*母の記録*
2015年2月4日
<day+238>
今日でプログラフ終了
2015年2月6日
<day+240>
6回目の大腸内視鏡検査
「狭窄が良くなっていてスコープが最後まで通った。狭いは狭いが戻るのではないか? 明日からは腸を動かすためにエレンタールを口から始めてみましょう。エレンタールが順調にいけば外泊なども考えていきましょう」と言われ、
嬉しくて嬉しくて涙が出ました。
2015年2月7日
<day+241>
エレンタールをまず青りんご味から試してもらいましたが、一口飲んで絶対無理、鼻から入れるのも嫌だと看護師を呼んで泣いてしまいました。
一気に暗くなってしまいました。
今日から真菌のブイフェンドが点滴から内服へと変わりました。
2015年2月9日
<day+243>
ブイフェンドを飲み薬に変えたら肝臓の数値が悪くなってきたのでまたウルソの内服が再開になりました。
AST136
ALT158
ALP1270
エレンタールの代わりにエンシュアリキッドではという話になり夕方一口飲み、吐き気が始まりさらに腹痛と咳も始まり悪循環のような気がしていました。
長い時間腸を動かしてなかったから毎日でなくてもいいので少しずつチャレンジしてみてと
主治医に言わました。
*僕の記憶*
一度閉ざされた心は容易には開かない。
一度不信感を持ってから誰かを信頼するのは至難の業。
そういうものだと思う。
問題が腸の炎症にあると明らかになった今、
必要なのは、腸を動かすことだ。
この時点で僕の認識は完全に切り替わった。今はもう白血病の治療が続いているんじゃない。牙をむく病気が、全く別のものにすげ変わったのだ。
だけど、口から栄養を取ろうという試みはなかなかうまくいかなかった。
この辺りで、もう一度しっかりと書いておかなきゃいけない。
僕にある、唾液とは別の、もう一つの際立った症状について。
それが、ひどい味覚障害だ。
症状自体は、移植後90日あたりから始まっている。
そもそも味覚障害自体は、抗がん剤治療を行なっていた時から現れていた。水が甘く感じたり、甘いものが変な甘さになる感じ。だけど移植後に起こった味覚障害は、結果的にいえば、全然別物だった。
今や、全ての味のある飲み物が気持ちの悪い汚物だった。特に最悪なのはコーヒーの匂いで、吐き気を催した。コーヒーだけでなく香ばしい匂いは、鼻に入れれば全てサイテーな気持ちになった。
甘い飲み物も飲めなくなった。まるで体が糖分というものを一切受け付けていないかのように、甘い味付けの飲み物が本当に不味かった。
この味覚障害の何が最悪だったかって、
まず現状でいっさいの固形物を食べられず、しかしそれがなんとか奇跡的に食べられるようになったとしても、味覚障害が残っていれば食べたいという気さえ起きない。未来が完全に閉ざされているという感覚。その上エレンタールなど自分の体を良くするために摂らなければならないものも、僕のことを憎んでるのかと思うほどの不味さで口の中を侵してくる。
この頃、口に入れることができたのは炭酸水とお茶だけだった。
そのお茶も少しずつ飲めなくなっていって、今はレモン味の炭酸水で口を濯ぐだけ。
飲み込んだらお腹が痛くなるから、吐き出すだけ。
それが唯一の楽しみだったのだ。