私が訪問すると彼女は驚いた顔で出迎えてくれた。
「ばれちゃったか」
彼女は母親の虐待によって心身ともに壊れていた。
普通に話すと普通に話してくれるが、ポジティブな言葉が苦手だ。
褒めると戸惑う。美しいというと「よく分からない」という。
ボロボロの衣類を片付けながら、たわいのない話をした。片付けが苦手で、乱雑な中にいるのが良いというが、綺麗に片付けて、置く場所を決めて、片方しかない靴下4足を綺麗に並べて、床に散らかったかばん類をしまって、部屋が綺麗になると「お母さんにもこんなに世話してもらったことないのに」といって戸惑った。ちょっとずつ、ちょっとずつ。
「アルコール中毒のおじさんと仲良くなった。みんな、死んじゃいけないって言うんだ」と彼女は話した。
2時間ほど夢中で話した。
「久しぶりに頭を使った〜。毎日だったら大変〜」
と笑顔になる彼女。
次の約束をした。
欲しいものは何もないと言う。
「化粧水や乳液は?」
「今まで使ったことない」
私は彼女に肌のケアを教えて、次回は化粧水と乳液を持っていくことを約束した。
肌を触られるのが苦手な彼女だけど、今日は素直に触らせてくれた。
乾燥した肌と唇。買い物リストにリップクリームが加わった。
こうやってちょっとずつ、ちょっとずつ。