「まずは私の家族に会って挨拶してね。それから私が藤谷さんのご家族にご挨拶して、後日、両家顔合わせになるでしょう。でも、それを1週間以内にするのは無理ね。香港に行ったら次はいつ日本に?」
弥生がテキパキと段取っている。
「あ、ああ、なんか、1週間後に発つのだけど、また翌週には一度戻るんだ。その後、本格的な香港勤務になるらしい」
「ふーん、珍しいわね。海外勤務の内示もなくて、いきなり1週間後に行けって言うくせに、また一度日本に戻るの?」
弥生は疑うような顔をした。
弥生に言われて
オレも急に不安になった。
独身で身軽だから
簡単に転勤を言い渡されたのかと思った。
考えてみれば
もっと早くに打診があっても…。
いや、それよりも弥生だ。
何となく話が進んでいるが、
今、家族になるって言っていた。
プロポーズOKなのか!
スルーできない。
オレはプロポーズをしたのだから
その返事をしっかりと
確認せずにはいられない。
「あの、弥生さん?改めて聞くけど、プロポーズOKでいいの?オレと結婚してくれるの?」
弥生が正面を向いた。
そしてオレの手をとった。
「はい。不束者ですが、よろしくお願いします」
「え?本当⁉︎本当に?」
弥生がにっこり笑って頷いた。
バンザーイ!
オレは弥生を抱き上げて
いつか見たドラマのように
クルクルと回った。
そして、
ドラマの主人公みたいに
弥生を見つめてキスをした。
きっと今、
オレたち2人に
スポットライトが当たっている。
天からの祝福を受けている。
トントン拍子で怖いくらいだ。
全くモテなかったオレが
出会って10日でプロポーズ成功!
いいのか?オレ!
こんなに幸せでいいのか⁉︎
ああ、山下さんに報告したい!
喜んでくれるだろうか?
いや、間違いなく喜んでくれる!
そしてお礼が言いたい。
ありがとう!
キッキにも報告したい。
サチヨさんにも
マッスルさんにも
元モデルの鬼軍曹エミリさんにも!
みんな、ありがとう!
オレの家族はどう言うだろう。
きっと、
両親と祖父母は大喜びしてくれるだろう。
でも、嫁いでいった姉は
弥生が美人すぎて
素直に喜ばないかもしれないな。
そうだ、ケンジとルミにも報告するぞ!
2人に弥生を紹介したら
びっくりするだろうな。
いつの間に?って思うだろうな。
そんなことを考えて
自然に顔がゆるんでしまう。
「でもね、私は香港についていかないわよ。仕事も夢もあるから…」
「うん。そうだね」
「でもね、私、子供は欲しいの。もうすぐ30歳になるし…」
「うん、そうだね」
「あっ!結婚式はどうする?」
「うん、そうだね。いろいろ考えないとね」
オレたちは幸せな会話を楽しみながら、
将来について夢を語った。
どんな家庭を築きたいか、
どんな生活を送りたいか、
結婚式はどうするか、
結婚式か…。
弥生の花嫁姿は
ドレスでも和装でも美しいに違いない。
参列者もうっとりするだろう。
自慢の花嫁だ!
想像するだけで
心地よい時間だった。
そして、
オレたちは今後のことも
長い時間話し合った。
お互いの家族に会うのは
転勤後、
香港の生活が落ち着いてからにした。
なんとなく今後のプランをまとめ
オレたちは落ち着いた。
でも、
それからの1週間は
あっという間だった。
《つづく》