猫たちが何かをまじまじと見ているのを人間が眺める。猫たちの表情は真剣だ。もしかして、もしかして、人間の食べ物をお相伴できるのではないかという期待に満ちた眼差し。「だめ、やらない。例外なーし!」と人間がにべもないのに対して、猫の方は万が一の可能性にかけているらしい。時々人間がしくじると(台所で料理をこぼしたり、食卓に運ぶ途中で落としたり)猫たちは見逃さず、現場に急行する。普段はのろくさい人間も、奪われてはならじとサッと拾う。猫たちはめげずに次の機会を狙う。その熱心さたるや、驚くべき執念だ。

 

  

「テーブル、ねらうわ」  「むりじゃない。」

 

猫たちの身繕いを人間はまじまじと凝視する。よくそんなところにまで舌が届くねと褒めたいくらい、彼女たちは全身を舐めている。そのかいあってはっかの白い毛皮はいつも柔らかで、とても綺麗だ。にっきのトラ模様は光沢があり、思わず撫でたくなる。側に寄ってくるとぬくぬくしている。これからの季節には、カイロより猫だろう。

 

  

「ふくざつな格好もできるわ」    「ただいま足のお手入れ中」

 

静かにしている時も、遊んでいる時も猫たちは色々な表情を見せる。顔だけでなく、体全体が発散するしなやかでしたたかな表情。人間の食べ物をくすねて取り上げられたときに見せる「しまった!」と首をすくめてかしこまっている様子、新しいおもちゃを見つけた時の好奇心満々の姿、動くものを無心に追いかけるあたり構わぬ衝動...。猫と暮らして間もない人間たちの目にはそのどれもがまさに「驚き」。そのうち珍しくもない情景になるのだろうか。いやいや、多分、猫たちはいつでもいつまでも人間にとって「!」な存在なのだろう。

 

蜂ビュンビュンで遊ぶにっきを見つめるはっか。