*母の記録*
2015年1月27日
<day+230>
腹膜炎の痛みも治まり今日は顆粒球吸着療法最後の日です。
1週間前に面談室で厳しい話にはなったものの、今回の腹膜炎は抗生剤で治まり、
吐き気もなく本人も元気になってきているように感じていました。
以前観ていた孤独のグルメや深夜食堂などのグルメ番組をまた見始めたりしていました。
またモンハンの攻略本が届き真剣に読んでいました。
2015年1月28日
<day+231>
午後から中心静脈栄養点滴(IVH)の入れ替えがありました。
2015年1月29日
<day+232>
胸部CTで今回の顆粒球吸着療法のために右の首(内頸静脈)にカテーテルを入れていたことで血管の中に血栓(血の塊)ができてしまったため、血液をさらさらにするヘパリンの点滴をしていくと説明がありました。
今日でファーストシンの点滴終了
またいつからだったか唾液が異常に溜まり飲みもむこともできずいつもコップに貯めては捨てていました。
どの先生に聞いても移植後の同じような事例はないそうで、本当に不快そうでした。
2015年1月30日
<day+233>
腹膜炎になってから朝飲んでいた薬も中止していましたが、今日から内服開始です。
今飲んでいるのはアルファロール、バクタ、アシクロビル、ネキシウム、ベネット錠
11時移植回診のS先生に腸の動きが悪くなっちゃうからリハビリもやって体を動かそうと言われました。
*僕の記憶*
ここで一つ、
この頃の僕が経験していた、
『もっとも重大でどうしようもない症例』を話しておきたい。
それは唾液が溢れ出ることだ。
症状自体は、移植後に味覚障害と一緒に起こった感じで、移植後2ヶ月あたりからだったと思う。もっとスマートにこの症状を示す言葉がないかと探し回ったのだけど、見つからなかった。医師にも理由がわからないと言われた。それも一度や二度じゃない。出会う医師全てに聞いたけれど、症状に名前はつかなかった。
この唾液の症状、具体的に書くと、まずたえず口の中に唾液が溜まっていく
普通の人だって唾液は常に分泌されているものらしいのだが、それを無意識に飲み込んでいるということらしい。
でも僕は、唾液を飲み込むことができなかった。
痛みとか、嚥下困難とか、そういうことではなくて、ただ――「気持ち悪い」のだ。口の中でナメクジを飼っているような、いやむしろ唾液がナメクジの分泌液そのもので、それを飲み込むことに凄まじい抵抗を覚える、みたいな……。
たかが唾液と思うかもしれない。
でもこの症状によって失われたQOLは計り知れない。
唾液は一定以上溜まると喋ることができなくなるので、吐き出すためのコップをいつも持ち歩いてないといけない。いつも、本当にいつ何時も。眠る時は、眠りにつく直前までコップをベッドに置き、吐き出し続けなければ枕がベタベタになっちゃうから。
眠っている間は無意識的に飲み込んでくれているらしく、よだれで溺死するなんてことにはならなかったけど、
僕はいつも検尿用のコップをもらって、そこに唾液を吐き出し続けていて
そして絶えず、溜まった唾液をこぼしたりしないかにずっと
意識を払ってなきゃいけなかった。
たかが唾液で。
本当にクソ。