*母の記録*
2015年5月22日
<day+345日>
深夜、目が覚めたら手がしびれていると息子からLINEがありました。
朝早めに病室に行くと、舌も全身もしびれていると言います。主治医が電解質のバランスがくずれるとしびれがでることがあるので薬と点滴の内容を見直してみます、と言われました。
廊下で再発の可能性は?と聞くと血液検査で悪い芽球はでていないので疑っていはいないが、もうすぐ1年なのでマルクを考える。
午後のシャワー時歩くとふらつき後ろに倒れてしまう。自分でもおかしいと言って
先生を呼び頭部CTを撮ることになりました。
結果は異常なし、様子見て続くようならMRIをやることに。
2015年5月25日
<day+348日>
このところのしびれが治まらずシャワーに行くときも手すりにつかまっていないと後ろへ倒れそうになる。
さらに股関節の痛みも始まってしまいました。
神経内科の先生が部屋にきて、全身をポンポーンと器具を使ってたたき痛みを調べ、午前中に撮ったCT画像を見て、脳に何か起こっているとは考えにくく、おそらく精神的なものではないか。
今起こっていることは手のひら、足、お尻,舌、くちびるのしびれ、息苦しさ、尿がでない、出にくいこと。
見た目もそうですがあきらかにちがう、本人もPCに向かうこともできず寝ているだけでした。
ステロイドが長いので骨頭壊死を心配して股関節のMRIをしましたが、異常はみつかりませんでした。次々と起こる異変にこの先どうなっていくのか、毎日凌いで凌いでここまできましたが、ぜんぜん良くならないし、もう生きていくことに疲れたという息子をどう励ませばいいのかわからず。
腸はおそろしく時間がかかると言われたけれど、狭窄は良くなることはあるのか、良くならないのなら、手術をしてくれる医師や病院をどう探せばよいのか……途方にくれ、それでも毎日いろいろ起こるので耐え偲んで過ごしていました。
2015年 6月11日
<day+365>
移植後1年経ちました。
マルク実施。
*僕の記憶*
一年前。
移植をした時、僕はこれで助かると思った。
化学療法だけで中途半端に治療して、再発したりして肩透かしを喰らうよりも
一回の移植で辛い目にあった方がずっといいと、
そう信じていた。
全て間違いだった。
あまりに長い道のりを眺める時、
目が疲れしまうような、
あまりに高い壁を見上げる時、
眺めるだけで首が疲れてしまうような、
そんな感覚に陥ることがあると思う。
今の僕はそれだった。
もし仮に、この腸の問題が治る可能性があるとしても、
治った後にあるものは低残渣食で、そこからまた恐ろしく道が長い。
移植をするまで、当たり前のようにできていた「食べる」ということを取り戻すために、
目が霞むほどの無数の行程があって、
その行程を経たとしても本当に治るかどうかはわからない。
本当に、
どうかしてるよ。
それでも僕にはまだ小説がある。
これは、マルクを受けた後のミイラ。
施術室はすごく寒い。