*母の記録*
2015年3月4日
<day+266>
どうしても飲めないエレンタールの代わりの経腸栄養としてテルモのペプチーノというものを試してみることになりました。
レモン味なら飲めるかも?と思いまずは一回100ccから。
これなら飲めるよと息子が言ってくれた時はうれしかった。
まずは一日1本を目標に一週間後には2本に増やしていこうという計画ですが以前から続いている咳は全く良くならず、せっかく飲めても咳をすると吐いてしまうの繰り返しで思うようには進みませんでした。
2015年3月9日
<day+270>
ステロイドの点滴が内服のプレドニンに変わりました。
あまりの咳の多さに肺炎が悪化してるのでは?と場合によっては胃カメラをやるという話でしたが、CT検査でアスペルギウス肺炎は良くなってきているが、別の場所に気管支炎があったと抗生剤が始まりました。
ファーストシンの点滴です。
また昨日から心臓がバクバクするいつもと違う気がすると息子が言うため、心電図の検査をすることに。
息子が言うには胸に空気が溜まっている感じがする。常にそれを出さないといけないので少しずつゲップを出すがそれが吐き気になるので飲み込むしかなくその繰り返しだと言います。
何とかこの空気を抜きたいと説明していました。
2015年3月11日
<day+273>
心電図は異常無しでした。
胸の空気の件を再度主治医に質問すると、下痢の量が増えていると今の水の点滴が足りなく、脱水症状になっていてえらいのかもしれないので再度便の量を計測してみようということになりました。
2015年3月12日
<day+274>
朝病室に行きトイレを見るとまた血便で太い粘膜が落ちていました。
今まで何回か粘膜のようなものをみてはすぐに看護師に報告しましたが、腸の炎症がまだ治まっていないと思うと怖くなりました。部長回診でここ最近の異常を伝えると、悪くなっているねとの言葉が返ってきました。
今回のことでまた夜の付き添いが再開できることになりました。
*僕の記憶*
寝てばかりいる人の手足がどんどん細っていくみたいに、
腸にも同じことが言える。
僕はもう2/3年以上ものを食べていないから、一刻も早く腸を動かさないといけない。わかってる。頭ではわかってるんだけど、どうしてもエレンタールを受け付けない。
それでも、
とにかく今は腸に何か栄養を入れないといけない。
そこで登場したのがペプチーノ。
けっして! 美味しいものじゃなかった。いや、今飲めば美味しく飲めるレベルだと思う。でも当時は味覚障害があったから。「甘い」という感覚自体が気持ち悪く、よってペプチーノも例外なく不味かった。
のだけど!
このペプチーノ、結構ちゃんとしたレモン味がついていて
爽やかな酸味があった。
これがよかった。
僕は高校生の頃は普通のジュースにわざわざ顆粒のクエン酸を足すほど、飲み物のの持つ酸味が好きな人間だった!
味はなんとかなった。
でも別の問題もあった。
それは吐き気だ。
腸を働かせるには、このペプチーノという液体を、腸に留めなくちゃいけない。
だからその前に吐き気が襲ってきたら意味がない。
この時初めて、飲食という行為は
「物質を体の中に留めておくためにある」ってことを
強く意識した。
せっかく頑張って飲んだペプチーノを吐き出してはいけないんだ、と心に言い聞かせ、時には口を手で押さえて、なんとは吐き気を我慢した。
でも、下痢は悪化し、また便器に粘膜が落ちているのを見つけた時には
一瞬で心を折られたような気がした。