*ネタバレがあるかもです*

 

知名度あるけど人気はそんなにないから色々大変ですね。

 

はい。

(業界)知名度(多少)あるけど(読者)人気はそんなにないから色々大変なわたしです。

 

 

 

 

読んだ。

みきとpさんのことが好きで、ロキが好きで、それに今僕がやっている仕事にも通ずるところで、さらに表紙がかわいい。

読んだ理由はさておいて

ぱぱっとTwitterで感想を書こうとしたが、

以外に書きたいことが増えたので久しぶりに記事化。

最近闘病記以外はあまり手をつけられていなかったので、気楽にかこっと。

 

 

読後はまず、なるほどな〜〜〜という思い。

面白かった!部分と、僕とは(とうぜん)考えが違うな〜と思った部分などなど。

ざっくりいうと『呪いの曲』ロキを小道具にした学園ファンタジー。

対比にとっているのは青春と、青春を妬むもの=型にハマった青春に固執するもの?

特筆すべきは音楽描写。非常に緻密で面白かった。

後書きによると、作家の方はどうやら音楽小説で一本書くのが夢だったそう。ロキはボカロ曲の中でも、歌詞や雰囲気を含めてロックな方だと思うので、音楽シーンの厚みはとても心地よかった。

 あとイラストがめっちゃ可愛い。これはもうそうとしか言えない。

 

 

 

 

僕もロキはめっちゃ好きで、アップテンポな曲が好きということもあるけど、

なんだろうな。

批評性があると思うんだよな。

(突然どうした)

いや……他に言葉が見つからない。

(大丈夫か……かしこぶると失敗するぞ?)

 

ロキって

『セルフィー』

『死ぬじゃねえぞ』

って部分があるじゃないっすか。

あれがどうにも、生まれた時から『承認欲求と自意識のゼロサムゲーム』に放り出された現代の若者(ぼくも含め)へのエールとして、めちゃめちゃ的を射た表現だなと聴くたびに思う。

だから小説にするならやっぱこの部分は外せんよな、というのが読む前に想像したところ。

 

 

僕は自撮りってものが小っ恥ずかしくて、大学に入ってからもしばらく抵抗があった。まあそれもキモかったとは思うんだけど、理由を考えてみた、

僕は成人になる前後を病床で過ごしていて、ちょうどそのあたりで人類社会にスマホが溶け込んだという記憶がある。正確には僕が入院したのが2013年なので、入院の1〜2年前くらいから広く広まったという印象。

それで僕は、病院内でスマホをもちろん使ってはいたんだけど、その時代の若者のように使いこなしてはいなかった。せいぜいスマホゲーをちょっとやったくらい。

僕が社会から切り離されているうちに、人間の生活様式は間違いなく変化していて、僕がそれに乗っかったのって大学に入ってからなんだよな。

で、ロキは2018年に作られた曲。

僕がちょうど大学に入った年だ。

 

スマホが普及する前は、セルフォンで写真を撮ることを「写メ/シャメ」と呼んでいた。今でも母親は写メを送ってくれ、という言葉を使う時がある。写メ=写真付きメールの略で、これはつまり、メール=プライベートな電子的やりとりが文字ベースだった時代から画像ベースの時代へ、転換期特有の語という感じがする。

ところが現代は写真、ひいては動画がベースになっている。

「セルフィー」という語は自撮りの略で、撮るというところではなく自分というところにスポットが当てられた表現なので、当然ながら「セルフォンで写真が撮れることがすごい!」みたいな発想が微塵も入っていない。

 

だから僕はセルフィーという語を聞くと、ちょっとだけ浦島太郎みたいな気分になるのだが、まあそれはいいとして、

ロキは、生き抜くためにキめろセルフィーと歌っている。

これがすごいリアルなんだ。

つまり自撮りをしないと死ぬ社会だって言ってる。そんなことはないかもしれないが、案外そうかもしれないとも思う。「自分がここにいます」という声は、誰かに届かなくてはいけなくて、その叫びがいかにか細かろうともずっと叫んでいなければならない。

そういうことができなかった昔はじゃあどうだったか

という問題に対してよく持ち上がる「村社会の残存」とかは、僕には正直よくわからん。村に住んだことがないから。

でもどう考えても時代を経るに伴って「やらなきゃいけないこと」が増えたと思うんだよな、人生で。

「やれることが増えた」というより。

 

やらなくて良かった世代の人たちは、そんなん別にやめたらええやんって、気軽に言う。SNSの毎朝のチェック。新規フォロワーの素性の読解。ソシャゲ、スパチャ、マッチングアプリ。でもそれをやらなきゃ死ぬことだと見抜いたのがロキって曲だと思うんですよね。

 

じゃあ小説はどうだったかというと、

その辺がちゃんと汲まれていて嬉しかった。

特にバンドと個人の交友関係の間で揺れる主人公像は、彼なりに「生き抜く」ために必死で承認を選択する様が、痛くてリアルで良かった。

 

僕はロキは男女パートで表示されるものなので、途中までラブコメの文脈で理解していたところがある。それが最終的には裏切られたので、なるほどそうきたか、という

感じ。「死ぬんじゃねえぞ」「死ぬんじゃねえぞ」「死にたかねえのはお互い様」というのを「ギリギリ友達の枠内の男女」とかがやってくれたら一番欲求に叶ったのだけど、そうはならなかった。その方が確かに、よりリアルかもしれない。

 

もっと深く掘れるやろがい!と思ったところもあるにはあったが、リアリティ信仰はある意味で青春傍観信仰なので、僕は僕でマジで気をつけようと思った……!

 

 

死ぬんじゃねえぞ……!