うつ病の診断基準(WHOによるDSM-5より引用)
1.ほとんど毎日、一日中ずっと気分が落ち込んでいる
2.ほとんど毎日、一日中ずっと何に対する興味もなく、喜びを感じない
3.ほとんど毎日、食欲が低下(増加)し、体重の減少(増加)が著しい
4.ほとんど毎日、眠れない、もしくは眠りすぎている
5.  ほとんど毎日、話し方や動作が鈍くなったり、イライラしたり、落ち着きがなくなったりする
6.  ほとんど毎日、疲れやすかったり、やる気が出なかったりする
7.  ほとんど毎日、自分に価値がないと感じたり、自分を責めるような気持ちになる
8.  ほとんど毎日、考えがまとまらず集中力が低下して、決断できない
9.  自分を傷つけたり、死ぬことを考えたり、その計画を立てる

 

☆.・∴.・∵☆:*・∵.:*・☆.☆.。.:*,★ :*・∵.:☆.。.:☆.・∴.・∵☆:*・∵.:*・☆.☆.。.:*,★ :*・∵.:☆.。.:

 

上記の項目別に母の症状を記してみたいと思います。

1: 抑うつ状態
2: 関心の欠如、感情の鈍麻
3: 食欲低下

うつ病と聞くと、多くの人がまず想像するのが1,2,3の内容だと思います。
私自身、母がうつと診断されるまで、うつ病の患者さんに対して抱くイメージは落ち込みが激しく、わけもなく涙がこぼれてしまい、食事がとれず眠れない…そんなものでした。


ところが、驚くことに、母には1~3の症状はほぼ見られず…

自分の行動に対して自信のなさや不安はあっても、理由のない漠然とした不安はなかったし、食事も一定量普通には食べられていたのです。発症当時は、大好きな子どもを扱う仕事を楽しそうにこなしていたし、これが世に言う「うつ」であると確信が持てませんでした。

 

うつ病には、抑うつタイプと不安焦燥タイプがあるのをご存知ですか?母は、典型的な後者だったのです。これについては別に記事を書きます。

 

また、リハビリ期を迎えた今、うつ病の患者さんが、何かに関心を持ち、病前のように、心配ごとなく「楽しい!」と感じる時間を過ごすことがとても難しく、貴重であると実感しています。


4:不眠

 

母はもともと旅先で眠りづらかったり、小さな音ですぐ覚醒してしまったりと
健康な時から睡眠のとることが得意なタイプではなかったのですが、

うつ症状が現れてからますます不眠になりました。
そもそも一番最初に受診したのも「寝つきが悪い」「途中で何度も起きてしまう」といった症状だったので

うつの初期症状としてよく見られるものかと思います。


5:焦燥

 

母が今も昔も一番苦しんでいるのが、この焦燥感です。
常に何かに追われているような、切迫した気持ちになり、母はよく「じりじりする」と表現します。
急性期には、自宅でいてもたってもいられない気持ちになり、部屋の中を歩き続ける状況で、
体を制止すると叫びだしたくなるほど、じりじりして辛かったそうです。
逆に、歩いていると少しは体が楽だったことから、薬の副作用である「アカシジア」を疑われて治療をしましたが改善せず、

結局はうつ病の悪化、焦燥感の最たるものであることが判明しました。

今も、出かける時、電車を待つ5分がじりじりして辛い、外食の時ごはんが出てくる待ち時間が辛い
その焦燥感に苦しんでいます。薬で抑えるしかないと言われてはいますが、あと一歩治りきらないのが悩みです。

ちなみに、焦燥感の強い重症うつによく効くと言われている電気痙攣療法については後日別の記事に書きたいと思います。


6:気力・体力の低下

 

これに関しては、急性期を越したリハビリ期に当たる今の方が顕著に表れている気がします。
活動量が減ってしまったことで、全身筋力が落ちてしまったのはもちろん、
人ごみの中を歩くことや大きな音でTVが流れている環境等、疲れやすくなる要因は様々です。
健康な人の何倍も疲れやすいということは、いつも念頭に置いておきたいですね。


7:罪業妄想

一般的な軽~中等度のうつには妄想症状は起こらない(逆に言うと妄想症状を伴ううつは重症例だそうです)のですが
母の場合、一番症状が悪かった時に、罪業妄想という症状が現れました。
定義としては「自分が悪者だ、と自分を責めてしまう妄想」だそうで、
人一倍責任感が強く、まじめな母は、「突然の病気になって家族に迷惑をかけてしまっている」という
辛い状況に追い込まれ、極限の状況でこのような症状を呈したのだと思われます。
この頃のことについては後日記事にしようと思いますが、正直思い出すのも辛い日々です…。


8:思考制止

お昼ご飯にお弁当を買っても、何からどういう順番で食事を摂ればいいのかがわからず
お弁当を前にしても食べ始めることができなかったり
真夏の暑い日に、自宅で汗びっしょりになりながらも、設定温度を何度にすればいいかわからず
冷房をつけることができない等、病的なレベルで「決断ができない」様子が見受けられました。
母は自宅で塾をしていましたが、大人数の生徒をまとめることや、段取りを立ててクラスを進行することは
大変難しくなっていきました。



9: 希死念慮

母は「死にたいと思ったことはない」と今も言うのですが、急性期に罪業妄想があった時には、
まるで最後のお別れのように家族に感謝の意を述べたり、思いつめたような顔で落ち込んでいる姿が見られました。
インターネットで自殺の方法を検索していた履歴を見つけた時は、とてもショックで、隠れて泣いてしまったのを覚えています。


以上9項目の中から、1または2を含む計5つ以上の症状が2週間以上続いている場合、「うつ病」と診断されます。

ざっと読み返しただけでも、うつというのが大変つらい病気だということが身に染みてわかりますね。
うーん、早く治してあげたい。焦りは禁物でですが、切に願わずにはいられません。