「あれして、これして、もっとする」

 

昨日まではカラフルな鞠だったものが、今日はすっかり解けて、うどんのようになって床に伸びている。爪研ぎのダンボールも再びむしられて、四方に散らばっている。その真ん中でにっきはねずみのおもちゃと格闘している。「ありゃりゃ、やってくれちゃったね!」にっきは新たに「おもちゃクラッシャー」という称号をもらった。なんと呼ばれようと、この小さな狼藉者(散らかし屋)は知ったこっちゃない。

 

 

「ねえ、はっかちゃんったらー!」 「おちつかないこだわ。」

 

はっかは我関せずと香箱を作っている。そこににっきが顔を出して、なにやら仕掛けようとするのだが、はっかはうるさそうに横を向く。二匹のやり取りを見るともなく見ていると、通じ合っているんだかいないんだか、一種のジェネレーションギャップのようなものを感じて思わずニヤリとしてしまう。

 

「におうわね」「くんくん、ひくひく」

 

ところが、おすましはっかがじっとしていられないこともある。人間の夕食に秋刀魚を焼いた。買い物袋から生魚を取り出した途端、猫たちは台所に集まってくる。グリルからジュージューいう音が聞こえ、あたりにいい匂いが漂う頃、二匹は恍惚としている。人間は毎度のことながら魚が焼けた途端、他の皿には目もくれず猫に奪われまいぞと秋刀魚だけ先ず食べる。食べ終わった途端に皿を洗って食器棚に戻す。我勝ちにテーブルに寄ろうと凌ぎを削っていた猫たちは、魚が消えた途端人間の食卓には興味を失って、めいめい好きなところへ退散する。その変わり身の速さときたら!小さな狼藉者も眠り姫も、ただの猫にかえって動かない。