はい

タイトルの通りです

すずめの戸締りを見たので、感想を書いていきます。

平然とした顔でネタバレするかもしれないので、その辺はよろしくお願いします。

 

 

結論から言うとすげー面白かったよぉ〜〜〜。

見てよかったよぉ〜〜〜。

ということになる。

 

 

僕が新海作品に触れたのってほしのこえが最初だった気がするんだけど、

最近ので言うと前前前世、じゃなくて君の名は。が劇場公開したのは僕がちょうど闘病のど真ん中だった頃で、全くそんな映画館とかいくことは不可能だったので、初見が闘病後、大学受験するってなった頃だったと記憶している。

全然別に前のめりではなかったんだけど、日芸受験するためには流石に知っとかないとな〜という義務感で見て、割と面白かった記憶がある。

でも大学に入ってから観た天気の子は、だいぶきつかった。天気の子と前前前世、じゃなくて君の名は。で比べたら、僕は断然前前前世、じゃなくて君の名。の方が面白かった。天気の子は、本当にわけがわからなくてなんの感情移入もできなかった。

ので、今回もそういう感じなのかなと思っていたんだけど、

全然そんなことはなかった。

 

 

まず冒頭の20分ぐらいが本当に面白かった。

『扉』というもののビジュアル的な異常さと怖さと、キャラクター同士の掛け合いの軽妙さが、ほんとに絶妙だったと思う。

多分古典とかにいくらもでネタは眠ってるんだろうけど、まあでもその中から『扉』ってう小物(異界と現世を繋ぐものとしての象徴と、空間を隔て統合するという機能を端的に表しているガジェット)に目をつけたところが本当に良く、

それを『閉じる』という閉じ師の行為はほどほどにアクション性があってかつどの家でも再現できる汎用性があるので、素晴らしい発明だな、と。

その上さらに、その扉の中に封じられてるものが、地震の精霊と来た。

 

 

ジブリ作品が金曜ロードショーとかで永遠に観続けられるのって、ジブリ世界が日本の故郷の感覚と強く結びついているから、というのがあると思う。それって言い換ええると、背負うべきもの背負ってる、みたいなことだと思う。

アニメーションが日本の大事な資源であることは間違いなくて、だけど日本以外の国も続々とアニメ業界に参入する中で、日本のアニメが生き残る一つの方法としては、やっぱりアニメの中に日本の輪郭を落とし込むことなのかな、と。で、これは僕が思ってるんじゃなくて、みんなが思ってるんだろうなということで。

 

 

君の名は。も天気の子も、どっちも災害というどうしようもない悪をヴィランにしているって点は共通だった。ただ君の名は。で出てきた災害は「隕石の衝突」で、日本には全然関係のないこと。天気の子は台風とか天候。これは台風の多い日本には妥当。その流れで今回は、地震。地震の精霊=みみず。これぞというヴィランだ。

 

 

細部にこだわり抜いたエモい絵

ほどよいアクション性

対象年齢を広げる寓話性

同調圧に対抗していく強い女性

キャラ同士のハイコンテクストな掛け合い

従来的盲信的愛ではないそれを一歩乗り越えた信頼

そして震災

こうやって書き出してみると、アニメーションが背負うべきものを全て背負った傑作なのかなあ、と思いますわ。

 

 

まあここまではありきたりなことしか言ってないので、

特によかったなと思うところを書きますね。

 

 

まず宗像草太のバックグラウンドがちゃんとあるのがよかったなぁ。

閉じ師っていうどう考えても金を産まなさそうな肩書で旅をするだけの「やべーやつ」じゃなくて、彼の背景となる生活に踏み込んでいるのが本当によかった。作中の騒動のせいで教員試験逃したってところのリアリティが本当に良い。

そしてそういう草太に対して、ああいう適当なところが許せねえ、とか言っちゃう芹澤も最高だった。芹澤が作中で一番好きなキャラかもしれない。

この芹澤がさぁ、主人公の『友達枠』として描かれるんじゃなくて、本当にちゃんとした人間だってところがマジでいいんだよなぁ。ロールに支配されていないリアリティが。

この芹澤が最後に二万円は貸してるんじゃなくて自分が借りてたと明かすけど、

これが冒頭の芹澤が草太の不在に対して見せた悪態への、美しい回収になっている。芹澤はルーズなのは自分の方だとわかっていて、何かを背負っている草太に対して少しコンプレックスを持っていた。でもこの少しのコンプレックスみたいなリアリティが良くて、その軋轢は叔母の環とすずめの間にもちゃんと描かれている。

誰一人、置き去りにしていない。

 

 

それだもえげつないシナリオ力の表れだと思うんだけど、

それと同じくらいよかったのが、

メインターゲットとサブターゲットの設定だ。

 

 

これはもう勉強になったとしか言いようがないんだが、

すずめと椅子になった草太は「1各地の扉を閉めながら」「2脱走した要石を探す」ために旅をしている。1サブターゲットで、2がメインターゲットだ。

数えてみると1のような事態が作中で4回発生していて、それらの攻略が各地で展開される人間関係の中に埋蔵され、凄まじい躍動感を出している。

またメインターゲット自体も、それを攻略した後に更なる葛藤=草太の要石化が待ち受けていて、全く視聴者を休ませる気がない。

この展開の鮨詰め状態、あまりに現代的すぎる。良い。

 

 

だからこれはさぁ、僕も長編を書くときに真似したいなと思ったよ。

メインターゲットと、サブターゲット。両方あると、四章構成以上の小説でめっちゃ生きると思う。

 

あと良かったのは、

すずめが新幹線に乗ったときの興奮を草太にドン引きされるのと、

草太が「椅子の体に馴染んできたッ!」って言うところかな。なんだよ椅子の体って。好き。

 

 

もちろんなぜ、と思ったところもある。

たとえばループしてる椅子の劣化問題とか。まあこれはループものにありがちすぎておはや語る意味がないと思うが、別に最後のところループにしなくても良かったのでは、とは思う。

あとはダイジンって結局何者だったのか。「すずめの子になれなかった」という発言があったので、なんか昔人柱にされた過去がある愛を知らない子供タイプかなとずっと張ってたんだけど、全くその回収はなくて、結構すんなり要石に戻ってくれたやん、という感想はある。

 

 

ただまあそんなのは本当に瑣末な問題で、

キャラのリアルとテンポが凄まじい

本当に良い作品でした。

 

 

ありがとう〜〜〜!