「このはこ、たいしたことないわ。」 「とびこんでとびだすの、たのしい。」

 

さりげないショットに二匹の日常が詰まっている。箱の好きな猫たち。人間はどんな届け物があっても、一度は猫にダンボール箱を提供してみる。全く関心を払わない時もあるし、やけに気に入って何度も出たり入ったりして遊ぶこともある。猫との暮らしが長い友人によれば、猫の体よりずっと大きい箱はあまり意味がないのだとか。こんなのに入るのか!と驚くような小さめのが好まれるらしい。「あなたのとこのは、いつもオーバーサイズ!」と笑われた。二匹ともこの箱には何度か飛び込んだ。にっきが入るとまるでお風呂に浸かっているよう。しかもカラスの行水だ。ジャンプイン、ジャンプアウト!

 

 

「そばにいるとあったかい」「おしりどん!」   「べつべつでいこう」「ほりだしものさがすんだ」

 

二匹はお尻をくっつけるように並ぶこともよくある。わざわざテーブルの端っこでT字型に箱を作ったのはどういうわけか。まだ日が十分に高くない時間にここが一番暖かかったのかもしれない。背中の丸まり具合がそっくりなのが可笑しかった。TVモニターの後ろを通って顔を出した二匹が、お尻で挨拶して右と左に分かれる。にっきはひっくり返りそうなおもちゃ箱に顔を突っ込み、宝物を物色。はっかはそんなものには関心がない。それぞれ行く先がちゃんとあるらしい。

  

「なでてもいいわ。しずかになら。」 「くびのうしろのふわふわはわたしのじまん。」

 

今朝は、珍しいことにはっかを抱き上げたらそのまま膝に乗った。背中を撫でても、首の周りのふわふわの毛を摘んでも嫌がらず、目を細めていた。なかなかない機会だ。いつもは人間が彼女のペースに合わないだけだったのかもしれない。日曜日の朝、急がず慌てず、ゆったりしている人間の気分が直にはっかに伝わったようだ。人間としても猫を膝に乗せて、静かに座っているなんていう贅沢な時は本当に滅多になかった。(はっかちゃん、ありがとね。)

 

 

「せっしゃ、だいじなしめいをおびております」(なんちゃって)「ひもひっぱるとついてくる」

 

そんな和みのひととき、にっきは本箱の上で、きりりと精悍な表情を見せている。こういう顔を見ると、子供っぽさは何処へやら。猫にもちゃんと意思があるように見える。逆光の中で、(おもちゃ箱から自分で堀り出してきた)釣竿猫じゃらしをくわえるにっきには、孤高の影がある。猫は人間の持ち物ではなく、猫として誇り高く生きている。猫の姿を見ていると、人間は実にあれこれ考えるものだ。当たっていようといまいと、猫をめぐる思索は毎日続く。