「情報難民」という言葉を知っているでしょうか。神戸女学院大学の内田樹名誉教授の造語で、情報リテラシー(知識や情報を有効活用できる能力)の低い人のことを指す言葉ですが、自然災害などの有事の際に、国や自治体から発信される情報を得ることが難しい状況にいる人々のことを指す意味で使われることもあります。

 後者の意で使われることも多く、今年の元旦に起きた「能登半島地震」では、情報インフラなどが被害を受けたことにより、多数の情報難民が出たとの報道がされています。インターネットなど情報インフラの普及により、現代では様々な情報が溢れています。しかし、その情報の信憑性を確かめたり、多くの情報の中からどれが正確な情報かを判断するということが難しいこともあります。

 特にケアのことについては、専門職である私たちと家族の方とは知識や情報量、理解度も大きな差があります。また、施設や事業所のことについても、職場となっている私たちと、時々しか関わりのない家族とは理解度に大きな隔たりが生じても不思議ではありません。

 私は、母親の成年後見人になっていますが、申し立てをする時に、裁判所のホームページに掲載されている内容だけでは、理解が難しかったため、申し立て先の家庭裁判所に赴き、説明を受けました。裁判所では、書類一つひとつに何を目的に、どのようなことを記載すればよいか、とても丁寧に説明を受けました。そのおかげで、申し立ての書類については、時間はかかりましたが、迷うことなく作成をすることができました。

 成年後見人に選任された後に、銀行で手続きを行う際に、銀行では成年後見人は、キャッシュカードは使用できないことなどの説明を受けましたが、事務的な印象で、内容としては理解できるものの、なぜそうなのかということに対して疑問を感じました。

 この一連の流れの中で、情報を正確に発信することだけでは「情報難民」とまではいかないまでも、情報を正確に判断できず、その後の関係も悪化する可能性が出てくるのではないかと感じました。

忙しい毎日の中ですが、家族などに説明する際には、情報を相手がきちんと理解(受け取れる)できるように、相手の状況などに合わせて説明をしていくことを意識していきたいものです。

文責:石川 崇