あの日、
大地が大きく揺れて、
津波の脅威に驚愕して、
平穏だった毎日が、
一瞬で壊され、
非日常の生活が始まった。
まわりには、
無数の遺体が転がり、
建物はめちゃくちゃに破壊され、
現実とは思えない光景を、
何度も何度も、
目の当たりにして、
頭が、
今にも破裂しそうな精神状態だったのに、
本当は、
怖くて怖くて、
気が狂いそうだったのに、
私は、
自分の精神状態に蓋をした。
私たちよりも、
もっともっと苦しい思いをしている人は
たくさん居たから………
「私たちは大したことなかったから。」
「命あっただけでいいよね！」
「私たちは大丈夫だよ！」
呪文のように、
笑顔で答え続けた。
いつでも、
「私は大丈夫だよ。」
そう繰り返した。
そのたびに、
気づかされた、
自分の弱さ。
目の前の現実、先の見えない現実が、
私を恐怖で包んだ。
蓋をしたはずの、
私の精神は、
もう極限状態で、
今にも開いてしまいそうだった。
自分の感情を、
必死に圧し殺して、
何度も何度も蓋に鍵をかけた。
今の今まで。
あれから３ヶ月過ぎて、
生活も普通にできるようになったから、
もう、
あの蓋、
開けちゃってもいいかなぁ？
私さ、
本当は、
苦しかったよ。
「私は大丈夫」って、
いうたびに、
心の中では、
「助けて！」って、
叫んでた。
今にも倒れそうな、夫を助けて！
大切な、かけがえのない子供たちを助けて！
不安だらけの私を助けて！
助けて！助けて！助けて！助けて！助けて！！…………………………………
お願い、ダレか……………
誰かって………？
私がそんなことを言ったら、
大切な人を失った人たちは、
どうしたらいいの……？
だから、
そんなこと言っちゃダメだよって、
思ってた。
でも、
辛かったよ。
自分の感情から、
目をそらして、
生きること。
それでも。
そうでもしないと、
子供たちを守れなかったから。
私は笑ってなくちゃ。
子供たちが怖がらないように、
夫が安心するように、
私は明るく強く、振る舞ってなくちゃって。
でもさ、
自分をいたわることも、
しなきゃいけなかったんだね。
あの時は、
吐き出せなくて辛かったけど、
今は幸せだよ。
あの時体験したことは、
全部私の財産。
これからの私の夢に、
きっと、
必要なことだったから。
私にとって、
大切なこと、
無くしてはいけないもの、
忘れていたことを、
思い出したよ。
これからはきっと、
自分ともっと、
仲良くつきあっていける。