「B・S・T」と言う物語・・・・・・。
いやー、7週と言う連載期間は実にあっという間でした。
あ、作者のnina*milkです(笑)
今週でこの「B・S・T」と言う物語が終了します。
ご愛読いただいてた方ありがとうございました♪
最後のメッセージで、今更ながらになぜこんなにも「ごく当たり前」な恋物語を書いたのか、
を、ちょろっと語ってみようかなと。
「恋愛」ってのは恐らく誰しもが体験した事のあるものだと思います。
色んな男と女がいて、人それぞれにそれぞれの恋模様があるわけで、
その中でも「あるある」と言うラインに焦点を絞って書いたのがこの作品。
平凡な幸せだったり、日常だったり、恋愛だったり、
でも、そんな「当たり前」こそが、本当はとても大切で、キラキラしてるんじゃないかな?
と、nina*milkは思います。
今、恋をしてる人も、前に恋をしてた人も、
この作品を読んで、「恋愛」の楽しさやニヤニヤっとする気持ち、
「当たり前」を幸せなんだと気付く事のお手伝い?と言ってはおこがましいけど(笑)
そういう事を、作品を読んで感じてくれたら嬉しいなあと思って書いた訳です。
いい恋愛も、悪い恋愛も、自分の糧になっていったりするわけで、
たくさんたくさん、恋をしてほしいって思うわけで。
あ、テケトーすぎるのはアカンですよ(笑)
一球入魂、全力投球、猪突猛進であればあるほど面白いものだと思うので。
って、私が言っても胡散臭くもあるが。(笑)
まあ、なんだかんだ言いましたが読んでもらって、
「面白かったー」って思ってもらえれば私は十分でございます♪
今回、「B・S・T」を書くインスパイアを与えてくれた、
sweetboyには感謝しています、ありがとう(笑)
私を応援してくれた人々にも感謝します、ありがとう♪
今後もnina*milkはポツポツとではありますが、
小説らしきものを書き続けて行こうと思います。
次作の構想も固まっていますし、あとは自分の余裕さえ出来れば執筆できるのですが・・・。
ああ、なんかまとまらなくなって来ました(笑)
また、告知等出てきたらこのblogにも挟んで行こうと思います。
ではでは、7週と言う短い期間でしたが、
最後までお付き合いいただきましてありがとうございます。
また、どこかでお会いできれば幸せです。
thankyou!&withlove
nina*milk
ご意見・ご感想等はこちらへ。
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ようこそ 「B・S・T」へ
ようこそ、「B・S・T」へ。
このblogはワンシーンを切り取ったプチ小説を載せています。
そもそも「B・S・T」ってナニ?と言いますと、
Bed side talking を勝手に略して「B・S・T」と名づけました。
物語は回ごとに、ひとつのテーマに沿って、
男と女の睦み事と。会話によって進んでいきます。
「skin」 「envy」 「smell」 「love」 「good-bye」 「kiss」 「voice」
物語は以上の全7話、毎週金曜日の更新となります。
短い期間ですが、暇つぶしがてらご愛読くださったら幸いです。
管理人はnina*milk
このblog以外にもこんな blogをやっていたり。
(上記のblogは全話掲載終了しています)
こんな blogもやっていたり。(こちらのblogも全話掲載終了しています)
こんな websiteを細々運営していたりしています。
お暇な方は、合わせてお楽しみください。
と、宣伝も兼ねてみたり。
一話読みきりコンパクトサイズの「B・S・T」
稚拙な文章ではありますがお楽しみくださいませ。
nina*milk
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第七回 「 Voice 」
「どうしたの?」
一樹は腕の中の真由美に優しく問いかける。
真由美は一樹の細くしなやかな腕に包まれながら、ぼんやりと少し前の事を思い出していた。
「ちょっと昔の事思い出してたの・・・」
寂しげに微笑む真由美の切れ長の目を見て、一樹は真由美の頭を優しく撫でた。
「昔の事?」
「うん、昔の事。あまりいい思い出じゃないんだけどね」
一樹はその言葉を聞いて、小さく溜息を吐きながら、
「いい思い出じゃなくてもそんな風に思い出しちゃったりするの?」
と、真由美に聞く。
「いい思い出じゃない事ほど思い出しちゃったりするの、でもそれは今が幸せだからかもしれない」
真由美はそう言うと、一樹の胸に頬を摺り寄せた。
一樹の鼓動の音が優しく真由美の鼓膜を震わせた。
子供のように一樹の胸に擦り寄ってきた真由美を、一樹は優しく包み込むように抱き締めた。
「良くない思い出を思い出さないように、これからは俺が真由美を大事にするから」
真由美を腕に包んだまま、一樹は穏やかな声で告げた。
腕の中で小さく頷く真由美。
2人の体温で暖められたベッドは素肌のまま横たわる2人には心地よいぬくもりだった。
部屋の中は2人の肌とシーツが交じり合う衣擦れの音と、2人の穏やかな鼓動だけが聞こえる。
静かな、とても静かな夜。
穏やかに流れる2人だけの時間。
「・・・一樹」
一樹の鼓動を聞きながら小さな声で真由美が呟く。
「どうしたの?」
一樹は真由美の顔を覗き込むように返事をする。
真由美はくすくすと嬉しそうに笑う。
急に笑い出した真由美に不思議そうに一樹が問う。
「ん?どうしたの?」
「一樹っていつも「どうしたの?」って聞くの口癖ね」
「え?そうかな?自分じゃ気付いてなかった、変?」
真由美がニッコリと微笑む。
「ううん、変じゃないよ。一樹が「どうしたの?」って言うのすごく好き」
「好きなのか?良くわかんないけど、真由美が好きならいいや」
一樹も真由美に釣られて笑う。
ただでさえ優しそうな甘い顔の一樹は、笑うと一層優しい表情になる。
嬉しそうに笑う一樹の顔を見ると、真由美もまた幸せな気持ちに包まれた。
真由美は一樹の頬に小さく口付けをして言う。
「一樹、大好き、ありがとうね」
「なんだよ唐突に、俺も真由美が大好きだよ、でもありがとうって・・・?」
はにかむような笑顔を覗かせる真由美。
「一樹とこんな風に付き合えるようになって、私、前よりも強くなった気がするから、だからありがとう、なの」
「そっか、強くならなくったって俺がこれからずっと守ってやるのにな」
一樹は真由美の言葉を聞いて嬉しくも思い、ちょっぴり寂しいとも感じた。
「うん、ずっと守ってね、こうして私をぎゅって抱き締めていて離さないでね」
一樹の身体に腕を回し、しがみつくように抱きつく真由美。
その腕の強さに答えるように、一樹もまた強く真由美の身体を抱き締めた。
2人の顔が近づく、自然に2人は瞼を閉じ柔らかな唇を重ね合わせた。
確かめ合うように2人は小さく口付けを繰り返し、徐々に深い口付けへと変わっていく。
サラサラの真っ直ぐな一樹の髪の毛に、真由美は指を絡ませる。
もっと近くへ、もっと強くと一樹を求める真由美。
一樹は時折吐息を漏らしながら、自分の腕の中にすっぽりと収まる真由美の小さく細い身体を、
強く抱き締める。
もっと近くへ、もっと強くと真由美を求める。
「一樹・・・」
「真由美」
同じタイミングで、互いの名を呼び合う。
2人身体がシーツの中で蠢いた。
熱を持つ身体、ベッドの中の気温がさっきよりもぐっと高まった。
火照った肌にじんわりと汗が滲んだ。
「熱い」
「うん、熱いね」
そう言って、一樹が2人を包んでいたシーツをはぎとった。
ひんやりとした部屋の空気が全裸の2人の身体を包む、それは今の彼らにとって、
心地よい冷たさだった。
そして再び、2人は深い口付けを交わす。
一樹は真由美の身体の上に乗り、真由美の唇から頬へ、首筋へと唇を移動させていく。
首筋に流れる一滴の真由美の汗を舌先で拭うと、小さく真由美が吐息をこぼした。
片手で真由美の丸い乳房を愛撫しながら、もう片方の手で、真由美の髪をかき上げた。
真由美の耳元へ唇を寄せる、舌先で真由美の耳を舐めながら時折吐息を吹きかける。
その度に、真由美は敏感に身体を反応させる。
乳房を愛撫する指先が、真由美の乳首を摘んだ。
最初は優しく転がすように、そして時折強く。
真由美は切なそうな甘い声を上げて、一樹の身体にしがみつく。
鼓動が早まり、息遣いが荒くなって行く。
そんな様子の真由美を一樹は見ながら耳元で囁いた。
「どうしたの?」
耳元でダイレクトに響く一樹の甘い声に真由美は一層大きく身体をくねらせ、
甘い吐息を漏らした。
「どうしたの?真由美」
そう聞きながら、一樹は真由美の乳首を強く摘む。
真由美の身体が弾み、切ない声を響かせる。
更に荒くなって行く真由美の息遣いに、一樹は再び囁いた。
「好きだよ真由美」
ぺろりと耳へ舌を這わせる。
真由美は夢中で一樹の身体にしがみつく。
「一樹・・・」
乳房を愛撫していた片手は、真由美の太股の奥へと移動していくと、
真由美の身体の中で一番熱を持った場所へと辿り着く。
既に入り口の方までヌルリとした粘液が溢れ出している。
一樹は長い指にその粘液を絡ませながら、熱く火照った場所を愛撫する。
声にならない真由美の声が漏れる。
はぁはぁと短く息を吐きながら、真由美は一樹の指を受け入れる。
「すごく熱いね、どうして?」
意地悪な質問をする一樹、潤んだ瞳で一樹を見つめる真由美。
「可愛い」
再び真由美の耳元で囁き、耳と、湿った場所と同時に愛撫を繰り返す。
真由美の反応を身体中で感じ取りながら高まっていく。
「一樹、一樹・・・我慢出来ない」
息を荒げながら真由美が言う。
一樹はニッコリ微笑むと、
「どうしたの?我慢出来ないって何が?」
「んんっ・・・意地悪」
一樹は切なそうに答える真由美の顔を嬉しそうに見つめながら口付けする。
既に硬く熱を持った塊を、真由美の湿った場所へゆっくりと滑り込ませていく。
真由美は切なそうな甘い声を上げて一樹を受け入れる。
一樹は真由美の上で身体を大きく揺さぶった。
苦しそうでいて、幸せそうに真由美が声を上げる、
一樹も息を荒げながら甘い吐息を漏らす。
何度も抱き締めあってきたのに、何度も求め合ってきたのに、その度に高揚する心と身体。
2人の身体の熱は益々上昇して行った。
「ね、一樹って「どうしたの?」って良く使うでしょ?」
熱くなった身体を冷やすようにうつ伏せに寝転んで、真由美が楽しそうに言った。
一樹も真由美と同じようにうつ伏せに寝転んだまま、
タバコをくゆらせていたが、真由美の言葉を聞いて「え?」と小さな声で答える。
「普段も良く言うけど、エッチの時も「どうしたの?」って良く言ってるよ」
一樹はその最中の事を思い浮かべようと視線を泳がせている。
「ん~、そうかなあ?」
真由美はくすくす笑いながら、
「普段一樹が「どうしたの?」って言う時も、エッチの時に「どうしたの?」って言う時も、
声のトーンが一緒だからなんとなく普段から連想しちゃうんだよね私」
そう言うと、恥ずかしそうに肩をすぼませた。
「エッチだなあ、真由美ってば」
「一樹の「どうしたの?」って言葉もそうだけど、一樹の声がすごく心地良くて、
聞いてるだけで安心するし気持ちよくもなってきちゃう」
そんな真由美の言葉を聞いて、一樹は嬉しそうに微笑む。
優しい優しい表情、真由美はその表情を見てまた幸せな気持ちになった。
「俺もその気持ち分かるなあ」
「ん?」
「俺も真由美の切ない声聞くと心地よくって、安心して、気持ちよくなるよ」
「もうっ」
まんざらでもない様子で真由美は照れくさそうに笑った。
一樹もまた嬉しそうに微笑んだ。
真由美はそんな一樹の顔を見て思い出していた。
一樹が真由美に初めて声を掛けた時の事を。
その時も一樹は優しい穏やかなトーンで「どうしたの?」と声を掛けた。
その優しい声と、包み込むような笑顔に真由美の頑なだった心は不思議とほぐされ、
一樹の優しさに甘える事が出来たのだ、と。
真由美はその出来事を思い出して1人照れくさそうに笑った。
「ん?どうしたの?」
一樹は同じ言葉で真由美に問いかける。
「思い出してたの、幸せな時間が始まった時の事」
ニッコリと笑うと、一樹の頬に小さくちゅっと音を立てKISSをした。
愛しいと思える人の声。
優しい声、寂しそうな声、悲しい声も甘い声も。
声は時に体温になり、
声は時に振動となり、
声は時に心を震わせる。
声は見えないけど、一番正直で、人を愛する強さを与えてくれるもの。
声に触れて、言葉に触れて、心を語り合って、
恋人達はより一層の絆を深めていく。
第六回 「 Kiss 」
「ねぇ、知ってる?KISSが上手な男はセックスも上手なんだって!」
唐突に口を開くと、あいはとびきりの笑顔を利伸へと見せる。
利伸は「え?」と間抜けな声を出すと、あいの身体を洋服越しに愛撫していた手を止める。
「なに?急に」
呆れた様に笑いながら利伸はあいの横に寝転んだ。
「んとね、海外のドラマでそう言ってた」
「・・・あ、そう」
再び呆れたように利伸が息を吐く。
「ねえねえ、本当にそうなのかなあ?だとしたら利伸はあんまりセックスが上手じゃないって事になるね」
そう言うと、あいは楽しそうに1人笑う。
利伸はむっとした表情で、
「ちょ・・・ちょっと、じゃあ俺はKISSが上手くないってこと?」
あいは「うふふ」と笑いながら、
「さあ?」
と、意地悪な返事を返す。
「そもそもKISSが上手とか下手とかってセックスに関係あるのかよ」
完全にふてくされた様子で、利伸は楽しそうに笑うあいの細くなった目を見つめた。
あいはうつ伏せにベッドに寝転がって、口を開く。
「うーん、わかんないけどー。でも、海外だとKISSの上手下手が決め手みたいなこと言ってたよ?」
「俺、外国人じゃねーからカンケーないもん」
あいはいじけた利伸の頬を人差し指でちょんっとつつく。
「もう、利伸はすぐにいじけるんだからー。そこが可愛いんだけどね」
子供扱いされて更にふてくされる利伸。
そんな姿を見て、更にあいははしゃいだ。
「よし、じゃあ試そうぜ」
利伸はガバッとベッドから起き上がり、横たわっていたあいの腕を引っ張り起こす。
きょとんとした表情を浮かべ、
「試すって何を?」
と、あいが利伸に問う。
利伸は何も答えずに、あいの綺麗な形の唇へとKISSした。
強く押し付けられた利伸の柔らかな唇から、湿った舌先があいの唇の中へと進入しようとする。
「んんっ!ちょっと」
あいは利伸の胸元を小さな手のひらで強く押し返し、濡れた唇をぬぐった。
「もうっ、ほら、そういうところがダメなんだよー」
責めるような視線で上目遣いに利伸を見つめた。
「もっと、なんていうか・・・ロマンチックなKISSが女は好きなんだと思うよ?」
「ロ・・・ロマンチックって言ったって今更・・・」
そう言いかけた利伸にあいはそっと近づくと、優しく利伸の唇にKISSする。
ちゅっと小さく音を立てて、綺麗な形のあいの唇と、柔らかな利伸の唇とが重なり合う。
あいは利伸の両頬を小さな手のひらで包んだ。
利伸の下唇にあいの唇が吸い付く。
下唇にだけ口付けをしたまま、あいは濡れた舌で下唇の形をなぞるように舐めまわす。
そして、次は上唇へとその濡れた舌が移動していく。
下唇、上唇と交互にゆっくりとあいの舌先がなぞっていく。
利伸はそんなあいの口付けに翻弄されるかのようにうっとりと瞼を閉じ、
唇に感じる舌先を、唇の感触を、あいの愛撫を受け止めていた。
気付けば、利伸の逞しい両腕はあいの小さな身体を抱き締めている。
ピチャピチャと子猫がミルクを舐めるように、あいは利伸の唇を舐めまわす。
そんな愛撫に堪えきれず、利伸が舌を出しあいの舌と絡めようとするが、
上手くそれから逃れる。
歯痒く、じれったさを覚える利伸、だがあいの口付けに黙って身を委ねる。
あいは利伸の唇の形を舌先でゆっくり何度もなぞり、舐め味わう。
これだけで身体が熱くなっていくのを感じる、
同じように、利伸の身体が熱く高まっていくのを、
あいを強く抱き締める両腕から感じ取っていた。
「もう、我慢出来ないよ・・・」
荒くなった吐息混じりに利伸が口にする。
あいは何も答えず、利伸のうっすら開いた唇に再び吸い付いた。
柔らかな利伸の唇の中へとゆっくりと湿った舌を挿入させて行く。
熱がこもった唇の中、同じように濡れた利伸の舌先があいの舌先と絡み合う。
ヌルリとした感触の互いの舌先をゆっくり絡めあいながらたっぷりと味わう。
互いの唇を行き来する舌先、濡れる唇、荒くなって行く2人の吐息。
利伸の頬を包んでいたあいの手のひらは、いつしか利伸の首筋へと回り強く抱き締めていた。
息が出来なくなるほどに、2人は唇と唇を重ね合わせ続ける。
2人の粘液が絡み合って、それは淫らで甘い音を奏で2人の唇の中で響いた。
「もっと、もっとKISSしたい・・・」
あいから唇を離した利伸が言う。
ベッドにあいを横たわらせ、あいの履いているジーンズを脱がせ、
黒色のパンティをずり下ろす。
あいは小さく甘い吐息を漏らした。
利伸はあいの太ももの間に顔を埋め、あいのもう一つの唇へとKISSをする。
一番熱くて、一番湿った唇へとゆっくりと舌を伸ばし、なぞるように舐めまわす。
利伸の舌先が、あいのもう一つの唇を舐める度に湿った音と、
あいの甘い声が部屋に響いた。
ゆっくりと丹念に、利伸はあいの唇を舐めていく、
時折、小さく硬い突起に舌先が触れる。
その度に、あいの身体がビクンと大きく反応する。
「ここが好き?」
利伸は小さく呟き、その小さく硬い突起を繰り返し繰り返し舐め上げる。
あいの声は、更に淫らに響き渡る。
ジリジリとした快楽が、あいの身体に流れていく。
その快楽が徐々に高まっていくのを感じた。
「だめっ、利伸・・・私も、私も利伸にしたいよ」
身体をくねらせながら懇願する。
利伸はあいの太ももの間から顔を上げて答える。
「しなくていいよ、それよりもあいの中に今すぐ入りたい」
そう言うと、利伸は自らジーンズを脱ぎ、パンツを脱ぎ捨てた。
既に硬く熱くなっている塊をあいのもう一つの唇の入り口へと押し当てる。
「入れてもいい?」
「うん、入れて」
そう答えるが、利伸は少し意地悪に微笑んだ。
「さっきのお返し」
そう言うと、利伸は自分の塊を手にするとあいの濡れたもう一つの唇の周りへとなすりつける。
ヌルヌルとした液を味わうように、焦らすように、
ゆっくりとなぞる利伸。
利伸の熱い塊を、敏感な部分で感じながらあいは切ない声を上げた。
「意地悪しないで」
あいの小さく硬い突起を、利伸の塊がつついた。
あいの身体がビクンと弾む、何度も何度も繰り返し利伸の塊はあいの突起を責めた。
利伸はあいのねっとりとした粘膜と絡みついてくる粘液の感触に、
堪らず吐息を漏らす。
あいもまた、利伸の熱くて硬い塊の感触と、その塊が与える刺激に何度も声を上げる。
「お願い、KISSして」
頬を紅潮させ、切なそうな表情であいが言う。
利伸はあいと身体を密着させ、唇へとKISSをする。
と、同時にあいのもう一つの唇へも、利伸の熱い塊が深く口付けを交わす。
重なり合った唇の中、切なそうなあいの声がこもる。
深く挿入された舌先が絡み合い、同じように深く挿入された利伸の塊が、
あいの身体の奥深くで蠢いた。
2人は互いの唇を優しく噛みながら、舌先を絡ませあい、何度も何度もKISSを繰り返していく。
身体を揺さぶりながら、互いの身体を強く抱き締めあい、深く深く口付けしあう。
奥へ奥へと舌先を絡めあうように、互いの身体も奥へ奥へと貫いていった。
絶頂が2人の身体を包み果てても尚、2人の唇は重なり合っていた。
「・・・唇、腫れちゃってない?」
照れくさそうにあいがポツリと呟いた。
「ん~、腫れてないと思うけど」
あいの唇をじっと見つめ利伸が答える。
「でもさ」
「うん」
「唇が腫れるまでKISSしよっか?」
利伸がにっこりと笑って言う。
「え~」と言う間がないほどすぐに、利伸はあいの形のいい唇へKISSをする。
あいの唇をゆっくりと味わうように、ゆっくりとゆっくりと、
子猫がミルクを舐めるように、小さく舐めまわしながら、2人は終わらないKISSを重ね続けた。
たかがKISS、されどKISS。
初めて唇を重ね合わせた瞬間を覚えてますか?
あれほどドキドキとときめいた瞬間が、
いつしか当たり前の「キス」に変わっていたりして。
たかがキス、されどKISS。
一番最初に、好きな人に触れる一番大事なその場所。
一番シンプルで、一番愛を感じる瞬間。
それが、「KISS」
第五回 「 Good-bye 」
今まで硝子が見た事もないような神妙な面持ちで、勇斗が俯きがちに目の前で正座していた。
その前で硝子は唇をぎゅっと噛み締め、勇斗を責める様な視線で見つめている。
「ねぇ、なんにも言わないの?」
俯き黙ったままの勇斗に痺れを切らし硝子が口を開いた。
その鋭い口調に勇斗は身体をビクリと弾ませ、ようやく顔をゆっくりと上げた。
「・・・ごめん」
気まずそうに視線をゆらゆらと漂わせながら、勇斗は小さく呟いた。
「なにがゴメンなの?」
硝子は勇斗の言葉にイラつきを覚え、更に厳しく追及するのだが、
勇斗は何も答えずに大きく溜息をこぼした。
「溜息吐きたいの、私の方なんだけど?」
硝子はわざとらしく苦笑して見せた。
「ごめん・・・」
「謝ってばっかりじゃん。さっきも言ったけど何がゴメンなの?ちゃんと話してよ」
「・・・言っただろ、俺、硝子以外に好きな人が出来たんだ」
責め立てられる様に問われ、勇斗は吐き捨てるように言葉を続ける。
「だからもう硝子とは付き合って行けない。ごめん」
電話で勇斗から聞いていたこととは言え、改めて目の前で同じ事を言われ、
硝子はさぁっと血の気が引いていくのを感じた。
唇が切れそうなほどに強く噛み締め、大きく呼吸を吸い込んだ。
「・・・相手は誰?」
「硝子は知らないよ。バイトで知り合った子だから・・・」
「そう」と消え入りそうなほど小さな声で硝子が答える。
「ごめんな、こんな風になっちゃうなんて思ってなかった」
勇斗は硝子の顔を見つめると、優しい声で言う。
「もう私の事全然好きじゃなくなったの?」
硝子は目を閉じる。
「・・・うん、もう硝子の事前みたいに好きって言う気持ちはなくなっちゃったみたいだ」
アッサリとした口調の勇斗の言葉を聞きながら、硝子は勇斗と付き合ってきた日々を思い出していた。
毎日が幸せいっぱいの日々ではなかった、辛いことも多かった。
ぶつかり合っては話し合い、少しずつお互いを理解してきた日々。
困難があったからこそ、
勇斗への硝子の思いは今まで付き合った誰よりも強固で揺るがないとさえ信じていた。
そんな日々がこんなに脆く簡単に終わりを告げようとしていることを、硝子はとても信じられなかった。
指先がまるで氷のように冷たい。
硝子は勇斗を失う事が何よりも恐ろしく感じた。
「なくなっちゃったんだ・・・不思議だね、そんなもんだったんだね私達って」
冷たい指先を強く握り締める青白い手のひら。
「・・・ごめん。感謝してる楽しかったよ。でも分かって欲しい、もう戻れないんだ」
返事にならない勇斗の言葉に硝子は悔しさを覚えた。目に熱が篭り涙が今にも溢れ出しそうだった。
「私、勇斗の事信じてたよ。勇斗の言葉、勇斗の気持ち、私に言った言葉一つ一つ・・・」
硝子は溢れそうになる涙をぐっと堪える。
「・・・全部、全部、全部!嘘にしちゃうんだね」
涙がいっぱいにたまった大きな目を見開き勇斗の顔をみつめる。
勇斗はそんな硝子の顔を見て大きく溜息をこぼし、頭を下げた。
「ごめん。本当にゴメン。その時は本当だったんだ。硝子の事好きだったし、失いたくなかった。
でも今となっては俺が言って来た言葉も何もかも「嘘」になってしまうのかもしれないね・・・ごめん」
大きな目からポロリと一滴、大きな涙が零れ落ちた。
「ひどいよ、ひどいよ勇斗・・・勇斗の言葉を信じた私が、私が・・・馬鹿なんだね」
「硝子が馬鹿とか、ダメとかじゃないよ、俺の気持ちがなくなってしまったから・・・」
「ねえ、気持ちがなくなるってどういう事なの?意味がわかんないよ!
ついこの前まで好きとか、愛してるとか言ってたのに、
その気持ちがこんなに一瞬でなくなるって私理解出来ないよ!」
硝子は言葉を言い切ると床に身体を突っ伏し、次々溢れ出る涙を止める事が出来ずに、
声を漏らして泣いた。
「どうして?どうして?」時折そう呟きながら。
勇斗はそんな硝子にかける言葉が見つからないまま、何も言わずに黙ってその姿を見守った。
どのくらいの時間、硝子は泣き続けていただろう。
涙は止まる事を忘れたかのように、次から次に硝子の目から溢れ出して来る。
冷たくなった手のひらで乱暴に硝子は自分の涙を拭った。泣き腫らして目は真っ赤になっている。
嗚咽している呼吸を整えようと、硝子は必死に深呼吸を繰り返す。
時折苦しそうに目を閉じ、上手く呼吸が出来ないのか咳き込む。
「ねえ勇斗」
涙声で呟く。
「ん?」と、勇斗は硝子を見つめた。
「・・・その女とはもう寝たの?」
唐突にハードな質問をされ勇斗は動揺する。
「答えてよ、それくらい私に教えてくれてもいいでしょ?私と別れるんだったら答えてよ」
「・・・でも」
硝子は泣き腫らした目で勇斗を強く睨んだ。
「まだ・・・、まだ寝たりはしてないよ」
本当とも嘘とも思えるような返答に硝子は歯痒さを感じたが、
「そう・・・」
と、その返事を受け止めた。
「最後に、私のお願い一つ聞いてくれる?」
「なに?」
硝子は少し考えた後、決意した表情で言葉を続けた。
「私の事、抱いて」
しばしの沈黙。
考え込んだ様子の勇斗。
「・・・無理だよ、出来ない」
「無理は分かってる、分かってて言ってるの。私の事裏切った罰よ」
勇斗は言葉を詰まらせている。
酷く困惑した様子で眉間に皺を寄せ、苦しそうな表情を浮かべている。
硝子はとても冷酷な気持ちになって行った。
「勃たないんなら勃たせてあげるから、最後に抱いてよ。それっくらい出来るでしょ?
それが出来たんなら勇斗が別れたいって言うのを受け止めるよ」
勇斗は何も答えない。
ただ、少し責めるような目で硝子を見ている。
硝子はそんな勇斗の目を気にせずに近寄り、口付けをする。
硝子の唇から逃れようと、勇斗は顔を背けようとするが硝子の冷たい両手が勇斗の顔を掴んで離さない。
強引な口付けをしながら硝子の片手が勇斗の下半身へと向かい、
カチャカチャと音を立てベルトを外し、ファスナーを無理矢理下げると、
勇斗のパンツの中へと手のひらを押し込んだ。
まだうなだれている勇斗の塊を冷たい手のひらが包み込む。
乱暴な行動とは裏腹に、勇斗の塊を包み込む硝子の指使いはとてもとても優しかった。
ついこの間まで、2人が互いを求め合い愛し合っていた時のように硝子は優しく勇斗を扱った。
しばらく愛撫を続けるとうなだれていた塊は徐々に熱と硬さを持ち始めた。
その頃には勇斗も硝子を引き離そうとするのを諦めた様子で、
硝子の愛撫を目を閉じて受け止めていた。
「勃ったね」
勇斗の唇から離れた硝子が呟く。
泣き腫らした目が、今ではまるでガラス玉のように意思のない冷たい光を宿していた。
硝子は着ていたシャツを自ら脱ぐと、勇斗を床へと押し倒した。
力なく横たわった勇斗の身体の上を跨ぐと、
履いていたパンティをスカートを残して脱ぎ放り投げた。
「入れるよ?」
勇斗は文句を言うでもなく、ガラス玉のような硝子の目を悲しそうに見つめた。
熱を帯びた塊を手に取り、硝子は自らの身体の中へとゆっくりと腰を沈めて飲み込もうとするが、
上手く入って行かない。
前ならほんの少し勇斗と身体が触れ合うだけで、硝子は溢れるくらいになっていたのに、
今はまるで濡れていないからだ。
それでも尚、強引に勇斗の塊を乾いた場所へと押し込んでいく。
ゴツゴツとした塊が、硝子の中を少し引っかかりながらも掻き混ぜていく。
硝子は小さく声を漏らした。
勇斗の熱を身体の中に感じる。
前と変わらないその塊を、熱を身体中で感じ取りながら硝子はゆっくりと身体を動かした。
唇を強く噛み締め、目を硬く閉じ、勇斗との最後のセックスを味わっていた。
硝子の下で勇斗が吐息を漏らした。
その吐息を耳にしながら、硝子は更に身体を大きく揺さぶった。
「ねえ、勇斗も動いてよ」
勇斗は何も言わずに身体を起こし、硝子の柔らかな身体を膝に乗せたまま動き始めた。
硝子の背中に勇斗の細い腕が絡み付いた。
その腕の温かさに硝子は胸がぎゅっと締め付けられるのを感じた。
2人は途切れ途切れに吐息を漏らしながら、ただ動き続けた。
硝子も勇斗の背中へと両腕を絡ませ、強く強く抱き締めた。
「・・・勇斗」
時折、堪えきれず硝子は勇斗の名を呼んだ。
「勇斗、勇斗・・・勇斗・・・」
何度も、何度も勇斗の名を呼び続けている内に、
硝子の目から再び幾筋もの涙が零れ落ちていく。
「勇斗・・・」
涙声に変わっていく硝子の声。
「勇斗・・・、勇斗」
声が震える。
もう二度と呼ぶことが出来ない名前。
もう二度と抱き締める事の出来ない身体。
硝子はその事を痛切に感じながら呟いた。
「・・・愛してる・・・」
しばらくして勇斗は果てた。
気まずそうに身なりを整えると、
「ごめんな硝子・・・こんな事になっちゃって。許してな」
硝子は勇斗に抱かれた姿のままで背中を向け床に寝転んで何も答えない。
「許してな・・・なんて勝手だよな。ごめん」
「勝手だよ・・・・・・、でも、もういいよ。許すも何も、仕方ないもんね・・・・・・」
勇斗に背を向けたまま、なんの表情も掴み取れないような乾いた声で答える。
「もう行っていいよ。さようなら、ありがとね、今まで。幸せだった・・・よ」
「・・・いいのか?行っても」
おずおずと尋ねる。
「いいも悪いも、私にもう気持ちがないんでしょ?だったらもう帰って」
「・・・ごめん。・・・・・・じゃあ、俺行くから。ごめんな硝子、許してな」
ゆっくりと勇斗は立ち上がると、硝子の部屋を後にした。
硝子は勇斗が部屋を出て行った後もしばらく横たわっていた。
「許せるわけないじゃん・・・嘘つき」
ガラス玉のような目をしたまま呟いた。
その目からはとめどなく涙がこぼれていた。
恋した先に終わりがある。
愛した先に終わりがある。
どんな別れも、どんな終わりでも、どうしたって悲しみが残る。
どんな別れも、どんな終わりでも、どうしたって後悔が残る。
その悲しみや、後悔をゆっくりと乗り越える日がきっと来る、必ずやって来る。
そしてまた人は恋に落ちていくのだろう。
今まで愛した人を心の片隅に残して。
また新たに人を好きになるのだろう。
いつか抱えた悲しみや後悔が過去になり、思い出になるその日まで。
願わくば、次の恋こそ幸せな恋となりますように。
第四回 「 Love 」
夕焼け色の間接照明が枕元でぼんやりとした光を放っている。
キシキシと小さく小刻みな音を立てて、2人で寝るには大きすぎる安ホテルのベッドが揺れている。
妙に柔らかすぎる枕にしがみつくようにして、獣の姿勢でかおりは拓真を受け止めていた。
拓真は大きく丸いかおりのお尻に指が食い込むほど鷲掴んだまま、身体を前後に大きく揺さぶる。
額からこめかみを通り、大きな汗の滴がかおりの背中へとぽたぽたと落ちる。
嗚咽にも似たかおりの卑猥な声と、拓真の荒く短い息遣い、
2人の粘膜が絡み合い粘ついた音が小さなホテルの部屋の中、まるでBGMのように流れている。
「た、拓真くん・・・私、もうダメ。 変に、変になっちゃう」
いつもながらに激しい拓真の欲求に、かおりは何度も根を上げる。
拓真はかおりの哀願を耳では聞きながらも、その激しい動きをやめずに言った。
「はっ・・・、まだ、まだだよかおり。もっと気持ちよくなろう」
その直後、かおりはより一層大きな声を上げた。
拓真が更に強くかおりの尻を掴み、奥へ奥へと責め立てたからだ。
「ああっ、拓真くん・・・壊れちゃうっ!」
かおりが声も出ないほどにぐったりとするまで、
拓真のかおりへ対する欲求が、そして自分の欲求が放たれるまで、
2人は安ホテルの大きなベッドを揺らし続けた。
「大丈夫?かおり」
拓真はベッドに横たわり、頬杖をついた姿勢でタバコの煙をゆっくりと吐き出した。
その横で、枕に顔を突っ伏したままでかおりはぐったりと横たわっている。
「うん、大丈夫。いつもの事だけど、拓真くん激しすぎです」
突っ伏していた顔をくるりと拓真のほうへ向けると、
恥ずかしそうに微笑んで言う。
くしゃくしゃに乱れた長いかおりの髪の毛を、咥えタバコのまま拓真は笑って指で直した。
「ねえ」
拓真はタバコを灰皿で揉み消すと、急に真面目な顔でかおりの目をじっとみつめる。
「なあに?拓真くん」
そんな拓真の表情にどきっとしながら、かおりはくりくりとした目を大きく見開き、
拓真を見つめ返した。
「そろそろさ、「拓真くん」ってのヤメにしない?」
「え?」
「なんかさ、他人行儀って言うかさ。俺たち結構良く遊んでるし、セックスもしてるし、
それになんか俺って「くん」付けされるキャラじゃないって言うか」
「「くん」付けだと嫌?」
かおりは不安そうに尋ねる。
「嫌って言うか、あー、なんていうか・・・」
拓真は言い難そうに言葉を濁すと、少し伸び始めたクセのある髪の毛をくしゃくしゃとかき上げた。
かおりは「ん~」と少し考えた後、何か思いついたように笑うと、
「あ、じゃあ拓ちゃんって呼ぶのは?」
「た、拓ちゃん・・・かあ・・・」
「これも・・・嫌だった?」
しょんぼりと気まずそうなかおりの表情を見た拓真は、
かおりの肩に手を置いて焦って言葉を続けた。
「あ、嫌じゃない!うん、拓ちゃん・・・いいんじゃないかな。うん」
と、作り笑いバレバレの笑みを浮かべた。
かおりは少し怪訝そうな表情をすると、
「でも、いきなりどうしたの?呼び方気にしたりして、
って言うか最初から「くん」付けされるの嫌だったのかな?」
拓真はまっすぐにみつめるかおりの目を見つめ返すことが出来ないまま、
「最初から嫌だったって訳じゃないよ、ただ最近気になりだしたって言うか、
俺の勝手な妄想って言うか、考えって言うか、憧れって言うか・・・・・・ん、なんでもないよっ」
そう言うと、ふいっとかおりに背を向けてしまう。
「え?え?どうしたの?怒ったの?何?意味わかんないよ」
かおりは上半身を起こすと、背中を向けた拓真の身体を揺さぶった。
「ねえ、こっち向いてよ。呼ばれ方気に入らないなら、拓真くんが呼ばれたいように呼ぶからっ」
困惑した様子のかおり。
背中を向けたままの拓真。
暫し不穏な沈黙の時間が流れる。
かおりの問いかけに何も答えない拓真、かおりは小さく溜息をこぼした。
「なんか良くわかんないけど、怒らせちゃったならゴメン」
少し拗ねたような口調でかおりは拓真の背中を見つめ謝る。
「私、馴れ馴れし過ぎたのかな?ゴメンね、これから気をつける・・・
拓真くんとは楽しくこれからも遊びたいし、だから機嫌直して?」
それでも拓真は頑なな姿勢を崩そうとしない。
「はぁ・・・、嫌われちゃったかな。嫌われるも何もないか、別に好きあってるわけでもないもんね」
かおりは大きな溜息を一つ吐くと、1人寂しげに微笑んだ。
その言葉を聞いて、拓真はがばっと急に起き上がると、かおりの方を向いた。
「違う!嫌ってなんかないよ」
大きな声で拓真が言う。
その様子に驚いたかおりだが、すぐに少しほっとした顔をして、
「良かった・・・、やっと私の方を向いてくれたね」
そう言うと、優しい微笑を浮かべた。
拓真はそんなかおりの優しい笑みと言葉に、ぎゅっと拳を強く握り締めると、
ベッドの上で正座をする。
「ど、どうしたの?何?」
「嫌ってなんかいないんだ」
裸でベッドの上に正座した拓真は、
ぎゅっと膝で握り締めた拳をじっと見つめたまま、
「嫌ってなんかなくて・・・、むしろ、むしろその逆なんだ」
かおりはきょとんとした顔で拓真の言葉の意味をゆっくりと噛み砕く。
「え~っと・・・、要するに私の事・・・」
「好きだ」
かおりの言葉の続きを拓真が答えた。
「えっ?またまたっ拓真くんってば」
焦った様子のかおり。
「冗談じゃないよ。俺、チャラチャラしてるように見られるけど・・・って言うか、
チャラチャラしてるけど、好きとか嫌いとかそういう大事な気持ちを冗談や嘘なんかで口にしないから」
俯いて拳を見つめていた視線を上げ、拓真はかおりの目をまっすぐに、熱く見つめた。
「でも、ほら私達って、なんて言うか即ヤリ?みたいな、ノリ?みたいな感じでずるずると・・・ね」
真摯な拓真の熱い視線を見つめ返すことが出来ずに、
ごにょごにょと口ごもりながら答えるかおり。
「うん、確かに俺たちなんとなくって感じで今まで遊んできた。だから遊びだって思ってた。
でも今は違う、かおりが好きだ。頼りない俺なんて嫌か?」
かおりはそっと上目遣いでゆっくりと口を開く。
「・・・・・・嫌じゃないよ」
消え入りそうな声で呟くかおり、拓真は「え?」と問い直す。
「嫌じゃないよ、私も拓真くんの事いいなって、好きだなって思ってたもん」
かぁっと顔が熱くなるのをかおりは感じた。
夕焼け色の間接照明の中でも、拓真からかおりの頬が真っ赤になるのが見て取れた。
「マジで?ホントにっ?!」
かおりの口にした言葉を聞いて、
さっきまで真面目な顔をしていた拓真が急に顔をくしゃっとさせて微笑んだ。
いつもはクールに見える拓真だが、こんな風に笑うとまるで子供のように幼い表情になる。
そんな無邪気に喜ぶ拓真の顔を恥ずかしそうに見つめるかおり。
「うん、マジで。本当に」
拓真は「やったー」と声を張り上げると、かおりの身体に抱き付いた。
「マジで嬉しい。俺、かおりは絶対俺の事そんな風に思ってないって諦めてたから」
今までにないほど拓真はかおりの柔らかい身体を強く抱き締めた。
「ううっ、拓真くんっ。苦しいよっ」
「あ、ごめんっ。つい、嬉しさのあまり」
アハハと笑いながら拓真は抱き締めていた腕の力を少し緩めた。
かおりがふと思い出す。
「ねえ、これとさっき言ってた呼び方の話とどう繋がりがあるの?」
拓真はかおりを腕から解放すると、とても恥ずかしそうに言う。
「あ~、いやあの、「くん」付けってなんかよそよそしいでしょ?
で、呼び捨てで「拓真」って呼んでもらえたら、なんか一層親密になれるって言うか・・・、
えーっと、要するにまあ、自分が惚れた女には呼び捨てで呼んでもらいたいな、
とか勝手に考えてたって事で」
恥ずかしさも相まって、拓真は一気にまくしたてた。
かおりはくすくすと面白そうに笑う。
「拓真くん可愛い~っ」
「ふんだ、しょうもない事にこだわって拗ねて悪かったなっ」
拓真はまたいじけたような口調になる。
「もう、意外と子供っぽいんだから。でも、そんな拓真くんも好きだなっ」
嬉しそうな目で、かおりは拗ねた拓真の顔を覗き込みながら言う。
いじけた顔を覗き込まれた拓真は唇を尖らせながら、
「「くん」付けはヤダ」
と、また子供のようにいじけて見せる。
かおりは拓真の顔を覗き込み上目遣いで優しい声を出す。
「拓真の事、私も好きだよ。これからもよろしくね」
「かおり・・・」
上目遣いのかおりの目をじっと見つめながら、
拓真はかおりの唇に吸い寄せられるようにして口付けた。
くりくりとしたかおりの目がゆっくりと閉じ、拓真の口付けを受け止めた。
「好きだよ、かおり・・・」
かおりに何度も口付けをしながら拓真は何度も呟く。
「私も好き。拓真の事大好き」
かおりは拓真と夢中で口付けを交わしながら、しなやかに両腕を拓真の首筋に回し抱きついた。
拓真はそんなかおりを優しく包み込むように抱き締め返しながら、
ゆっくりと身体をベッドへと横たわらせる。
「かおり」
「拓真」
何度も何度も、互いの名前を呼び合いながら2人は「恋人同士」としての、
初めてのセックスへとのめりこんで行った。
夕焼け色の照明の中、2人で眠るには大きすぎる安ホテルのベッドが、
いつもよりもキシキシと大きな音を立てて激しく揺れた。
聞こえるのは2人が呼び合う互いの名前と、荒い息遣い。
そして、2人の粘膜と粘膜が奏でる何よりも甘いBGM。
想いからゆっくり始まる恋もある。
身体を重ね合わせるうちに深まっていく想いや恋もある。
想いが最初でも、
身体が最初でも、
それでも辿り着く先が「恋」なら、
それは大切な気持ち。
第三回 「 smell 」
明かりを暗く落とした室内でチカチカと光を放つ大きなTV。
少し前に流行った恋愛映画が映されている。
TVの前に置かれたベッドの上、寝転がりながら映画を見ている2人。
千絵は真剣に映画に見入っている様子だが、
明彦の方はといえば甘ったるいフィクションの恋愛映画よりも、
ノンフィクションの恋愛対象である千絵の事が気になって仕方がない。
千絵の背後に身体を密着させ寄り添っている。
目の前には千絵のゆるくカーブした茶色の髪の毛。
毛先が時折明彦の鼻先に触れる。
その度に、ふわりと甘い香りが鼻をくすぐる。
明彦は何も言わずにすぅっと大きく息を吸い込んだ。
何度か繰り返す内、千絵が身体を捻らせて明彦のほうへ振り返る。
「どうしたの?映画飽きちゃった?」
真剣に映画に見入っていた千絵は、ちょっと不機嫌そうな声のトーンで聞いた。
「あ、ううん、そんな事ないよ。気になる?」
「うん、なんか後ろで何度も深呼吸してるから何かなって思って」
「あ、ごめん。ただ、すごくいい匂いするからさ、千絵の髪の毛」
そう言いながら明彦は千絵の髪の毛を指先でそっと撫でた。
千絵は自分の髪の毛を一束鼻先へ寄せてくんくんと匂いを嗅ぐ。
「シャンプー前と同じだよ?いつもの匂いだと思うけどなあ」
「そうなの?でも、すごくいい匂い」
明彦は顔を千絵の髪の毛に近づけて匂いを嗅ぐフリをして千絵の柔らかな頬に口付けをして、
鼻を千絵の顔に摺り寄せた。
「千絵はすごく甘い匂いがする」
「もうー、そんな事言って映画退屈してたの誤魔化すんでしょ」
千絵は少し意地悪な言葉を言いながら、まんざらでもない様子で「ふふふ」と笑った。
「さ、続き見ようよ」
そう言ってまたTVの方へと顔を向ける。
背中を向けられた明彦は千絵の小さな身体を後ろからぎゅっと抱き締めた。
「千絵、しよ?」
千絵の耳元で明彦が囁く。
「ん~、だめっ。私映画見てるの」
身体を捩らせる千絵、そんな千絵を更に強く抱き締める明彦。
「いいよ、千絵は映画見てて」
そう言うと、抱き締めた片手が千絵の着ているカットソーの中へと進入した。
ブラの隙間から手を忍び込ませ千絵の小ぶりな胸を掴んだ。
「やんっ」
小さく千絵が声を上げる、明彦のもう片方の指先が千絵の口元へ運ばれ、
うっすら開いた千絵の唇の中へと進入した、指先に感じる千絵の艶かしい舌の感触。
明彦は千絵の首筋へと顔を摺り寄せ、唇でそっとなぞった。
その僅かな刺激と、胸への刺激で千絵は身体をくねらせながらハアハアと息を荒げる。
口に入れられた指先に、千絵は舌を絡ませながら明彦の与える刺激に意識を集中させる。
「千絵、可愛い」
吐息混じりに千絵の耳元で囁き、硬く突起し始めた千絵の乳首を軽く指でつまんだ。
「んんっ」
くぐもった声が漏れる。
明彦は再び千絵の首筋へと唇を這わせる。
しっとりと肌が汗ばんでいるのを感じる。
舌先で千絵の首筋を味わいながら、片手で器用に千絵のブラを外した。
洋服の下で開放された胸を明彦の手のひらが包み込む、
ゆっくりと揉み解しながら千絵の身体を明彦の方へと、
振り向かせた。
トロンとした目で明彦を見つめる千絵、明彦はくすっと笑うと、
「映画、もう見なくていいの?」
と、意地悪な質問をする。
千絵は唇を尖らせると明彦のピンと張りつめた下半身へと手を伸ばした。
「もう、意地悪。こんなに大きくなってるクセに」
そう言って明彦の薄い唇へ口付けをする。
2人はすぐに唇を開き、互いの舌を絡ませあった。
「明彦はタバコの匂いがするよ」
「やな匂いだな」
「ううん、私、明彦の吸うタバコの匂い好きだよ」
再び重なり合う唇。
明彦の指先が千絵の乳首をつまむ、その度に千絵の身体がピクリと弾み一層激しく舌が絡みつく。
カットソーを少し強引に脱がし、千絵の素肌が覗く。
明彦は、千絵の胸を鷲掴むと、吸い付くようにして乳首を口に含んだ。
千絵の甘い声が部屋に響く。
うっすら汗ばんだ素肌を明彦の手のひらが撫で回す。
「ねえ、濃くなったよ?」
乳首から一瞬口を離して明彦が言う。
「えっ・・・?何が?」
明彦の愛撫に翻弄されながら、戸惑った口調で千絵が尋ねる。
「千絵の匂いが濃くなってる」
「汗の匂いでしょ?」
「ううん、千絵の匂い。甘くって優しい匂いがする」
そう言いながら、ゆるやかにカーブを描く千絵のウエストへと唇を移動させる。
「あんっ、くすぐったいよう」
千絵の履いているミニスカートの中へ明彦は頭を突っ込む。
「ああっ、ダメ!お風呂に入ってからにしようよ」
急に我に返ったように、慌てた様子で千絵が身体を起こす。
その言葉をまるで聞いていない様子で、明彦はスカートの中のパンティへと手を伸ばし脱がし始める。
「やだってばー、・・・んんっ」
上半身を起こした状態で、明彦を止めようとしていた手が止まる。
代わりに荒い息遣いと、甘い声が漏れ始めた。
明彦は千絵のスカートの奥、一番熱を持った場所へ指を侵入させながら舌先で、
一番敏感な突起を刺激している。
「ああっ、ダメ・・・」
その言葉とは裏腹に、千絵の腰がゆるゆると動き始める。
明彦の指と、舌先が与える甘い快楽に身を投じた。
「いっぱい溢れてきてるよ、濃くって甘い匂いがここからしてる」
「嘘、甘い匂いなんてしないもん」
「するよ、千絵の匂い。甘くてやらしい匂い」
ピチャピチャと湿った音が響きだした。
明彦の指先が千絵の中を掻き混ぜる音と、
舌先が千絵の敏感な部分を舐める音とが交互に響く。
「明彦っ、ダメ。ねえ、お願い、して」
「もう?まだ千絵を感じさせたいのに」
「意地悪しないで、もう我慢出来ないよ。一緒に感じたいの」
千絵の言葉を聞いて、明彦はスカートの中から顔を出した。
カチャカチャとベルトを外すと、デニムとパンツを一緒に脱ぎ捨てる。
着ていたYシャツのボタンを乱暴に千絵が脱がす。
明彦は千絵をベッドに横たわらせると、その上に覆いかぶさるようにして抱き締める。
硬くなった熱い塊を千絵の潤んだ場所へと滑り込ませる。
同時に漏れる、2人の甘い溜息。
最初はゆるやかに、徐々に激しさを増して、リズミカルに腰を動かす。
それに合わせるように、千絵もまた腰をくねらせながら明彦の身体に必死に抱きつく。
高まっていく2人の身体の熱と、淫らに響く千絵の声。
時折、呻くように漏れる明彦の息遣いの間隔が狭まっていく。
「ダメ、もうイキそう」
額にうっすらと汗を光らせ明彦が呟く。
同じように汗を光らせた千絵が、
「いいよ、来て」
その言葉を聞いて、明彦が千絵の唇に吸い付いた。
更に激しさを増していく、重なり合った唇から千絵の喘ぐ声がくぐもって聞こえる。
千絵の小さな体を抱き締める腕に力が入った。
千絵もまた明彦の大きな身体を強く抱き締め返す。
絶頂の波が去っても尚、2人の体は重なり合い強く抱き締めあったままでいる。
荒くなった息を整えるように、鼻から深く息を吸い込み呼吸を整える明彦。
千絵はぐったりとした明彦の頭を、愛しそうにゆっくりと撫でながら、
明彦と同じようにゆっくりと深呼吸する。
「ねえ、明彦」
「ん?」
「今私達きっと、同じ匂いがしてるね」
明彦は大きく息を吸い込み、目を閉じ確かめるように匂いを味わう。
「うん、同じ匂いしてる」
「私の匂いと、明彦の匂い。私の汗と、明彦の汗が混ざって同じ匂い、私達だけの香水だね」
「うん、俺達だけの香水だな」
「いい匂い」
「うん、いい匂いだ」
2人は見詰め合って、小鳥のように小さく口付けを交わす。
「千絵」
「ん?」
「忘れてるぞ」
「何を?」
不思議そうな顔で千絵がじっと明彦をみつめる。
明彦はニヤリと笑うと、
「お互いの匂いと、汗と・・・」
「うん」
「2人のエッチな体液で出来てる香水だ」
千絵はプッと吹き出す。
「・・・馬鹿」
チカチカと暗闇の中大きなTVが光っている。
映画丁度終わったところらしく、「Fin」と画面に洒落た書体で描かれている。
流れ出すエンドロール。
大切な人と混ざり合ってできる2人だけの秘密の匂い。
2人だけの香水。
それは世界中でただ一つの香水。
愛しいあなたと、私とでできる、
甘く淫らでセクシーな香り。
第二回 「 Envy 」
有紀菜はフローリングの床にぺたりと座り込んでいる。
頬を赤らめながら、あまり得意ではないアルコールをゴクゴクと煽るように飲み込む。
胸元が大きく開いたニットから覗く首筋も、うっすらとピンク色に紅潮しているのが見て取れる。
隆一はそんな有紀菜の様子を心配そうな顔で伺いながら、ベッドの端っこに座ったまま
自分もまたアルコールとチビリと口にする。
「はぁー、酔っ払ってきたかも」
ろれつが回っていない口調で有紀菜がアルコール混じりの溜息をこぼす。
視線は宙を定まらない様子で漂っている。
「あんま飲みすぎるなよー、楽しみはこれからだって言うのに」
少し拗ねた様な声で隆一が言う。
「うふふふふ。 お楽しみはこれからだって。もうー、隆ちゃんはそういうとこがおっさんクサイのよね」
「どうせ俺はおっさんですよ」
更に拗ねた様子で隆一はまたアルコールを口に運んだ。
有紀菜はそんな隆一の様子を目にすると、彼の足元へと転がるようにして擦り寄った。
「もうっ、拗ねないでよっ。隆ちゃんが私より10も年上でも有紀菜にはたーいせつな彼氏なんだからねっ」
子猫のように隆一の足に頭を擦り付けて甘えてみせる。
隆一は照れくさそうに小さく微笑むと、ゴツゴツした男らしい手のひらで
有紀菜のサラサラと真っ直ぐな髪の毛を優しく撫でた。
「隆ちゃんにこうやって頭ナデナデしてもらうの大好き。すごーく落ち着くの」
有紀菜は頭を撫でてもらいながら、気持ちよさそうに目を閉じて微笑んでいる。
「こらこら、そのまま寝ちゃダメだぞ」
隆一は柔らかく声をかけながら、顔に掛かった有紀菜の長い真っ直ぐな髪を
指に絡ませ、耳へとかき上げた。
ピンク色に染まった首筋が無防備に覗く。
その無防備な首筋に隆一はそっと指を這わせる。
隆一の足に身体を預けていた有紀菜が身体をピクリと震わせる。
「んんっ・・・くすぐったいよう」
アルコールが回っているせいか、いつもより甘えた声の有紀菜。
そんな有紀菜の反応を隆一はしばらく愉しむと、
手にしていたアルコールの缶をサイドテーブルに置き、有紀菜と同じようにフローリングの床へと、
ぺたりと座り込んだ。
「有紀菜・・・」
そう小さく囁きながら、隆一は有紀菜をそっと抱き締める。
力が抜けたように有紀菜は隆一の腕の中に包まれた。
前髪をかきわけ額に小さく口付けをする隆一。
額の次は頬へ小さく口付け、そして唇へ。
ぽってりとした肉厚な有紀菜の唇から、ふわりとアルコールが香った。
隆一の唇は有紀菜の唇から首筋へと向かって行った、その時、
「あっ! ごめん隆ちゃん、それちょっとマズイかも」
つい今しがたまでアルコールに酔って身体の力が抜けていたように思えた有紀菜が、
隆一の腕の中からするりと抜け出した。
「え?マズイって・・・?」
突然の有紀菜の行動についていけない様子で隆一が戸惑った声を出した。
「あ、いや、ちょっとね、あの・・・」
「ん?何?」
有紀菜は困ったなあと言う様子でちょこんと隆一の前で正座する。
ますます「?」が頭に浮かぶ隆一。
「んとね、この前さ私、飲み会に行くって言ったでしょ?」
隆一は黙って頷いた。
「隆ちゃんにも言ったけど、飲み会って言うのはホラ・・・」
「合コンでしょ?」
間髪入れずに隆一が言葉尻をとる。
有紀菜が今度は黙って頷いた。
「それは知ってるよ、あんまり俺、有紀菜と会える時間ないから、
遊びたい時とかは遊んだっていいよって俺が言ったんだからさ、
別にそんなに申し訳なさそうにしなくたっていいんだよ」
そう言って少し隆一は考えると、
「・・・え?もしかしてその合コンで俺より誰か好きな奴が出来ちゃった・・・とか・・・?」
自分で発言しておきながらも、隆一はとても不安な気持ちに包まれた。
「ち、違う!違うよっ!隆ちゃんより好きな人なんて出来てないよっ」
有紀菜は慌てふためいた様子で不安そうな顔の隆一の目をじっと見つめた。
「本当に?」
「うん、本当に」
「だったらどうして?何かあったの?」
有紀菜は「うーん」と言いにくそうに言葉を詰まらせる。
「大丈夫だよ、何でも言って。俺、何聞いても有紀菜の事は好きだから」
有紀菜は不安げに上目遣いで隆一の顔色を伺う。
隆一はそんな有紀菜の不安を取り払うように、ちょっと無理して笑ってみせる。
「・・・んとね、その合コンでゲームやったの、「王様ゲーム」みたいな・・・、
そのゲームでね・・・あーん、いいにくいようっ」
隆一は黙って有紀菜の頭を撫でる。
有紀菜は隆一の暖かい手の感触を感じながらゆっくりと言葉を続けた。
「そのゲームで、有紀菜負けちゃって・・・・・・ちゃったの・・・」
有紀菜はとても小さな声になる。
「え?なにされちゃったって?」
「・・・キスマーク・・・つけられちゃったの」
「どこに?」
少し尖ったような声で隆一が有紀菜に尋ねる。
有紀菜は黙って左側の髪の毛をかき上げ、細い首筋を隆一へと見せた。
丁度首筋の真ん中辺りに小さな赤紫色のキスマークがくっきりと残っている。
「・・・怒った・・・?」
髪の毛をかき上げたままのポーズで有紀菜が心配そうな声を出した。
「・・・ううん、怒ってないよ」
少し無理したような声の隆一。
「本当に、本当に怒ってないの・・・??」
「うん」
隆一の返事を聞くと今度は有紀菜が尖ったような声で、
「なんか、隆ちゃんって私の事好きじゃないみたいに感じる」
そう言うとプイっと横を向く。
「え、なんでそう思うんだよ」
「だって有紀菜、隆ちゃんじゃない人にこんな風にキスマーク付けられたんだよ、
なのに怒ってもくれないんだもん」
「怒られたかったの?怒られたいからそういうことしたの?」
ムッとしたような声で隆一は有紀菜の顔を覗き込むが、
有紀菜は目を合わせないまま、
「わざとじゃないもん。でも、もし有紀菜と隆ちゃんの立場が逆だったら、有紀菜はすごく嫌だと思う。
隆ちゃんが他の女の人にこんな風にキスマークとか、例えゲームでも付けられたら嫌。
っていうか、そもそも合コンとか行かないでって言うと思う」
有紀菜の顔は真っ赤になっていた。
アルコールのせいで赤く火照っているのではなく、怒りで赤く火照っているようだ。
大きな目にはうっすらと涙すら浮かべて。
そんな有紀菜の様子を隆一は黙ってじっと見詰めて考え込んでいる。
「確かに隆ちゃんとこうやって遊ぶ時間少ないけど、
隆ちゃんが有紀菜の事好きだって思ってくれてるなら、有紀菜は隆ちゃんの有紀菜でいたいの・・・」
そういい終わると同時に、大きな目に溜まりかねた涙が一滴零れ、
正座した太ももに置かれた有紀菜の手のひらにぽたりと落ちた。
今まで有紀菜の言葉を考えながら黙って聞いていた隆一が口を開く、
「・・・ごめんな、有紀菜。そういう気持ち分かってあげれてなかったね俺」
隆一の指先が、また零れ落ちそうな有紀菜の涙をすくい取った。
「有紀菜はまだ若いし、今あんまり時間作ってあげられないし、
寂しい思いさせたりしたら可哀想だって思ってた、って言うか可哀想だって思う。
だからせめて、自由に有紀菜を遊ばせてあげた方がいいのかなって勝手にそう思ってたんだ」
柔らかいトーンの隆一の声が、有紀菜の耳に優しく染み入る。
「でも今、有紀菜の気持ち聞いて間違ってたのかなって思う。
本当は、さっきそのキスマーク見て嫉妬したし、有紀菜は俺の大切な彼女なのにってむかついたよ」
その言葉を聞いて、有紀菜は俯いていた顔を上げ微笑んだ。
「ホントッ? 嫉妬したの??」
隆一は黙って頷いた。
「隆ちゃんいつも有紀菜が遊びに出かけても何も言わないし、
いつもへっちゃらな顔してるから、嫉妬とかそういうの全然しないんだって思ってた」
「なんだか俺が嫉妬すると嬉しそうだな」
隆一はなんだか複雑な顔をしたまま苦笑いを浮かべた。
「うん、嬉しい。隆ちゃんも嫉妬してくれるんだね」
「するよ、本当は俺すっごくヤキモチ妬きだし、嫉妬ガンガンするんだ。
でもそういうのウザイだろ?だから我慢してた、有紀菜に嫌われたくないから」
今度は隆一が俯いてしまった。
どうやら恥ずかしい気持ちでいっぱいになってしまったようだ。
「ウザクないよ、隆ちゃん。て言うか、有紀菜もうあんな風に遊びに行ったりしない。
隆ちゃんが嫉妬するのとか我慢するなら行かないよ。
有紀菜、隆ちゃんが大好きだもん」
さっきまで泣いていたのが嘘のように無邪気に笑うと、有紀菜は隆一に抱き付いて口付けをする。
「隆ちゃんだけの有紀菜にして」
その言葉を聞いて隆一は有紀菜をフローリングへと押し倒した。
胸元が大きく開いたニットから覗く首筋に小さくクッキリと残る赤紫色のキスマークの上へと、
唇を押し当て、力強く吸い付いた。
時折舌先で首筋を舐めまわしながら、同じ場所に何度も吸い付く。
有紀菜の長い髪の毛が、隆一の指の間に絡みつくほど強く抱き締めながら。
隆一の力強い抱擁と、首筋への愛撫に有紀菜は息を荒げ、時折隆一の名前を繰り返し呼んだ。
やっと隆一が有紀菜の首筋から唇を離すと、
小さな赤紫のキスマークを覆い隠すようにして、
赤くくっきりとした大きなキスマークが一つ有紀菜の首筋を彩った。
「これで前の男のキスマークは帳消し。 有紀菜は俺のだぞってマーキングしたから」
「うふふ、隆ちゃんが嫉妬してくれるなら有紀菜また遊びに行こうかな」
悪戯に有紀菜が言う。
「えいっ!」
隆一はニカッと笑うと、有紀菜の額を軽く指で弾いた。
小さく「いたっ」っと、有紀菜が呟く。
「ねえねえ隆ちゃん、本当はねこのキスマーク、合コンでゲームに負けて付けられたんだけど、
つけた相手って、男じゃなくって女の子につけられたんだよっ」
そういうと、有紀菜は隆一の頬に「ちゅっ」と音を立てて口付けした。
「もう~、有紀菜・・・お前は~」
隆一は嬉しそうに笑いながら有紀菜に再び抱き付いた。
2人の夜はこれから、ゆっくりしっとりと更けて行く。
嫉妬する女、嫉妬しない男。
嫉妬しない女、嫉妬する男。
嫉妬も行き過ぎたらそれは相手を苦しめるばかりになるけれど、
少々の嫉妬は、お互いの愛を改めて感じる行為。
愚かだけど、愛しい、その行為が嫉妬。
第一回 「 Skin 」
「やっぱりさやかの肌が一番気持ちいいなあ」
健はさやかの露になっている胸元に顔を摺り寄せ、身体を預けながら安堵の笑みを浮かべ唐突に呟いた。
それまで茶色がかった少し癖のある健の髪を、細い指先で撫でていたさやかはその指止める。
「・・・ちょっと、「一番」って何よ?誰と比べて言ってるの~?」
穏やかだった空気は、健の迂闊な一言で不穏な空気に一瞬にして変わった。
健はさやかの胸元に顔を埋めたままの姿勢で、「しまった!」と気まずい表情を一瞬浮かべる。
一瞬見せた表情をさやかは見逃さなかった。
身体を預けていた健をさやかはぐいっと押しのけ、
2人は生まれたままの姿でベッドの上向かい合わせに座る。
「あ、いや、別に「一番」ってのは深い意味はなくって、えっと・・・なっ!」
「「なっ!」って言われても、なんか意味わかんないんですけど」
さやかは完全に「お怒りモード」へと突入したようだ。
いつもは少し垂れ目がちのクリクリとした大きな目が、今は釣りあがっているように見える。
さやかのいつもと違う目を恐る恐る覗き込みながら、
「や、本当に深い意味はないんだってば。信じて、お願い!さやかちゃーん」
精一杯おどけた様子で健は甘えた声を出してご機嫌を取ろうと、
柔らかなさやかな肩をぎゅっと抱き寄せる。
「もー!そういうので誤魔化されないんだからね!」
さやかは再び健の身体を押しのけようとしたが、力強い男の腕の中へすっぽりと収まってしまう。
健はさやかの首筋、鎖骨の辺りに頬を摺り寄せる。
両腕はさやかの背中を撫で回した。
「ほら、この感じだよ」
さやかは小さく「え?」と呟く。
「この感じ、さやかの肌の感触たまんなく好きなんだ」
さやかはぷくっと頬を膨らませながら、
「それって、私が太ってるから触り心地がいいとか、そういう意味ー?」
「違うよ、そうじゃないって」
健はさやかを抱き締めたままクスクスと笑う。
「女の肌ってさ、すげー気持ちいいじゃん」
さやかの耳元で言いながら、健は背中に回した手のひらで肌をじっくりと味わうように、
確かめるように、
ゆっくりと撫で回す。
さっきまで固くこわばらせていたさやかの身体の力が少し緩む。
「柔らかくって、すべすべっとしててさ、それでしっとりとして、
手に吸いついてくるみたいでさ、たまんないんだ。さやかの肌」
さやかはゆっくりと健の首筋へと腕を絡ませ、ゆっくりと目を閉じる。
「だったら、男の肌の方がもっとずっと気持ちいいのに」
今度は健が小さく「え?」と呟いた。
さやかは手のひらを健の首筋、肩筋、腕へと滑らせその肌の感触を楽しみながら、
「男の肌って、すごく熱を持ってるの、汗をかいてもなんでかサラサラしてて、
皮膚の下の筋肉の弾力が固くて柔らかくって丁度いい弾力、健の肌大好きだよ」
「さやかって・・・、筋肉フェチ?」
健はからかうような口調で無邪気に笑った。
「もうっ!」さやかは手のひらを上げてパチンと健の肩を軽くはたいた。
さっきまで釣りあがったように見えた目は、今はもう笑って垂れている。
「冗談だってば」
健は悪戯に微笑んで、さやかの柔らかな頬に軽く口付けをする。
「おいでよ」
そう言うと、健はさやかの身体を軽々と持ち上げ自分の膝へと乗せる。
2人の肌と肌が密着しあう、さやかの丸い乳房が健のスレンダーな胸元に押し付けられる。
「柔らかい・・・シアワセ」
健はまるで子供のようにまたさやかの胸元へ顔を埋める。
「健の身体、すごく熱いよ。 熱があるみたいに」
さやかは健の身体の熱が、自分の肌へとゆっくり移ってくる感覚を味わう。
健は顔を上げて、さやかの形のいい唇に口付けをする。
うっすらと開いた口の中で、2人の舌先が絡み合う。
舌が激しく絡み合うたび、健はより一層強くさやかを抱き寄せる。
健の腕の力の強さと、絡み合う舌先でさやかは吐息と甘い声を漏らす。
「苦しい?」
束の間、重なり合った唇を離し健がさやかに尋ねた。
「苦しいけど、でも、もっとぎゅってして」
健は何も言わずに、再びさやかを力の限り強く抱き締め口付けを交わす。
2人の身体の熱は高まり、隙間なく密着した肌と肌の間はしっとりと汗ばみ始めた。
ねっとりと絡み合う2人の舌と舌、互いに漏らす甘い吐息交じりの声、
肌の感触を確かめ合うように、2人の両腕は互いの背中を上下している。
「さやかの身体もすごく熱くなってきてる。 汗ばんだ肌が俺に吸いついてくるよ」
健はそう言いながら、さやかの首筋にうっすら浮かび上がった汗をペロリと舌で舐め取った。
「すごく、熱いの。 健・・・」
トロンとした目で、甘えた声を出す。
健はにっこりと優しく笑うと、
「俺も、すっごく熱くなってる。 さやかの一番熱いとこに入りたいよ」
「やだっ、なんかエッチ」
さやかは健の言葉を聞いて恥ずかしそうに微笑み、身体をよじらせた。
身体をよじらせた時、さやかの太ももの辺りに硬く、一段と熱くなっているモノが当たった。
「ホントに熱くなってる」
「でしょ?」
健もまた恥ずかしそうに笑う。
「さやかと肌が触れ合ってるだけで、俺すぐにこんなになっちゃうんだ」
「私も、健と肌が重なるとすぐに・・・」
健は指をさやかの股間へとゆっくりと潜らせる。
ふんわりと茂ったヘアーの奥から、ヌルリとした感触が指の先にまとわりつく。
更に奥へ指を潜らせると、熱く火照った場所へ辿り着く。
入り口へ辿り着いてもいないのに、健の指はさやかの身体から溢れるヌルリとした液体で包まれた。
そっと健の指が、さやかの敏感な突起へ触れた。
さやかははっと息を飲み、身体を弾ませる。
「さやかもすごく熱い、嬉しい」
健は更に、さやかを愛撫しようとしたが、
「健、もう私欲しいの。 このまますぐに・・・頂戴」
そう言って、健の身体に強く抱き付いた。
健は、さやかの中へと自分の熱いモノをゆっくりと滑り込ませた。
2人の深い吐息。
同時に、
「すごく熱い」
2人は、同じ言葉を口にした。
2人の肌と肌が重なり合い、2人の粘膜が絡み合う。
淫靡な声と、音を立てながら、抱き締めあう。
互いの汗が、互いの肌で混じりあい、互いの粘膜がこすれあって熱が高まっていく。
そのまま2人は、肌と肌を密着させ溶け合うようにして絶頂を迎えた。
ひんやりとしたシーツに横たわる。
火照った身体には心地よくも感じる、が、それでも健とさやかは互いの肌を寄せ合い見つめあっている。
「ねえ、なんかさこれが男と女って感じだよね」
さやかが唐突に口を開いた。
「え?どれが?」
「んーとさ、さっき言ってたでしょ? 健が女の肌の好きなところ、私が男の肌の好きなところ」
健は黙って頷いた。
「男も女も肌の質が違ってて、それをお互いに「キモチイイ」って思ってて、
違うからこそ、なんていうか・・・」
「惹かれあってしまうし、求めてしまう」
健がさやかの言葉を続けた。
さやかは嬉しそうに微笑んだ。
「あ! でもね健。 いくら求めてしまうって言っても、私以外の女の肌は求めちゃダメなんだからねー!」
さやかは健の頬を軽く指で抓って意地悪く笑った。
男の肌と、女の肌。
それぞれに違う感触、違う感覚。
違うからこそ愛しく感じる、心地よく感じる、気持ちいいと思える。
違うからこそ惹かれあい、求め合う。
男と女。
すごく似ていて、それでいて違う、未知数の生物。
