*母の記録*
2016年2月10日
《術後1日目》
この日から定期券を買って毎朝8時過ぎの近鉄に乗って三重大へ通いました。
病室に着くと、酸素マスク、血液モニター、足の血栓予防の機械は全て外れていました。
痛い痛いとか細い声で息子が悲痛な顔をしています。
夕方先生たちが来て痛みは今日がピークだろう、あとは術後の合併症を注意深くみていくということでした。
2016年2月11日
《術後2日目》
痛みは少しは引いたようで夜も眠れたと言います。
「明日は腸のつなぎ目の写真を撮ってから食事の件を相談しよう」という医師に対して息子は、痛みが消えるまで考えられないと嫌がります。
今日はベッドで体を起こす訓練、ベッドの背を少し上げると息子が痛い痛い無理無理と言い、顎の発作が起きてしまい、いつもなら安定剤のコンスタンを飲むのですが、まだ水が飲めないためフェンタニルをフラッシュしてもらいました。痛みの恐怖からでしょうか、発作は血液内科退院後初めてのことです。
昨日と同様1日2回の血栓予防の皮下注射、痛み止めにはロピオン点滴や硬膜外麻酔で凌ぎ、二日目を終えました。
2016年2月12日
《術後3日目》
朝、硬膜外麻酔の管を抜いてもらいました。
先生が一番先に何が食べたい? と聞くと、その話はまだまだと痛みがあるうちは考えられないようです。
今日は初めてのパウチ交換。
病棟を1周だけ歩くと看護師さんたちが拍手してくれました。
夕方チームの先生の回診とその後A先生の回診。
息子が自分の切った腸を見たいというと今ホルマリンにつけてあると言い、その後別の先生が画像を見せに来てくれました。
*僕の記憶*
すげえ、シンプルなことを言いますよ。
腹切ったところがめっちゃ痛い。
本当に痛い。
今はそれだけしか考えられません。
でも、今まで僕はいろんな治療を乗り越えてきました。だからこんなのはただの痛みなんですと考える。そういうふうに考えて自分を鼓舞しようとしている。でも痛い。痛すぎる。
僕は今まで化学療法ばっかりしてきたので、なんというかダイナミックな手術みたいなものは全然してこなかったんですよね。それが白血病の治療だったから。
だからなおさら、この痛みには驚きました。
お腹に穴開けたんだから、当然だよな。
僕はふと思った。
この世界にはたくさんの手術をした人間がいる。
もちろん手術の中でもこういう「体をざっくり切る手術」をした人に限るんだろうけど、こういう痛みを抱えていると考えるとやはりすごいなと思う。
ひょうひょうとしている人でも、かつて手術を受けたことがあるって事は、この痛みを感じたことがあるかもしれないわけじゃないですか。 それはすげぇことだよな、と。
改めて思った。