今からさかのぼること〇十年前、当時学生だった私は児童文学のゼミに所属していました。
そこへ那須先生が、講演会かなにかのお仕事の合間をぬって寄ってくださることになったのです。
のどかな地方の大学の10人足らずの小さなゼミでした。那須先生は当時すでにズッコケの本で大人気の作家さん。学生からすれば雲の上の存在です。お会いできるだけで夢のよう。
ゼミを担当されていた先生が、児童文学の作家の方だったので、そのつながりで来てくださることになったのです。
私達ゼミ生は嬉しくて、ささやかですがプレゼントを用意してその日を迎えました。
現われた那須先生は、とても気さくで穏やかな方でした。そしてユーモアにも富んでおられて…。せまい研究室で、学生の質問にひとつひとつ丁寧に答えてくださいました。そして屈託なく歓談され、私達はまさに夢のようなひと時を過ごしたのでした。
後日、ゼミの友人が一冊の雑誌を手に、興奮して研究室にやってきました。
そこにはあるインタビューに答える那須先生のお写真が掲載されていたのですが、それをみて皆びっくりして顔を見合わせました。
先生は、ゼミ生がプレゼントしたネクタイを締めて写真に写っておられたのです。
学生が選んだものです。けっして高価なものではありません。むしろ立派な背広には不釣り合いなくらい、かわいらしい派手な柄のネクタイだったと記憶しています。
インタビューですから注目されるシチュエーションですし、写真を撮られれば残ります。そんな日に身につけるなら、他に良いネクタイをたくさんお持ちのはずですのに…。意図的に身につけてくださったのかどうかはわかりませんが、先生の気取りのない優しいお人柄を感じて、私達はますますファンになったのです。
仲間と嬉しい歓声をあげながら、雑誌をのぞきこんだあの瞬間を、今でも鮮明に覚えています。
そして、今回テレビ番組で偶然先生をおみかけし、お変わりない穏やかな印象に嬉しい思いがこみ上げて懐かしく番組に見入ってしまいました。
『ズッコケ三人組』シリーズについて考えることは、子どもの文学や文化の現在を見直し、その未来を考えることにほかなりません。
学生時代に一度だけ先生にお会いしたのち、私は社会に出てしばらく司書として働き始めました。図書館でもその人気ぶりは予約がとぎれることがないほどでした。
ズッコケシリーズはずっと続いて、現在シリーズ40冊刊行(累計2500万部発行)というのですから偉業です
テレビで紹介されたズッコケの本、その魅力をあらためてひしひしと感じました。
以下は、簡単ですがテレビ番組のまとめです。
子どもが本を読むというのは、最初から最後まで夢中で読んでくれれば、それが一番の読書の喜び。だから那須先生は、お話の中にお説教は書きませんでした。
そんな先生が、唯一ためになることを書いたとおっしゃっていたのが、37作目のこちらの本です。
これは、1995年の阪神淡路大震災で被災した神戸の小学生達と文通していた先生が、「ズッコケ三人組に大地震を体験させる」と、子どもたちに約束した、その約束の書です。
ハチベエ達の住む町が被災するお話で、人々が前向きに生きる姿や、避難所で起こり得る問題、助け合うこと、自ら考えて行動する姿を描いた作品です。
その後、東日本大震災が起こった後に、小学校に避難されていた方から、「たまたま図書館にあったこの本を読んで力づけられた」とお手紙が届いたそうです。
実はこの本には続編もあります。
それでは今日もご訪問いただき、最後までお読みくださり、ありがとうございました
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