小学校の頃、クラスで一番成績が良かった友達がいた。
まぁようするに一番勉強していた友達。
彼は東大を目指しめちゃくちゃ勉強していた。
そして都内で一番優秀な中学、高校に進学。
そこでもとにかく勉強している話しか聞かなかった。
結果、東大に合格した。
合格した日、彼は泣いたらしい。
号泣したそうだ。
悔しくて。
行きたい学部には合格出来ず、第二志望の学部に受かった。
東大のね。
それでも彼は悔し涙を流した。
僕には想像も出来ない話だ。
彼の親は有名な信用金庫に勤めて、非常に教育熱心だった。
僕の父親も自分と同じ早稲田に行って欲しかったようだが、高1くらいの時点でその可能性は限りなく0に近かった。
東大に入った事だけを見れば羨む人は多い。
でもそこに辿り着くまでの努力、苦労。
そして幼い頃から背負った十字架。
背負ったのか背負わされたのか。
それに潰されない努力というのは、実は周りの人にはあまり見えなかったりする。
人知れず悩み、苦しみ、涙を流す。
4月13日、6年前の4月と同じ様に坂口さんはぶっ倒れた。
あの時と同じように正面から撃ち合って。
片手で掴みかけたベルトはスルリと逃げ去った。
試合途中から堪らずセコンドに着いた佐藤さんが、坂口さんに肩を貸して二人は光の向こうに消えた。
あの時というのは2007年の4月27日。
坂口さんがデビューしたその日、佐藤さんはセミファイルに出場していた。
僕はあの時と同じように客席に座って観ていた。
一度は諦めたプロレスラーの夢を叶え、ベルトに挑戦。
僕なんかが想像つかないくらいに重たい十字架を背負い続けて辿り着いたタイトルマッチ、そのリングから見た景色はどんなだったのかな?
色々な夢を諦め、逃げ続けた僕には見る事が出来ないその景色は。
戦前色々言う人はいたけど、もの凄い試合だった。
あの二人にしか出来ない闘い。
DDTの最高峰の選手権試合、メインイベント。
敗れたとは言え、坂口さんはめちゃくちゃ輝いていた。
僕は見せてやりたかったよ、あの姿を。
6年前の坂口さんのデビュー戦、とても公平とは思えない辛辣な記事を書いてた人に。
他人の背負う十字架の重みを分からない全ての人に。
なんちゃってね、きそぺろ☆