「盗撮していたの?それとも監視カメラ?」
リッチーはふてくされたが、
タマモは意に介さない。
「世の中に男前はごまんといる。その中でトーネの顔を勧めたのは…ズバリ!トーネが好きだったから〜!だよね?図星だろ?」
タマモはふざけるように言い、
ニンマリ笑ってリッチーを覗き込む。
引きこもりのせいか
リッチーは色白なのだが、
顔も耳も首も見事に赤くなった。
モウスの緑色の毛で覆われ
顔だけが出ているので
その変化がよく分かる。
「な、何を…」
リッチーは否定しようとしたが、
指輪が妖しく光り出し
白壁にトーネが大きく映し出された。
「ほ〜ら、トーネが出たじゃないか。この指輪はね、閻魔大王の浄玻璃の鏡と同じ鉱石でできているんだ。嘘はつけないよ。全てお見通しさ」
タマモは指輪をチラつかせた。
「カマスショイの顔をトーネそっくりにしたのは、叶わぬ恋の代用品かい?」
冷徹なタマモの物言いに
リッチーの赤い顔が歪んでいく。
タマモから笑顔が消えた。
「アンタの気持ちは分かった。もう、お遊びはここまでだ」
ふざける様子も一切無くなり
カマスショイに声をかけた。
「これで分かったかい?」
カマスショイは頷いた。
「分かったよ。リッチーはトーネが好きなんだね。オラはトーネの顔になったけど、顔だけじゃダメなんだ。よく分かったよ」
タマモがスッと
カマスショイの目前に立つ。
ゾクリとするほどの殺気だ。
「じゃ、食うか?」
タマモの目に妖気が帯びてきた。
背筋が凍る。
窓ガラスがジリジリと音を立てた。
カマスショイはブンブンと首を振る。
「食わん!リッチーは大切な人だ」
タマモは「ふん」と鼻を鳴らすと
お婆さんの姿から
九尾の狐に変化した。
部屋の空気が一変する。
ギンギンに空気が圧縮され
キヨコは硬直して動けなくなった。
「玉ちゃん…何…を」
声も出せない。
タマモは鋭い爪を
カマスショイの喉に当てる。
「リッチーを食わなければオマエを殺すと言ったら食うか?」
カマスショイは驚いて目を丸くした。
リッチーも目を見開き
ゴクリと唾を飲む。
「食わん!オラを殺せ!そんで、オラが死んだらリッチーは助けてくれ。そんならオラ、殺されてもいい」
カマスショイの思いを聞くと
タマモは目を細め
ふさふさの尻尾を振って
カマスショイの首から爪を離した。
ホッとするのも束の間、
今度はリッチーの胸に爪を立てた。
モウスの毛で覆われているが、
リッチーの心臓の辺りだ。
モウスの毛の奥にあるリッチーの胸に
爪がめり込んでいく。
「な⁉︎何するだ!やめろ!やめてけろ!オラが死ぬ!だからリッチーは殺さんでくれ!」
カマスショイが必死に叫ぶが
タマモは手を止めない。
「オマエを殺しても仕置きにならん。自分の命より大切だと言ったリッチーを殺す。それがオマエの犯した罪の代償だ」
リッチーの顔が恐怖でひきつる。
「いや…やめて!助けて…」
今まで虚勢を張っていたリッチーが
弱々しく命乞いをした。
タマモは血のように赤い目を光らせ
「もう、遅い」
と深く爪を差し込む。
「オマエの罪を思い知れ!」
懇願するカマスショイを一瞥し、
タマモは一気に力を込めた。
やめて!玉ちゃん!と
キヨコは叫ぼうとしたが、
タマモの強烈な妖気で声がでない。
いや、それどころか
息さえ出来なくなっている。
何もできない。
無力な自分が情け無い。
苦しい。
タマモがリッチーを殺すなんて
そんな恐ろしい光景は見たくない。
キヨコはギュッと目を閉じた。
断末魔のリッチーの叫び声と
カマスショイの悲鳴が聞こえ
キヨコは意識を失った。
〈続く〉