どーもーCurryでふニヤニヤ
 
年単位でのお久しブリーフ滝汗
いやはやもはやお前誰?状態ですが
ひっそりしょんぼり生きてましたぁんキラキラ
そしてベク様おかえりんこビーグル犬しっぽビーグル犬あたまラブラブ(激遅)
 
では⑱いきまふデレデレ
 
お時間ある方、妄想苦手じゃない方
おいでやすちゅーちゅーちゅー
 
 
 
 
 
 
 
 
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『ここを出るって…』

 

『…………』
 
 
 
 
 
『…あ、泊まりがけのバイトとかで?』




『違います…』
 
 
 
 
 
『…………』
 
『…………』
 
 
 
 
 
『じゃあなに…
 …この家から出て行くってこと…?』
言いたくもない言葉を向けると
 
『…………』
彼は黙って頷く
 
 
 
 
 
『…そっか…わかった…』
 

 

苦しい笑顔を作りながら

黙ったままの彼を足早に追い越し
私は自分の部屋へと戻った
ドアに背を預けて俯いていると
静かな足音が部屋の前を通り過ぎていく
どうしてここを出ていくのか
私がなにかしてしまったのか
聞きたいことは山ほどあるのに
すがりついて引き止めるような
そんなみっともないことなんて
できるわけもなく
物分りのいいフリをして
わかったなんて言ってしまった私
あの夜のことはもう忘れる
そう心に決めたはずなのに
色褪せるどころか頭の奥に色濃く残り
締め付けられたままの心は行き場を失った
ずっと彼と一緒にいられるなんて
そんな夢みたいなこと
どうして願ったりしたのだろう
パタンと閉まった彼のドアの冷たい音が
耳から離れないまま
力なく泣き崩れるしかなかった
 
 
 
 
 





眠ろうと思って目を閉じても
無意識に色んなことが浮かんできては
自己嫌悪とため息を繰り返す
彼が出ていくということは
ただ元の生活に戻るだけだと
自分に言い聞かせてみても
その存在が大きくなりすぎて
彼がいなくなった後のことを
考えもしなかった自分が情けない
いや
考えていたはずなのに
想像していたはずなのに
現実になると思いたくなかっただけで
覚悟まではできていなかった
後悔と落胆の暗闇に襲われ
もう泣きたくないのに涙が止まらない
遅かれ早かれ
いつかは離れてしまうはずだった私たち
その時期が今やってきただけなのに
彼にもう会えなくなるということが
怖くて怖くてとても怖い
私はいつまでも
子供のように泣きじゃくりながら
眠れない夜を長く過ごした
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 















今日は直のプレゼンの日
私にも出席してほしいと言われたのに
ひどい頭痛と胸の苦しさで起き上がれない
申し訳ないと思いつつも
直にはメッセージを送り
会社へは電話で休むことを伝えた
 
ベッドに横たわって
無理矢理に目を閉じたまま
ゆっくり深呼吸をすると
頭に浮かぶのはやっぱり彼のことで
まだ部屋で寝ているのだろうか
今日はバイトに行くのだろうか
もう荷物をまとめたりしながら
引っ越しの準備を進めているのだろうか
そして私は
このままどうすることもできずに
その日を迎えてしまうのだろうか…

込み上げてきた涙が
また溢れ落ちそうになった時
ふと
初めて会った日の彼の姿が浮かんできた
…彼の笑顔…  低く優しい声…

私の記憶の中では笑顔の彼が微笑むように

彼の記憶の中でも笑顔の私であってほしい
そして
私と過ごした時間が存在したことを
できるだけ長く覚えていてほしい
それを叶える為には
彼がここを出て行くまでの残りの時間を
普段通り明るく振る舞うことが
唯一の方法なのかもしれない
白く靄のかかった世界から光を探すように
後ろ向きなことばかり考えるのをやめ
私はキッチンへと向かった
 
 
 
 
 
少しずつ揃え始めたふたりの食器を手に取り
彼の分を新聞紙に包むと
ダンボールの中へそっと並べていく
リビングに置いてあるスケッチブックや
濃さの違う数本の鉛筆
小さく丸まった消しゴムたちを
じっと見つめていると
彼がこの家からいなくなることを実感し
とても苦しくて寂しくなった
ダンボールを抱えて立ち上がり
また零れそうになる涙を堪えながら
彼の部屋の前まで運ぶと

小さく息をついてからドアをノックする

 
『…ねぇ…起きてる?』
いつもなら起きているはずの時間だけど
あえてそう呼び掛けると
 
『ヌナ?仕事は?』
驚いた様子で彼が顔を覗かせた
 
 
 
 
 
『あ、…頭痛くて休んじゃった 笑』
その瞬間
笑って答えられた自分に安堵する
 
 『熱は?』
 
 
 
 
 
『熱はないと思う』
 
 『…………』



彼は真っ直ぐな瞳で黙ったまま
手のひらをおでこに当てようとしてきて
思わずそれを避けてしまった私
 
 
 
 
 
『…………』
 
『… こ、子供じゃないしね』
 
 
 
 
 
『…………』
 
『…………』
 
 
 
 
 
『…………』
 
『…でもありがと 大丈夫だから』
 
 
 
 
 
『…………』
 
『…………』
 
 
 
 
 
『…えっと…
 君の食器とか持ってきたの
 引越し先でも使うかなと思って
 荷造り手伝うよ』
そう言ってダンボールを差し出すと
 
『…ありがとうございます』
会釈とともに受け取る彼
 
 
 
 
 
『もう引越し先決まった?
 不動産屋に紹介してもらったら… 
 あー別のとこに頼んだほうがいいかもね』
なるべく平静を装って
言葉を並べる私の空気と
 
『しばらくは友達のところに
 住まわせてもらおうかと思ってます』
静かな口調で返す彼の空気
同じようで同じじゃないことが

次に住む部屋も決まっていないのに

早くここを出たがっているという事実が
一層ズキリと胸を痛める
 
 
 
 
 
『荷物少ないから
 手伝ってもらうほどでもないです』
 
『…でも絵を描く道具とか…』
 
 
 
 
 
『それは僕が片付けなきゃいけないから』
 
『じゃあ部屋の掃除とか…』
 
 
 
 
 
『それも僕がします』
 
『そっか…… でもさ…
 少しは頼ってくれてもよくない?』

 

 
 
 
  
『これ以上甘える訳にはいかないから』

『…君の為にできることなんて
 私にはもうなにもないの?』
強がる自分が中途半端に顔を出し
彼が答えられないようなことを
つい問いかけてしまう
 
 
 
 
 
『…………』
 
『…………』
 
 
 
 
 
『…なんてね
 私みたいな大雑把な人間が手伝うと
 余計散らかっちゃうか 笑』
 
『…………』
 
 
 
 
 
『…………』
 
『…………』
 
 
 
 
 
『…ヌナ どうして泣いてるんですか…』
 
『泣いてなんか…』


泣いている自覚なんて全然なくて

精一杯平気な顔で笑おうとしているけど

でもきっと今の私は

苦しくて哀しい顔をしているに違いない
 
 
 
 
 
『あれ…おかしいなぁ
 あーきっとあれね
 1人になったらちゃんと自炊できるかなとか
 そういうの考えると色々面倒で…』
 
『…………』
 
 
 
 
 
『…………』
 
『…………』
 
 
 
 
 
『…ううん…違う…
 全然平気だと思ってたのに
 君がいなくなるってことが
 相当寂しいみたい 笑』
涙と一緒に強がりの鎧が剥がれ落ち
本音がその唇から自然と零れた
 
『…………』
 
 
 
 
 
『もう…こんなはずじゃなかったのに
 泣いて駄々こねるなんて子供だなー
 …じゃあなにか用があったら言ってね』
そう言って立ち去ろうとする私の腕を
 
『…………』
黙ったまま少し強い力で引き止める
 
 
 
 
 
『ヌナの好意で住まわせてもらったのに
 今度は出ていきたいとか
 勝手なこと言ってすみません』
 
『…いいってそんなの
 美味しいご飯作ってもらったりして
 私の方が随分得したし
 それにこんな生活長くは続かないって
 最初からちゃんとわかってたから』
ホントはわかってなんかいないくせに
彼とずっと一緒にいられるかもという夢を
いつからか
情けないほど願ってしまっていた私は
この先のことを考えると怖くて不安で
また泣き出してしまいそうになる
そんな気持ちを悟られないよう
引き止められた腕を自然に解く
 
 
 
 
 
『私がいたら邪魔になるだけだし
 手伝うことあったら
 部屋にいるから遠慮なく言って』
 
『ヌナ…聞いてもいいですか』
 
 
 
 
 
『…なに?』
 
『ヌナは…あの人と…』
 
 
 
 
 
『…あの人って?』
 
『…………』
 
 
 
 
 
『なに?誰のこと…』
 
『ヌナには幸せになって欲しい
 僕はただそれだけです』
 
 
 
 
 
『え、それどういう…』
 
『…………』
どんなつもりで
彼がそんなことを言い出したのか
その時の私は知る由もなく
静かに閉まっていくドアを
ただ見つめることしかできなかった
彼の言葉がなにを意味するのか
ホントはなにを伝えたかったのか

混乱する頭で考えたところで

答えなんか出るわけもなく

再び静かになった家中の音を感じながら
無意識にキッチンへと向かうと
冷蔵庫から赤ワインを取り出す
 
 
 
 
 
『意味わかんない…』
ワイングラスへ多めに注ぐと
絡まった思考をリセットさせるように
頭痛薬と一緒にゴクリと飲み込み
二杯、三杯と続けて喉へ流し込んだ

自分の部屋へ戻って携帯を見ると
直からたくさんのメッセージが入っていた

私を心配する内容と

プレゼンがうまくいったという報告と

最後に今日うちに来るという連絡

それに返信する元気もなくて
読み終えるとそっと携帯を置いた
倒れ込むようにベッドへ寝転ぶと
薄暗い天井がゆっくりと回って見え
なにもできない自分が小さく感じた
年齢を重ねただけで
なにひとつ大人になりきれない自分と
やりたいことへブレずに向かっている彼
そんな私が
そんな彼に
身勝手な感情ばかり押し付けている
自己嫌悪の渦の中
小さく携帯が鳴り反射的に電話に出た私
誰かの話声は聞こえてくるけど
誰の声かはわからなくて
アルコールのせいで意識が薄れる中
電話の声が彼の名前を呼んだ気がして
 
『…出て行かないでよ… ギョンス…』
それだけを口にすると
重く暗い視界へ呑まれていった












続く……

 

 

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画像お借りしました♡