前回の話
戸田港から内浦方面に抜ける為には、海岸沿いのアップダウンをひたすら走り続けるしかない。
そしてその道は消耗しきった我々にかなりのダメージを与えてくる。
さとるくんが先行、続いてりっけいさん、最後に私。
刻一刻と日没が迫る中、内浦に向けて県道17号を走り始めた。
登り始めて少ししたところに、出逢い岬という場所があり、ちょうど奇麗な夕暮れを眺める事ができた。
りっけいさんと自転車を止めて、沈みゆく夕陽を写真に撮る。
さとるくんは居ない。どうやら先に行ってしまったようだ。
(この絶景・・・・)
と、そこへ車で乗り付けた地元の若い男女が、騒ぎながらやってきた。
めっちゃ綺麗と叫んでいる。
一気に騒がしくなったので、とっとと退散して先へ進む。
りっけいさん先行、後ろから私。で走行再開。
少し走って・・・・・ん、目の前に何か落ちている。これは輪行袋だ!!
即時回収!そしてりっけいさんを呼び止めて渡す。
直ぐに気が付いてよかった。
いつぞやのサドルバッグの中身全部落下事件の話をして、和む。
暫く進むと車道の幅が広くなった場所でさとるくんが待っていた。
そのまま先へ、と合図されたので首を縦に振って通り過ぎる。
一旦下り道に入ったが、降り切った所でまた次の登りが見えた。
辺りが暗くなってきた。もうすぐ日没だ。
ペースが落ちる。そしてさとるくんとりっけいさんが先行。
もはや追いかける気力は無いが引き離される訳にもいかない。
ただ無心に一定のペースで登る事を心がける。
遂に真っ暗になった。顔に水滴が落ちてきた気がする。どうやら小雨が降っているようだ。
暗闇、雨、ヒルクライム。もう状況が悪過ぎて笑うしかない。兎に角前方の視界を確保しなければ。
装備はフロントにVOLTの800が1本。400ルーメン設定にするが、山道の真っ暗な中では若干心許ない。
この後の夜間走行を考えると最大光で使うのは危険過ぎる。
最小限の走行ラインは見えるので速度が出ないヒルクライムならこれでも大丈夫。
後はフラッシュにして、対向車が来たら分かるように。
再び黙々と走り始める。あとどれくらい続くのだろうかと思う山道を進む。
暫く進むと井田トンネルが見えた。入り口で先行していたさとるくんが待っていてくれた。
ここから先は下りだ。今度は自分が先行して走り始める。
真っ暗な山道をダウンヒル。かなり怖い。見える範囲が極端に狭い。
後ろからさとるくんとりっけいさんが着いてきているので、危険と判断したら早めに知らせなければと
意識を集中して道を降る。
少し段差に乗り上げた。その後、リアタイヤから擦る音が聞こえるようになった。
(それがリムへのブレーキシュー当りと気づいたのは翌日の話。)
何か葉っぱでも挟まったのかと思ったが、ダウンヒルで速度がそこまで変わらなかった事と、
一刻も早くこの暗闇から抜け出したい気持ちで止まる事無く走り続けた。
平坦路まで戻ってきた。先頭をさとるくんが引き始める。私は一番後ろでツキイチさせてもらう。
時速は35キロぐらいだろうか。が、何故か速度を維持するのがしんどい。
(シューが当たっているのだから当然。)
ずるずると遅れ始めるが、流石に申し訳ないので必死にリカバリーをしようと一人インターバル地獄に陥る。
どれくらい漕いだのかすら考えられなくなってきた。晩飯にありつきたい。休みたい。マジでしんどい。
と、目の前に三の浦総合案内所が見えた。内浦まで戻ってきた。
三津シー近くのセブンイレブンへ補給と小休憩に入る。
さとるくんに頼んで水を買ってきてもらう・・・とアクエリの2Lしか無かったらしい。
どうやら、この日の伊豆半島一周ブルべの影響らしい。もうこの際、水でもアクエリでも構わない。
3人でシェアする。ボトルに補給して即半分程飲み干した。ハンガーノックギリギリだ。
時刻は6時半になろうかと言うところ。
この後は静浦にある今日の宿のチェックインを先に済まして、晩飯。
余力があればびゅうおの夜間ライトアップが見られるかどうか。
宿のチェックインをしている店を知っているのは私だけ。と言う事で、先行して走り始める。
内浦湾を左手に、日の落ちた県道17号を静浦に向けて走る。
やはり速度維持がしんどい。疲労のせいか。(シューが当たっているせい。)
しかしここは頑張る。なんとか30km/hは維持。
チェックインの受付である釣具屋に到着。
店舗に入って、手続きと宿の利用についての説明、宿の地図を受け取る。
チェックイン終了。
外で待っていたりっけいさんとさとるくんに宿の説明をそのまま伝える。
この後は晩飯。行先は、阿蘭陀館!
そう、曜ちゃんの家モデルになったお店だ。
我々は阿蘭陀館へ向けて全速前進ヨーソロー!!!
しかし、この時は、後に待ち受ける悲劇を知る由もなかった。
~続く~