にっけいしんぶん新聞 -116ページ目

視聴率急落、焦る放送 -イチローが打てば・・・-

巨人戦 陰る神通力 -11面特集記事 企業とスポーツ-

巨人戦の視聴率低下で、日テレの視聴率の“王者の座”が危うくなっています。しかし、同時に他局にとっても巨人戦という数字を稼げるコンテンツを失うということで、放送業界全体にとっても深刻な問題となっています。放映権料を見直すことになれば、球団経営にも影響が出そうです。

今年の巨人戦の視聴率は平均で13%台、最高の6月19日阪神戦でも22.8%と90年代の平均視聴率並み。後半に至っては一ケタが当たり前、5%を下回ってテレ東の旅番組にも大きく水をあけられるといったこともありました。到底ゴールデンタイムに流せる数字ではありません。(ちなみに皮肉なことに最高となった阪神戦は巨人主催なのに中継は日テレでなくNHKでした。)
巨人の不振、オリンピックという要因もありましたが、イチローらの活躍で野球ファンの視線がメジャーに移ったという構造的な問題もよく指摘されるとおりでしょう。

優勝争いを差し置いて巨人戦だけを流しつづけ、プロ野球衰退の片棒を担いできた放送業界にツケがまわってきただけなのですが、当事者の民放各社はそんなことは言ってられません。特に日テレに与える影響は巨人戦の数字だけにとどまらないのです。

2、3年前に日テレの経営陣の方からお聞きしたことがあります。
「当社は巨人戦で安定した高視聴率がとれるから他の枠ではたとえゴールデンでも視聴率を気にしない冒険的な番組を作ることができる。これが優秀な製作者を育てることにつながり、結果的に数字をとれる新番組を生む。当分は視聴率3冠の座は揺るがない。」
現在の人気番組や有名プロデューサーはこういうシステムのもとに育ってきた面もあるのです。

しかしこのシステムは崩れました。
したがって来年とか3年後のいい番組などという余裕がなくなり、目先数字のとれる番組を流さざるを得なくなるかもしれません。となると「そこそこの数字を確実に取れる」バラエティ番組を作ることになり、たとえば今ならば流行りの若手芸人モノに走る、といった具合になっていくでしょう。実際すでにその傾向が見て取れる気がします。
これは日テレにとって悪循環ではありますが、メジャーデビューを夢見る若手芸人にとってはありがたい話かもしれません。ただ、その結果次々に新しい芸人がもてはやされ、芸人の消費サイクルは短くなり、「ゲッツ!」や「なんでだろう?」に続いて「言うじゃな~い」や「ヒロシです」も早々に遠い忘却の彼方へと流されていくことになるでしょう。

「イチローが打てば芸人が使い減りする」

風が吹けば・・・ではありませんが、今活躍中の若手芸人は呑気にイチローに声援を送っている場合ではないかもしれません。

調整役「もういやだ」 -首相何やってんすか?-

森氏が首相に恨み節 -2面-

自民党の森前首相は小泉首相の政権運営について参議院の有力なまとめ役である青木氏らを無視する強引な手法を批判し、「もうこんな(党側との調整)役をやるのはやめようと思う。3年半ずっとやってきたがもういやだ」と表明しました。

森氏が現在(というか首相在任当時からだが)どの程度有力かは定かでありませんが、小泉首相の後見役としてこれまで各方面に顔を立てる役回りをしてきたことは事実です。その調整役をやられていた方が「もういやだ」と言っているのです。(写真右の記事)
これは首相にとっての一大事です。

一方で写真の左のほうの記事をご覧ください。
ASEM(アジア欧州会議)での「日中首相会談見送り」です。会談を行う方向で調整を進めていたものの、中国側が首相の靖国参拝問題に反発したものと見られます。
これも首相に絡んで日中関係の一大事です。

当の首相はこの一大事に何をなさっているのでしょうか?
写真中央下、写真付きの記事をご覧ください。

各国美女に囲まれ破顔 首相」
2004ミス・インターナショナル世界大会に出場する各国代表に囲まれ、「目が覚めるような美しい人に会って時差ボケが治った

・・・・・・。
あんたこんな時に何やってんのよ!?
まだまだ時差ボケだよ!!

自衛隊国際活動「本来任務」に -世論も変わった-

武器輸出3原則緩和 -1面ほか-

小泉首相の私的諮問機関「安全保障と防衛力に関する懇談会」は4日、今後の防衛政策の方向性を示した報告書をまとめ、首相に提出しました。国際平和協力活動を日本防衛と並ぶ安全保障の柱と位置づけ、自衛隊の「本来任務」とするよう提言し、装備の国際共同開発の流れに対応するため武器輸出3原則の緩和も盛り込んでいます。

さて、はじめて政治的に微妙な記事を取り上げたところで予めお断りしておきますが、記者はこのブログでこういった問題に「賛成」「反対」とか、「戦争反対」とか「日米同盟重視」とか、そんな議論をするつもりは毛頭ありません。そうした議論よりも、もっと枝葉末節につっこんでみたり大きく外れたところに焦点をあててみたりするのが趣旨です。
そういった点をふまえて当ブログをお読みください。

ということでこの記事に戻ります。
首相がこういった方向に舵を切って行くのは首相の政治信条もあるでしょうが、国際環境の変化に加え、やはり世論の変化も意識してのことでしょう。湾岸戦争では叶わなかった自衛隊派遣でしたが、現在は反対意見がありながらもイラクでの活動がおおむね認容されていることが示すように、ここ十年の自衛隊に対する社会の考え方は大きく変わっています。

記者はその事実を示す大きな事例を見つけました。それが掲載の写真です。

自衛隊応援アーミー系アイドルユニット
PLANET
(プラネット)

「さきのイラク戦争では多数の死者を出し、戦後処理や人道支援を我国の自衛隊が救助部隊として現地で活動しております。そしてその活動の活躍を含め、自衛隊を応援しようとアーミー系アイドルユニットとして「PLANET」が誕生いたしました。彼女達3人は名前を「」とそれぞれ名乗り自衛隊の応援歌を歌うことになりました。彼女達の歌や活動が今後の自衛隊の活動に少しでも役に立てれば喜ばしいと思います。」(HP紹介文より)

いかがでしょうか?おそらく十数年前にはこのような主張をするアイドルは許容されにくかったと思います。もちろん彼女たちは(少なくとも今のところ)自衛隊の広報ユニットではありません。実は記者、地元の習志野駐屯地の夏祭りイベントで彼女たちを拝見しているのですが、紛れもない、立派なアイドルユニットでした。「匍匐前進」、つい口ずさんでしまう名曲です。
国の政策いかんに関らず現場の自衛隊の方々については応援したいと思っておりますし、その活動を応援する彼女たちにも頑張ってほしいと思います。

かなり議論の焦点がずれているような気がしますが、そこはあらかじめお断りしたとおりということで。


写真はHPより転載
3人をもっと知りたい方はこちらへ。
http://www.desertair.jp/planet/hp/

薄型テレビ 狙うは法人 -時代はまだまだ厚型?-

住宅会社などに売り込み -11面-

電機大手各社が薄型テレビの新たな販路として、住宅会社やホテルなど法人需要の開拓を急いでいます。高額商品を購買力のある法人に売ると同時に、住宅モデルルームやホテル客室を薄型テレビのショウルームとしても活用するためです。

しかし掲載のマンション間取り図をご覧ください。千葉県内で実際に分譲されている物件ですが、約85平米の4LDK、割と一般的なタイプの間取りです。さあ、どこに50インチプラズマを置きましょうか?
せっかくプラズマを置くんです、部屋はやっぱりリビングしかないでしょう。場所は左下隅のテレビ用と思われるコーナーに斜めに置くのがオーソドックスです。

ここでお気づきになられたでしょうか?
そうです。斜めに置いたら薄型の意味がない!のです。
リビングダイニングは12.5畳、新築マンションのLDとして広めとはいいませんが、決して狭くはありません。いえ、この場合ちょっと広めの15畳でもかなり広めの20畳でも事態は変わりません。部屋をすっきり広くするはずの薄型テレビも、斜めに置いたら取るスペースはたいして変わらず、せっかくのプラズマも価値半減です。しかし広いリビングでも窓や扉を考えると50インチプラズマは斜めにしか置くことが出来ない、そんな間取りがまだまだ多いのが現実です。
たまにモデルルームでプラズマがすっきり壁面のボードに埋まっている光景を見ることもありますが、もちろんそれらの家具はオプション。そのオプションがテレビ本体よりもはるかに高いというのではいかんともなりません。

薄型テレビに対応してないのは間取りだけではありません。
たとえば家電製品では薄型テレビに次ぐ売れ筋ナンバー2(15面調査記事より)とされるDVDレコーダーもそうです。旧態依然の横置き型で奥行きも結構あり、これではどんなにテレビが薄くてもテレビ台がはるかに場所を取ってしまうのです。

薄型テレビといっても薄いのは画面だけ、実際にはスタンドの脚組なんかでけっきょく場所は取るんだよ、といわれればそれまでですが、せっかくの高額のヒット商品、それに対応した新しいスタイルの関連商品が出てきてもよいような気がするのは記者だけでしょうか。


(間取り図は三井不動産パークホームズ船橋ブライトコートAタイプ、HPより)

子供の守り神 -万博世代を羨む-

貴志祐介氏 -2日夕7面プロムナード-

ホラー作家の貴志祐介氏がプロムナードにエッセイを連載されています。氏の作品は代表作「黒い家」のほか「クリムゾンの迷宮」「ISOLA―十三番目の人格」あたりも読みましたが、どれも作品世界に引き込まれました。「黒い家」の後半は本気で怖いと思いましたし、「クリムゾンの迷宮」も突飛な話でありながら情景が浮かんでハラハラしたものです。
今回は紙芝居とホラー作品の共通性、地域社会と子供などについて書かれていますが、さすがにホラー作家らしく、短い文章の中にもふつうのエッセイストの方の文章にはない不思議な緊張感が感じられました。

さて、氏は文章の序盤で大阪万博について触れ、ラッシュアワー並みの混雑でへとへとに疲れた思い出を書いてらっしゃいます。
万博世代」。
一般的に正しいのかどうか、多感な時期に大阪万博を経験し21世紀の夢に魅入られた世代を記者(私)はこう呼んでいますが、1959年生まれ(大阪出身)の氏もこれに当るでしょう。記者はこれよりひとまわり下であり残念ながら万博も経験していませんが、実は最近この万博世代というものが気になっています。

技術が猛烈なスピードで進化し、未来は科学で一変する。21世紀には夢の社会が待っている。その象徴たる万博。大人になり、三十数年の時を経てなお共通体験として語られる万博。
万博に行った行かないに関らず、「時代としての万博」を幼くあるいは若くして体験された方は、人格のどこかにこの大イベントの影響があるのではないでしょうか。

記者は未来を信じて子供時代を過ごし、その頃のことを思い出しては嬉しげに語る万博世代の方を羨ましく思うこともあります。また最近は「昭和」という時代をノスタルジックに取り上げることも流行っています。
しかし「万博の時代」は単なるノスタルジーの対象以上のものであるような気がします。社会学的あるいは心理学的な研究があるならば読んでみたいと思います。


心の中の参考文献:「20世紀少年」(浦沢直樹) 映画クレヨンしんちゃん「嵐を呼ぶモーレツ!オトナ帝国の逆襲」

イチロー最多安打 -祝辞は個人的にどうぞ-

258本 84年ぶり -2日夕1面ほか-

いまさら書くのも気が引けますが、イチローさん、おめでとうございます。とにかくすごいです。よほどの天邪鬼でない限り、だれもみな同じ思いでしょう。「84年前は打高投低だった」などと前記録保持者シスラーをおとしめなくても、イチローが史上最高のヒッターとなったことはまちがいありません。
社会面もイチロー一色です。日米のファンは総立ち、実家のある愛知県の豊山町は役場をあげて応援、バット職人も高校時代の恩師もみなさん喜んでいることが伝えられています。

しかしそんな中にどういう訳かまったく場違いな方々がいます。

「経済界も祝福」
・・・最多安打を達成したことについて、経済界からも祝福の声が上がった。日本商工会議所の山口信夫会頭は「素晴らしいの一語に尽きる。心からおめでとうと拍手を送りたい」とコメント。

(斜体部分は日経記事そのまま)

経済界のお偉方が祝辞を贈るのはめでたいことだからいいのですが、わざわざ記事で伝えなくても・・・と思いませんか?まったく関係ないんですよ、イチローと。「池袋で街頭テレビの中継を見ていたさいたま市の会社員田中太郎さん(47)」とかのほうが正しい気がします。
でもまあおめでたい席ですし、お偉い方の素直な祝意、よしとしましょう。しかし二人目はいかがなもんでしょうか。

経済同友会の北城恪太郎代表幹事は「国際舞台で活躍する日本企業は数多くあるが、日本人個人として活躍し快挙を成し遂げたことは大変好ましい」と記録を祝った。

微妙に上から見てませんか?
メジャーの新記録を作ったんですよ。世界一のヒッターですよ。それをつかまえて「大変好ましい」はないでしょう。この際海外で活躍する日本企業なんてどうでもいいです。ただイチローがすごいんです。

北城さんにはぜひ、日本企業から飛び出してアメリカの企業で大活躍する日本人に対しても「大変好ましい」と言ってほしいものです。

(写真はロイター)

砂糖で動く小型燃料電池 -砂糖で動くなら・・・-

松下が試作、安全性を向上 -15面-

松下電器産業は砂糖で動く小型燃料電池を試作、発電実験に成功しました。現在の出力は単4電池の4分の1程度ですが、将来実用化できれば砂糖を補給するだけで携帯電話やノートPCを長時間利用できるようになる可能性があり、現在の燃料電池の燃料の主流であるメタノールを持ち込めない飛行機などでの利用が期待できます。
松下電器では「体内の糖分を利用することも可能。将来は心臓ペースメーカー向けの電池にも利用できる」と話しています。

これはすごいですね。砂糖で発電してパソコンが動くんです。メタノールならなんとんとなく分かりますが、砂糖となると驚きです。よく考えると砂糖もメタノールも有機物、そういえば子供の頃角砂糖を燃やして遊んだっけ、などと思い出したりもしましたが、ベンゼン環が出て以降の記者の化学知識は脳内のどこにも見当たらず、正しい原理はおろかエタノールと砂糖の違いさえ分かりません。

ただ直感として「体内の糖分を利用できる」という点にはピンときました。そう、こういう画期的な新技術を知って勝手に想像の翼を広げるのが文系の使命です。
「糖分を利用できるなら脂肪分だって利用できるんじゃないか?」
なんだかできそうな気がしませんか?砂糖よりもっとエネルギーがありそうです。となると当然・・・

究極!引きこもりパソコンダイエット!!電極を痩せたい部分に当ててネットに興じるだけ。あとはあなたのパソコンがガンガン体脂肪を燃やしてくれます

記者の想像の翼のはばたく先が女性誌の広告というのは残念至極ですが、とにかくドリフのように自転車をこがなくても自分のエネルギーでテレビや扇風機を動かせる時代が近づいているようです。


#TB、こちらからも付けさせていただきました。

消費税総額表示から半年 -けっこう影響ありました-

「値上がりを感じる」 消費者の5割 -3面-

消費税の総額表示義務化から半年が経過。日経新聞調査ではいまだに「値上がりを感じる」消費者も5割を超えましたが、「商品・サービスの購入点数・回数が少なくなった」と購買行動に影響を示した人は1割にとどまりました。

記者も変更当初、買い物をする際には一瞬値上がりしたのかと錯覚したりしました(特にガソリンの店頭表示価格は原油高で値上げかと驚いた)し、今でも時々税抜き価格をチェックすることもあります。長年染み付いた価格感覚というものは簡単には変わらないものです。ましてや今後は段階的に税率が上がるわけで、財務省がなんといおうと、消費者が戸惑う素であることにまちがいありません。

スーパーなど小売り業界にも影響はあったようで、4月5月に売上高が落ち込んだ時には「総額表示導入の影響」という言葉が経営陣の免罪符のように使われていました。まもなく発表される中間決算においてもこのセリフは何度も聞かれることでしょう。たった1割の人がほんのちょびっと(たぶん)購入を控えただけのようですし、それどころか多少高いと思っても「ああ総額表示か」とつい納得して買う客だっている(最近の記者)んですけどね。
けっきょく小売業者が勝手に「総額表示分お値段据置き」などというデフレ加速の自爆政策(9月22日記事参照)をとったことが原因なんじゃないでしょうか。

さて総額表示になって困ったことが記者にもひとつあります。それは、税率変更に備えてか本体に価格を表示しない商品が増えたことです。
記者は何を隠そう甘い物好きで、3時を過ぎるとこっそりコンビニに行って好物のシュークリームを買い込むことしばしばです。しかしお気に入りのヒロタのチョコシューは105円(税込み)と知っていても、新商品や季節限定商品は105円なのか126円なのかそれ以上なのか分かりません。
レジでの小さなサプライズは勘弁してほしいものです。


写真は価格表示のないヒロタの新商品
関連記事:9月22日 需要不足ほぼ解消 -陰気な悪魔は去ったか?-
http://nikkeiyokyom.ameblo.jp/entry-92501819e29a687e0eae265c6bdb5680.html

原油50ドル市場の警鐘 -世界の中心で、買いを叫ぶ-

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おれの買い注文が50ドルを破った!
-世界にアピールする原油先物トレーダー


供給の制約 解消迫る -1面-

28日、ニューヨーク商業取引所(NYMEX)で米国産原油の代表油種であるWTI先物相場が史上初めて50ドルを突破しました。精製能力不足、将来の需要増見通し、頻発する内戦・テロ等地政学リスクの高まりなど諸要因の重なりが背景にあり、投機的な資金も流入していることから、足下の需給関係を超える大きな上昇となっています。物価水準が異なるので比較は困難ですが、50ドルという水準は石油ショックの時期や湾岸戦争の時期を大きく上回る水準です。
原油高は世界経済の先行き不安の最大の火種となっていますが有効な手だては少なく、このままの水準での推移が続くと経済成長の鈍化は避けられない見通しです。

そんな中明らかにまわりのトレーダーとは異なる方向を向いてカメラ目線で勝ち誇るトレーダー。
そうです。株の世界も同じですが、相場の世界は今後の世界経済の行方よりも目先の自分のポジションのほうが大事なのです。どんなに不幸な事故や事件が起こっても、被害者のことよりまずは相場への影響、つまりは自分のポジション(手持ち残高)の損得を考えなければなりません。まったく嫌な話です。

彼が本当は何をしているところであるのかは分かりません(何らかの手サインかもしれないが、ほんとにカメラにアピールしているのかもしれない)が、一枚の写真を見て相場人間の性に思いを馳せてしまいました。

初値負け無し151社でストップ -そりゃ凹みます-

新規上場株 -3面-

29日大証ヘラクレス市場(*)に上場した三星食品の初値は1760円となり、公募価格1850円を約5%下回りました。昨年9月19日に同じくヘラクレス市場に上場したファイナンス・オール以来続いていた、初値が公募価格を上回る「負け無し」記録は151社で途切れました。

なんのことだか意味が分からない方もいるかと思いますのでざっと説明しましょう。
会社が株式市場に上場する際、資金調達のために直前に新しく株を発行して一般投資家に買ってもらいます。この時の価格が「公募価格」、そして上場初日に初めてつく値段が「初値」です。つまり、この1年間に新規上場した株は、上場前に買って上場日に売れば儲かりつづけていたということです。しかも2割3割の話ではありません。今年の春から夏にかけては2倍3倍当たり前、最高で7倍!もの値がついており(写真参照=日経金融新聞より)、かなり異常な状況となっていました。まさに「IPO(株式公開)バブル」だったわけです。

写真のとおり、三星食品社長はかなり凹んで視線も虚ろに会見をしておりますが、不敗神話に終止符を打つというかなり不名誉な形で歴史に名を残すことになったのですから、その表情もやむ無しでしょうか。

しかし実は社長が凹むだけの話ではありません。今までいくら申し込んでも人気が高くて手に入らない公募株でしたが、儲からないかもしれないとなれば投資家は公募株に慎重になり、今後上場で資金調達を計画している会社に影響が出る可能性もあるのです。年内もまだまだ大規模なIPOが控えていますが、後から振り返ると市場の転機としてけっこう重大なニュースだったとなるかもしれません。

ただそれはむしろ正常な状態に戻っただけであり、長い目で見れば悪いことではないと思います。凹んでる社長のために、初値の公募価格割れが悪いと限らないという例を挙げておきましょう。
7月6日東証マザーズ上場(*)、初値が公募価格40万円の7倍の281万円となったリンク・ワンの9月29日現在の株価は99万円、初値から65%も下落しています。一方昨年9月17日東証一部上場、公募価格800円、初値780円で「最後の公募割れ」銘柄となっていたセンチュリー・リーシングの29日の株価は1211円、55%の上昇です。
企業に対する市場の評価は上場時に決まるものではありません。


*大証ヘラクレス市場、東証マザーズ市場はいずれも各証券取引所が新興企業などの資金調達ために上場基準を緩和した市場。