僕には大切な友達がいて、
あるとき彼に、僕が自著小説を商業で出すということに伝えると、喜んでくれた。
どういう小説かを説明する段になって、
「宇宙から降ってきた女の子を助けようとする話だよ」って言ったら、
彼はなんだかちょっと不満な顔を見せたのだ。
「そういうのじゃなくてさ」と、彼はスタバのコーヒーを飲みながら切り出した。
「俺はお前の人生の話が読みたいんだよ。空想とかじゃなくて、お前の経験が」
僕はそれに「いつかね」って答えた。内心では、
早稲田の政経を出て、夏休みには海外に巡礼の旅に行き、一部上場企業に就職し、自己啓発本とか読んでる意識高いヤツの意見だったから、ハイハイそうですかこちとら作家になるっていう夢を今こうして叶えてるってのによくもまあ水をさせたもんだ、とかその時はちょっと思ったんですけど、
でも、僕も実は気づいていた。
僕の人生が、僕の空想なんかよりも、だいぶ、面白いってことに。
そしてまあ、去年の8月と10月に運よく電撃小説大賞のメディアワークク賞とハヤカワSFコンテストの大賞をいただいて、名実ともにデビューとなってから、ツイ廃の僕のDMに、
うちでブログやらんか、と。
僕は、苦手なんですよ。同じことをルーティン的に続けるのが。そりゃもう酷くて、家の徒歩2分圏内にあるジムに通おうとした時も2回くらいしか行ってないし、高校生の時にブログをはじめようとした時も始まりの挨拶で止まってますからね。
だから、最初はあからさまに乗り気じゃないみたいな顔をしていた。
けれど最近になって、その友達の言葉が、頭の中に湧いで出た。
「お前の人生の話が読みたいんだよ」っていうやつ。
誰の言葉だったかは知らないんだけど、作家は誰でも最高の一作を書けると言う。
それは自分の人生について。
確かにリアリティという面では、自分の書いた自分の人生が、一番に決まっている。
けど僕が書きたいのは神殺しの鋏《オッカムの神剃》を操って戦う異能バトルとか、水没した海底都市で鯨を屠殺して生きる人々の話とか、不老不死と人間の女の子が好きあうロマンスとか、そういうのなわけですよ。空想と戯れるのが大好きなわけですよ。
でも、そういえば、彼に、「いつかね」って言ったなあ、と。
いつかって引き伸ばしていたらマジで永遠に訪れないので、
ここらでそろそろケジメをつけるために、それは自分の過去に対して、彼との会話に対して、両方の意味でですけど、とにかく、やろうと思ったのはそういう感じです。
それに、いつかノンフィクションの仕事も来るかもしれないからw その練習も兼ねて。
……それで、これはブログなので、僕の作家や大学生としての活動をリアルタイムで書いていきたいと思うのですが、どれと並行して、過去パートも書いていこうと思うのです。
つまり、本ブログは。
作家としての活動や、大学生(執筆時点で大学4年生)としての日常という現在パートと、
高校卒業後急性リンパ性白血病に罹患してから大学進学に至るまでの過去パートを、
並行して書きます。
やこしくなってしまうかもしれませんが、どうぞご容赦を。
また過去パートの執筆につきましては、タイトルにもあります通り、闘病生活を支えてくれた母と協力して書いていこうと考えております。
ぶっちゃけ母は、僕よりもずっと僕の病気に詳しいので、彼女の助けなしにはかけません。こんな形で母子共作することになろうとは思ってませんでしたが、まあ、これが年貢の納め時という感じ。過去パートは少し書き溜めてから公開していこうと思いますので、ひとまずはイマのことから書き始めようかな。
では、これからどうぞよろしくお願いいたします。
2022年 6月16日(月) 人間六度
執筆当時 大学4年生(休学2年目)27歳。
それから、以下に母の抱負も、載せておきます。
過去パートもこのように、二人の視点を織り交ぜていこうと考えております。
ではーー。
【母】
8年程前、息子が18歳の秋に突然白血病と診断されました。
告知されたその日に入院し、数日後に抗がん剤治療が始まり、半年後に臍帯血移植をしました。
その後移植後のGVHDに苦しみます。
闘病中は情報を得ようと沢山のブログを読みました。
中には最期を家族の方が締めくくったブログもありました。
私は息子が退院したら渡そうと闘病日記をつけていました。
先日大学生の息子にブログ開設の話をいただきましたので、この記録が今闘病中の方の役にたてばと思い、息子のブログの中に盛り込んでいくことにしました。
以下息子の病歴
『2013年10月』18歳 急性リンパ性白血病発病
『2014年 6月』 19歳 臍帯血移植
『2016年 2月』 20歳 結腸左半切除、回腸人工肛門造設
『2017年 5月』 22歳 回腸人工肛門閉鎖
この間 膵炎、肺炎、腹膜炎、敗血症、腸閉塞、白内障、汗孔角化症などさまざまな事が起こりますが何とか乗り越えて現在に至ります。