今回は、「特に思い当たる原因がないのに膝が痛い」時に刺絡を用いて効果を出した症例です。施術効果には個人差があります。
【 症例1 女性 42歳 】
■予診票からの患者様の情報
2020年1月下旬頃にせまい通路を通ろうとして物を隅によせた後、数時間経過したら右膝が痛くなった。どんな時に痛むのかという問いには膝の曲げ伸ばしする時に出るとのこと。過去に患った病気は狭心症・高血圧・腱鞘炎・腰痛・子宮筋腫があります。
■東洋医学の観点からみた患者様の状態
食事について。食欲は普通で食べる量も普段と特に変わりなく普通。大便は1日1回あります。小便1日7回程度、夜中トイレに起きることはあまりない。睡眠状況はまずまずとのこと。お腹の状態は下腹部に硬結(肩こりでいうコリがある状態)があり恐らく子宮筋腫の影響で出ているものと推測できます。脈診は全体に滑。右寸口がやや有力な状態です。以上からこの患者様の身体は腎虚と瘀血の2つが身体に悪さをしている状態と判断しました。
■施術方針と施術の経過
施術方針は腎の働きを良くするが1つ目。2つ目にお腹の硬結を取ること。これを施すことで瘀血の治療が可能になります。3つ目に患部または患部周辺の押さえて痛む所を施術し血行を促進すること。以上になります。
施術経過は3回施術を行った所でだいぶ良くなってきたが、4回目の施術時に仕事で無理をしたため悪化したと言われた。そこで本人が痛む部位をよく見てみると少し腫れているのに気づき、触ってみると皮膚の温度に左右差があり、痛みのある部位の方が熱いので、間違いなく痛んでいる部位に炎症があることを判断しました。ではその炎症をどうとるかということが問題になりますが、お灸でも取れないことはありませんが、刺絡をした方がより症状の改善は早いだろうと思い、ランセットによる刺絡をすることにしました。結果は刺絡直後に効果が実感できたのが分かったので、3回ほど刺絡を続けたら痛みはほぼ消失したとのこと。
■考察
刺絡の適応は「外傷による炎症」・「外傷の後遺症により生ずる瘀血」・「実証が原因で起こる発熱」・「実証によるのぼせ」などがあります。
今回は外傷による炎症に当てはまると考え、刺絡を行うことで患部の炎症が落ち着いた症例です。刺絡に加え、全身調整によってより一層の効果が得られたのではないかと推測できます。