すけべ心丸出しな犬はみっともないと思う。
うちの実家のラブラドールレトリバー。
そいつがまだ若いころはそれはもうみっともなかった。
目が合えば最後、一目散に駆け寄ってきて、
その身をこれでとばかりにこすり付けてくる。
まあ、それはそれでやっぱりかわいいもんで、
なでたりキスをしたりほうり投げたりするんだけども、
だんだん犬のほうの感情の高ぶりがエスカレートしてきて、
部屋中を全力で駆け回るようになる。
そして、いままであそんでやってた俺を無視して、
あろうことか、毛布(犬用の)にむかって腰を振り出すのであった。
とりあえず、こうなってしまうと家族の雰囲気は最悪だ。
父は新聞を手に取り、兄貴は突然ポテチを食べだし、
母にいたってはその雰囲気の中みんなに向かって、
「いやだあサクラちゃんたら!・・・ねえ?」
とか言ってしまう始末である。
いやはや、犬の純真さには苦労させられるばかりですな。
しかし、遊んでいたときの楽しさから、性欲へと。
いったいどういう感情のベクトル転換だ。
はじめっからそういう気持ちで近寄ってきてたのなら話はわかるが、
ボール投げや鬼ごっこもするし、やはり純粋に楽しんでいた感じであった。
そういえば人間も、つり橋の上での恐怖が、異性への恋愛感情に切り替わるとかあったな。
どっちかといえばこっちのほうがぶっとんでるか。
案外、人や動物の抱く感情ってのは、ほかの何かまったく関係のないような出来事によって、
しらずしらずのうちに揺るがされたり、導かれてるのかもしれない。
そしたら、喜怒哀楽なんかで表せるほど単純ではないはずである。
16万色くらいのカラーパレットの上を走りまわっている筆のようだ。
そのとき犬はR210G70B95くらいであった。
恥じらいの色で塗られた。