さよならだけが人生なんて
ほんとのことかな?
それだけかな?
こんにちはだってあるよね
毎日あるよね
だれも気づかない この気持ち
あなたにだけはわかってほしい
(矢野顕子「ひとりぼっちはやめた」アニメ”ホーホケキョとなりの山田くん”より)
コンにちは。
銀狐のブログへようこそ~。
心に残った本をご紹介しています
今回はジブリの偉大な監督、宮崎駿監督と高畑勲監督にスポットをあてて関連本をご紹介します。
といっても膨大な数、様々な本や雑誌で研究、語り尽くされ、インタビューにも応じておられるお二方です。
ちょうど今、ご縁あって私の手元にやってきて、その人となりや作品を深く知るうえでぜひ読んでいただきたいというものを載せていきすね。
まずは宮崎駿監督です。
この本
著者の木原さんは「ラピュタ」「トトロ」「魔女の宅急便」などの制作に関わりました。
設立されたばかりのスタジオジブリに入社、会社の命運をかけた第一作「ラピュタ」の制作進行を担当しました。
アニメ作品の完成までには、プロデューサーや監督の元、様々な仕事が分業化されています。作画、仕上げ、背景、撮影、現像、編集など。制作進行はそれら関係者の間の橋渡しの仕事です。それぞれのスケジュール管理たるや、大変な仕事です。
本書は宮崎駿監督のすぐそばで仕事をしながら、その後姿をいつも眺めていた若者(木原さん)が、忘れがたい思い出と感謝を書き残したものです。
よくぞ書いてくださった!
と、感動の一冊です。私はこのたびジブリに関するいろんな本を図書館で借りて読みましたが、この本に関しては
とんでもない本をみつけてしまった!
と思いながら読みました。
図書館の本棚の中でタイトルが光っていました。タイトルに惹かれて、もう貸し出し冊数限界だったのに、他の本をやめてこの本を借りました。それがよかったです。
木原さんはアニメ制作の演出家を目指して上京、就職、過酷な現場に耐えて、憧れだった宮崎駿監督と仕事をすることとなりました。手違いでアニメ制作会社の面接日を間違えて伝えられたり、ようやく就職した会社が解散したり、それはもう大変な経験をしてからの、運命的な流れでの監督との出会いでした。
もちろん、設立されたばかりのジブリでの制作秘話や裏話も盛りだくさんですが、木原さん自身のドキュメンタリーとしても深みがあり読みごたえがすごいです。
夢を叶える人に肝心な姿勢をも垣間見ることが出来る本です。
さて、今でこそ有名な「天空の城ラピュタ」ですが。
皆様、これがジブリにとってどういう意味を持つ映画だったか、ご存知でしたか?
実は、設立されたばかりのスタジオジブリの初作品のみならず、宮崎駿監督が挑戦する初めてのオリジナル劇場用長編アニメーションでした。
『スタジオジブリという会社は、宮崎駿監督が映画を作るために徳間書店が特別に出資して作ったアニメーション制作会社としてスタートを切ったわけのだ。「天空の城ラピュタ」は会社設立第1作目にして、会社の存亡がかかっているという運命を背負っていたに違いない。』
その時のジブリのスタッフは全員作品契約でした。元は所属しているスタジオや会社がある、いわば作品制作のために集められたその道のスペシャリスト。監督がいかに大変な立場でも、仕事を遅らせて彼らを待たせるわけにはいきません。
監督は「この作品が失敗したら次回作はありません」と口癖のように言っていたという。そのプレッシャーたるや想像を絶します。
当時監督は45歳。黒々とした髪は、ラピュタ完成時、総白髪になっていたといいます。
天才肌で、仕事に厳しく、淡々としたイメージが強い監督ですが、はたして実際はどうだったのでしょうか。
本書にはその人となりが伝わってくるエピソードが満載です。
本によりますと、スタジオ内の人間にとって宮崎さんは傲慢な人でも気難しい人でもなく、おごり高ぶりはなくスタッフに対する言葉遣いは丁寧で「監督」と呼ばれるのを嫌っていたそうです。
木原さんは監督が自分のタバコを買ってきてもらうのに、しごく丁寧に、必ずスタッフ自身がタバコを買うついでにしか、たのまなかったと明かしています。
木原さんが時々監督にいろいろ鋭い質問を投げかけられるのですが、そのやりとりもおもしろいです。信頼もユーモアもあるからこそなんですね。
仕事で部下を持つ上司の立場にある人にも参考になることがいっぱい書いてある本です。
物書きを目指す方、アニメ制作に関わる方は座右の書となることでしょう。
(あ、私もこれはもう愛蔵本の仲間入り)
もちろん制作秘話もたくさん
ラピュタ冒頭プロローグ、ヒロインのシータが空中海賊ドーラ一家に襲撃され、シータが飛行船から落下するまでのわずか3分50秒。
2時間の映画の中の、そのたった数分のプロローグのために、監督は5パターンの絵コンテを描いていたといいます。物語の出だし、観客の心をいかに掴むかを特に大事にしておられたかということがよくわかります。
はたから見ると机に向かって延々絵コンテを描いている、それだけの一日。ジブリの制作現場の作業はいつも遅れ気味だというのは有名な話だったようですが、監督ご自身の頭の中ではとんでもない作業が神業で進められていたのでしょう。朝10時から深夜1時、2時までほとんど同じ姿勢だったそうです。
お昼ご飯はお弁当だったそうで、過酷な仕事と不健康な喫煙生活、過度のプレッシャーを支えたのは、一つには奥様手作りのお弁当の存在が大きいのではなかったかと私は思っています。
ところで、タイトルの「バルス」とはラピュタ崩壊の呪文ですね。この有名な「バルス」を唱えるまでのラストの場面も、監督の中では葛藤があったのです。そこには私たちの知らないもう一つの「バルス」のラストがありました。まるで、「ラピュタ」という楽しい冒険活劇アニメの向こう側の、監督やスタッフの作品作りのドラマや葛藤を、私達が本当には知り得なかったように。
ジブリ設立から吹き荒れた様々なドラマ。
著者の木原さんが届けたかったのは、この時代と熱いスタジオの空気感です。ちなみに「ジブリ」とは「サハラ砂漠に吹く熱風」という意味です(^.^)
ジブリに関わった方々の膨大な努力と時間、作業が結晶となった「ラピュタ」はご存知のように大ヒット作品となり、公開30年後の今もたくさんの人に愛されています
次はこちら↓
ジブリの教科書2 天空の城ラピュタ (文春ジブリ文庫)
710円
Amazon |
以前、はなみんさんに教えてもらって、このブログでも何度か紹介させてもらっている「ジブリの教科書シリーズ」のラピュタ本です。
これ、執筆陣が豪華過ぎる~
ナビゲーター、冒頭文
森絵都さん(作家)
作品の背景を読み解く
金原瑞人さん(翻訳家・児童文学研究家・法政大学社会部教授) 古くからの児童文学と「ラピュタ」の輪郭
石田衣良さん(コピーライター・作家)
荒俣宏さん(博物学者・評論家・小説家・タレント)
湯本香樹実さん(作家)
上橋菜穂子さん(作家・文化人類学者)
夢枕獏さん(作家)
宮崎至朗さん(監督の弟、兄・宮崎駿について書いてます!)
ラピュタの現場から
宮崎駿
久石譲さん(音楽)
丹内司さん(作画監督)
二木真希子さん・友永和秀さん・近藤勝也さん(原画)
他に、アフレコ密着ルポ
宣材コレクション(公開時のポスターやチケット)紹介
空中海賊ドーラ一家の紹介など。
宮崎アニメを読み解くなら、この本も↓
「宮崎アニメ」秘められたメッセージ
著者 佐々木隆
KKベストセラーズ
(はじめにより)
C・S・ルイス(イギリスの小説家。「ナルニア国物語」作者)が「子どもの本を書く時は大人でも感動するように書きなさい。子どもだましのいいかげんなものを書いてはいけません。本気で書きなさい。」と言っています。宮崎アニメも本気で描かれた芸術作品です。
…「生きているものにはどんなものでも生きる意味がある」という言葉はアニメにおいては、風景から部屋の隅のごみに至るまですべて、監督である宮崎駿とジブリなどのスタッフの人たちが描いたもので、自然にそこにあったものではないことに現れます。それが自然に写ってしまった物を含んでいる実写の映画との違いです。そこで「描かれたものにはどんなものでも描かれる意味がある」ということになり、読み解くことが必要になってくるのです。作者とスタッフの人たちの意識・無意識の意図が現れているのです。
…大切なものが美として表現され、美として受けとめられるなら、アニメを含む芸術(技術・アート)は人生に重要な役割を果たすことになります。芸術は快楽や慰めを与え、生きる喜びと真実と、そして人生の意味を心に残すのです。
第1章 宮崎駿の「動く城」【「ハウルの動く城」論】
第2章 名前と季節の秘密【「となりのトトロ論」】
第3章 ファンタジーの教育【「千と千尋の神隠し」論】
第4章 死と復活の物語【「風の谷のナウシカ」論】
第5章 生きろというメッセージ【「もののけ姫」論】
第3章では、「カオナシ」とは何か、の考察が興味深かったです。
カオナシって仮面をつけたような見た目なんですよね。
最初映画を見た時正直意味がわかりませんでした(^_^;)
でも、このカオナシを人間の生徒に例え、「正当に存在を認められないさびしさや悲しさ」という解説に、なるほどと納得できました。
今日、ご紹介した本は、どれも読みやすい奥深い解説が魅力です。
アニメ・ジブリ好きな方のみならず、文章を書く方、おもしろい本を探している方はぜひ読んでみてください(^^♪
読みごたえがありますよ~
今日も長くなりました。
でも、これ、前編なんですよね…(^^;
今日がジブリ関連本紹介最終になる予定だったんですけど、あろうことか、高畑勲監督にまでたどりつきませんでした
やはり、ジブリは壮大です。
なので、次回は後編として、今月はじめ残念ながら帰らぬ方となられた高畑勲監督についての本や想いを、拙筆ではございますがご紹介させていただいて最終回にしたいと思っています。
ご訪問いただいて、また最後まで読んでいただいて大変ありがとうございました
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