*母の記録*

 

《移植スケジュール》

 

2014年6月4日

移植前の前処置のTBI(放射線治療)を午前、午後2回、2日間に渡り浴びました。

放射線を当てると、皮膚以外に粘膜にも刺激となるため歯と歯ぐきを守るために、口腔外科でプロテクターを作ってもらいました。

またTBIの後脳圧を下げるためのグリセオールの点滴や免疫を抑えるためポリグロビンの点滴も。

イトリゾールは内服からファンガードの点滴へと変わりました。

 

*僕の記憶*

 

ついに移植の日が近づいてきた。

イショクなる施術の前には、いくつかの段階がるらしい。

手始めにやったこと、それは

マウスピース作り。

 

残念ながら写真が残っていないのだけど、まあまあ透明で、上顎用と下顎用がセパレートされているタイプのものだ。

作り方としては、歯型みたいなものを取られて、

そこに樹脂とかを流し込んだのだろう。

製造工程は見てないのでわからないけど、

これは、なかなか闘病作品には出てない「放射線治療あるある」なんじゃないかな……?

 

それでもって、待ってました放射線。

いや待ってないけど。

ぶっちゃけ、すげー怖かった。

だって、被曝するんだから。

 

放射能って言葉くらい、誰でも知ってる。僕でも知ってた。それがどれだけヤベえ代物かってことは「はだしのゲン」とか「原爆資料館」とか見れば一目瞭然じゃないか。

コントロールされた放射線。

人を攻撃するために使われたこともあるもの(正確には攻撃に用いられたのは熱エネルギーで放射線は副産物だが)

それを自分の体に向けられるんて……。

 

正気じゃない。

 

攻撃するために使われたこともあるもの(正確には攻撃に用いられたのは熱エネルギーで放射線は副産物だが)

それを自分の体に向けられるんて。

 

だから、考えないようにしたよ。

多分、それを怖いと言う人の意見は、ネットで探せばいくらでも見つかるから。調べもしなかった。しなきゃ死ぬ治療で、自分が臆病になっていいことがないから。

 

実際に何をやったかっていうと、

地下にある、核シェルターみたいに堅牢な扉のある薄暗い部屋の中で、

金属っぽい板の上に寝かせられる。

椅子に座る格好そのまま横に倒したような姿勢を、体の右を下にするのと、体の左を下にするので、計2回。

一回の照射時間は、どれくらいだっただろう。40分? 2時間?

気分としては電子レンジで途中でひっくり返される鶏胸肉の気分。(それも放射線が電磁波であるという認識があるから生まれた感性かもしれないが)

痛くも痒くもなかった。

それが逆に怖かった。

 

見えない力で、体を破壊されている恐怖。スピリチュアルの文脈とかじゃなくて、文字通り可視光じゃないから、人間には認知できない『力』。

その巻き添えを食らって、僕の生殖細胞は全滅した。

 

 

その日僕は、妊娠能力を手放した。

 

 

(画像に一部不適切なものがあったので上げ直しました!)