*母の記録*

 

2017年11月

ステロイドの減薬は慎重に進めるということで、この病院では移植フォロー外来というものがあり、

別の病院から専門の医師の診察を主治医同席のもとで受けました。

息子のデータを見たA医師は疑わしいのは肺、ただGVHDならば悪くなっていくはずで、呼吸機能検査でも横ばいのためステロイドは多分減るせるのではないか、この後の会議で検討するとおっしゃり

息子の全身の皮膚の状態など観察され終了となりました。

 

入院中から聞く横ばいという言葉

快方に向かっていないということでとらえていましたが、移植の過程で起こってしまった腸炎や気管支の閉塞、この気管支に関してはこの横ばい=これ以上悪くなっていかないだろうとういうことが救いなのだと……

現在は肯定的に思うことができます。

少し無理をして風邪をひくと、数か月間咳が続き今も大変ですが、逆に風邪をひかないように十分気をつけながら生活すれば、何とかなるからです。

 

 

*僕の記憶*

 

移植フォロー外来というものが始まったその裏で、僕は5年ぶりの受験勉強に勤しんでいた。

 

もう更新をしたのがいつなのかもわからないはるか昔のこの闘病記の序盤あたりに、僕がいかに勉強というものを嫌っているかを、書いたと思う。

 

だから、当時の自分には思いもしなかった。こんなに勉強することに、新鮮な気持ちで臨むことができるようになるなんて。

 

 

今、僕にとって、未来の自分のために何かをするということ全てが、輝いて思える。

やっと希望を持つことを許された。

そんな気持ちなのだ。

 

この気持ちの何割かでも、現役受験時に持てていたら……と思わなくもないが、当時の自分には、今の僕が抱くような、人生を生きることに対する晴れやかな気持ちがなかった。

それはどうしようもないことだったと、贔屓目なしに思う。

普通に生きていたら、命の価値なんて考えもしない。

大学受験に向けて勉強できることがもうそれだけで、すごいことなんだって、

思えるはずがない。

 

だから後悔とか全くないんだが、

それにしたって新鮮な気持ちだ。

 

まず、Be動詞から勉強し直したからな……??? 関係代名詞とか時制とか……。うん。

日芸の昔のレベルは決して高いとは言わないが、それでも全くゼロからやることには、不安があったし、

それに一般入試でも、座学とは別に実技試験というものがあった。

AOと違って、800 字を一時間で書くというものだったが、それもかなり練習した。

っていうより、その練習はもう息抜きみたいなものだったからな、座学の勉強の……

 

座学のほうもさすがに1人じゃこころもとなかったので、高校3年の時に通っていたRamsという千種の塾に通うことにした。

塾長もメイン講師も当時のままで、5年ぶりに戻ってきた僕を見てかなり驚き、事情を知ると、病気が快方に向かっていることを喜んでくれた。

 

古文は全然好きじゃなかったので、和訳された源氏物語とか梁塵秘抄とかを読む、ということをしていた。

あと日芸で絶対出る文化史だけは暗記した。

基本は英語。その英語もほんとに基礎のイディオムがためと、英単語の暗記。あとは赤本だけ。

現役時と浪人時に、参考書を無駄に買いすぎて痛い目にあったので、今回は持っているその1冊だけを極める、みたいなやり方をしていた。

 

 

勉強は依然大好きとは言えなかったが、それでも面白かった。

人生が前に進んでいる。

それだけで面白い。

 

なぜかチョコレートエッグを食べるおれ