猫 肥満細胞腫 | にこたま動物病院~症例ブログ~

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【猫 肥満細胞腫】
 

11歳のねこちゃんが1年前から皮膚に多数のしこりがあり、この3ヶ月でしこりから出血が認められるとのことでご来院されました。元気・食欲はあります。

 

 

しこりは直径が2㎜~6㎝まで20個以上に及び、針で細胞を採り、細胞診を院内で行いました。肥満細胞腫と診断しました。

 

 

なお、血液検査・レントゲン検査・超音波検査にて明らかな腹腔内臓器への転移は認められませんでした。

 

 
ステロイド単独での効果は認めず、外科的切除を行いました。
 
 
 
 
術前:右上腕部 多数の腫瘤
 
 
 
術前:左上腕部の腫瘤(6㎝×4㎝×2㎝)
 
 
 
左上腕部 腫瘤摘出
 
 
 
術後3週間:左上腕部の術創
 
 
 
 
病理組織検査では肥満細胞腫と診断され、リンパ管浸潤を認めました。(c-kit遺伝子の変異なし)
 
 
 
 
体の全体に多発しており完全切除が困難であることから化学療法も併用していくことになりました。
 
 
 
分子標的薬や抗がん剤をステロイドと併用しながら使用していくことになります。
 
 
 
肥満細胞腫ではある特定の遺伝子に変異が起こる場合があり、この変異によって正常な機構が抑制されて腫瘍化すると考えられています。(遺伝子の変異がない肥満細胞腫もあります)
 
 
分子標的薬とは遺伝子が変異した部分に直接働きかけるお薬です。
 
 
 
抗がん剤はがん細胞以外の正常細胞に対しても傷害を与える一方、分子標的薬はがんの発生における特定の分子へ直接作用するため副作用が少なく、近年注目されています。
 
 
 
 
また、分子標的薬は遺伝子変異が認められない肥満細胞腫の約30%にも腫瘍の抑制効果が期待されています。