるぅぅぅぅ


そこにレオの妹のジュリが現れた。


「レオの歯ブラシ、見つけたよ。この湯呑に入ってた。 イレバジルに浸かって・・・」

「ぎゃぁぁ、やだ汚ーい。 わわっこの床何?濡れてる。」

「ああ、さっきイレバジルがこぼれた」

「きゃぁああああ~」


そこにレオが登場



「歯ブラシあったよ。イレバジルの中だった。」

「ふぅん、ありがと。 あれ?濡れてるよ。」


レオは濡れた床の上に立っていた。



「踏んでる!!踏んでる!! イレバジル!!!」


ジュリが叫ぶ。


「イレバジルって?」


「いれば」 の 「しる」


「?」


「漢字で。」



入れ歯汁



半分イタリア人のレオは、バジルの一種だと思ったのだった。


あわてて足を洗ったのは言うまでもない。


そして、見つかった歯ブラシを使うことは二度と無かった。  と思う



父が言うには


置いてあったから、自分のではないけど


「一緒に浸けておいてあげた」




彼なりの親切だった