キヨコは深い眠りに落ちていった。
エジャジはキヨコをベッドに運び、
大きな風船を膨らませる。
タマモは慌てて耳に指を突っ込んだ。
「おい!エジャジ!何をしている⁉︎そんなデカイ風船!割れたらどうするんだ!」
エジャジは
ベッドごとキヨコを風船に入れた。
風船の口には
布団乾燥機のような装置がセットされている。
「大丈夫、割れやしないよ。これは最新の疲労回復装置だ。このバルーンの中で眠れば、どんなに疲れていても一気に回復する。スッキリ爽快に目覚められるんだ」
エジャジは自信たっぷりに言うが、
タマモは耳を塞いで縮こまっている。
オミくんとブンジュが顔を見合わせた。
「え?まさか?」
「風船が怖い?」
数多いる妖怪の中でも
トップクラスの妖力を誇る九尾の狐が
風船を怖がっている?
「マジか⁉︎」
オミくんとブンジュが
ぷーっと吹き出した。
笑い出した2人をタマモがギッと睨んだ。
目は吊り上がり、赤く光っている。
体からは恐ろしい妖気を放ち、
陽炎のように立ちのぼっていた。
「何だい?アタシの弱点を見つけたつもりかい?あんな物、怖くも何ともないさ!風船が割れたらキヨコがビックリすると思っただけだ」
そう言うとタマモは
オミくんとブンジュの尻を蹴り上げた。
2人は「おぅあっ!」と
変な声を上げて床に転がり
お尻を押さえてのたうち回った。
「ふん!いつまでも寝そべっているんじゃないよ!」
ニタッと笑ったタマモは
いつものタマモに戻っていて、
顎で外に出るように指図した。
「さっさと準備しな!キヨコは暫く起きないだろうから、今のうちに〝さえの神〟のところに行くよ」
「え?僕もですか?」
床に倒れたまま尋ねるブンジュに
タマモは頷く。
「ああ、ブンジュもだ。サトリがいれば何かと便利だからね」
タマモは軽く手を上げて
エジャジにキヨコを頼むと伝える。
タマモの心を読んだエジャジも
軽く手を上げて見送った。
オミくんはお尻をさすりながら立ち上がり、
ビュンチを描いて呪文を唱える。
呪文の合間に
「全く人使いの荒い…」
という一言もあったが、
ビュンチから風が湧いてきて土煙を上げた。
タマモがブンジュに声をかけた。
「1、2の3で飛び込むぞ!」
タマモの合図で3人はビュンチに飛び込み、
あっと言う間に飛んで行った。
ビュン飛び初体験のブンジュだったが
急上昇、急下降にも全く動ぜず
悲鳴も上げず
冷静に、すたっと着地した。
「ほぅ、いい度胸だ」
「身体能力もいいね」
感心する2人に
「サトリの里は最新機器だらけだからね。バーチャルで心身共に鍛えている。実践は初めてだけど、このくらいなら対応できるよ」
ブンジュは平然と答えた。
〈続く〉