「本当かい?良かった〜」

オミくんがホッとした顔でタマモを見た。


「ああ、ここの〝さえの神〟の力は蘇った。完全復活だ」

タマモは立ち上がると

パタパタと両手で尻の土を払う。

「さてと…これでアタシの役目は終了だ。次の町に行くとするか」


タマモの言葉に

笑顔だったオミくんの口角が下がった。

「え?このまますぐに?嘘だろ?キヨコちゃんに会ってモウスのことや〝さえの神〟のことを教えてあげないと…」

オミくんの問いに答えることなく

タマモはスタスタと

通気口に向かって歩き出した。


「おい、おい!ちょっと待ってよ!タマモが行ってしまったら僕たちは小ちゃいまんまじゃないか!置いていくなよ!しがみつかせろ!」

オミくんが慌てて走り出す。

ブンジュも急いで後を追った。

床下の通気口を抜け出たところで
なんとかタマモに追いついて
2人は勢いよく飛びついた。

飛びつかれたと同時にタマモは
シュルシュル大きくなっていく。
タマモにしがみついたオミくんと
ブンジュも間一髪で元の大きさに戻った。

お日様の光を眩しそうに浴びて
オミくんはキラッキラの笑顔を見せる。
「ふぅ、ぎりぎり間に合った〜。まったくタマモは意地が悪いよ。豆粒大のままだったら彼女ができても身長差に悩むとこだったじゃないか!」
オミくんはチラリとブンジュを見ると
白い紙を口に咥えた。
「さてと、それじゃあ、サトリの里に戻ろっか。キヨコちゃんが待っているからね」
オミくんはすぐに呪文を唱え出したが、

タマモは口を尖らせ首を振る。


「いや、アタシは行かないよ。アンタたちだけで戻りな。アタシには役目がある。〝さえの神〟を守り、邪悪な奴らから日本を守るって大切な役目がね。今回は、たまたま〝さえの神〟のいる場所にキヨコが住んでいたから、キヨコにも手伝ってもらったが、本来ならキヨコと関わることは無かったんだ。まったく、ここの〝さえの神〟には手こずらされたよ。おかげで長居しすぎた。そろそろ次の土地の〝さえの神〟を見回りに行かないと日本の平和は…」


タマモがブツっと話を止めた。

「アンタ、いつまでアタシに、くっついているんだい?」

眉毛をピクピク動かしてブンジュを睨む。


ブンジュは元の大きさにに戻ったのに

ガッチリとタマモを掴んで離れようとしない。

「タマモさん、どこに行く気ですか?行かなくちゃ、行かなくちゃって…どこに行くのですか?サトリの里に戻る気は無いですよね?僕はサトリですから、心の中はお見通しですよ」

ブンジュは

いっそう強くタマモにしがみついた。


オミくんは呪文を唱え終わり、

地面から勢いよく風が吹き上がっている。

準備完了、

いつでもビュン飛びできる状態だ。


「こら!放せ!バカ!やめろ!」

タマモは

しがみついているブンジュの頭を

ポカポカ殴った。

「放すもんか!」

何度叩かれても

ブンジュは歯を食いしばって堪えている。

そして

オミくんが「行くぞ!」と言ったと同時に

タマモを抱えたまま力一杯に地面を蹴った。

 

びゅーーーーーーん!


ビュンチに飛び込んだ3人は

あっという間にサトリの里へ飛んでいく。


「いって〜!」

エジャジの庭に着地したブンジュは

タマモに叩かれた頭を抱えてうずくまった。

美少年から

さえないおじさんに戻ったオミくんが

ブンジュに駆け寄る。

「大丈夫かい?ああ、かわいそうに、タンコブができているよ。よく頑張ったね。まったくタマモは手加減しないから…」

そう言いながらタマモの方を見たが

タマモが見当たらない。


「タマモ?」

2人は身を伸ばしてタマモを探したが、

タマモの姿は見えない。

気配も感じない。


タマモが着地したであろう辺りで

ふわりとした物に足が触れた。

「…嘘だろ?」

見るとキツネの尻尾だった。


      〈続く〉