おはようございます。室温25.3℃、朝の血圧(146/96/65)。

 TODAY'S
 
暗中進化

目 次 

  1. 今年も来た
  2. 飛んでいるのは、まだ可愛い
  3. あれ、銀行に似ていないか
  4. 離陸は令和、着陸は昭和
  5. 通帳の厚みが人生だった
  6. 若い世代は銀行を意識しない
  7. 地下では静かに進んでいる
  8. そのうち子どもは言う
  9. 羽だけ進化している
  10. 今日の気づき

■今年も来た

畑に出ると、きゅうりとスイカとカボチャの葉に、今年も”あいつ”がいた。

本葉が出たばかりだというのに。

苗を植えた翌日には、もういるのだ。

どこかでジー――ト監視しているとしか思えない。

ウリハムシである。

■飛んでいるのは、まだ可愛い

この虫、見た目は茶色でツヤツヤしていて、飛び方も妙に可愛い。

離陸はヘリコプター。

フワッと垂直に浮くのに、
着陸は飛行機。

前進しながら、滑走路みたいに降りてくる。

「あら、今年も来たのね」

そう思った時にはもう遅い。

たぶん本人は、ずっと先に来ている。
こちらが気づく頃には、もう“食事会の途中”である。

(そして私は毎年ここで気づくけど、だいたい遅い。)

葉の上を飛んでいるのは、いわば余興である。

本体はとっくに地下にいて、根を食い、茎を食い、
きゅうりとスイカの内臓をスカスカにしていた。

飛んでいるのは可愛い。

怖いのは、見えていない部分だ。

■あれ、銀行に似ていないか

見た目だけなら、最近の銀行は完全に未来型である。

  • スマホ送金
  • 顔認証
  • AI相談
  • キャッシュレス

CMでは宇宙船みたいな音楽まで流れる。

「窓口に並ばなくていい時代です」

なるほど、便利そうだ。

私はその言葉を信じて、今日もアプリを開く。

そしてだいたい途中で詰まる。

■離陸は令和、着陸は昭和

ところが——いざ大事な話になると、話は変わる。

  • 相続
  • 本人確認
  • 代理人手続き
  • 住所変更

「窓口へお越しください」

しかも、平日の15時まで。

ここで私は毎回思う。

“あ、まだ飛行機は降りる空港が決まってないんだな”と。

■通帳の厚みが人生だった

昔、銀行には妙な安心感があった。

  • 通帳
  • 印鑑
  • 給料振込

「銀行に行く」それ自体が、生活の一部だった。

給料日の夜、ATMに並ぶ列。

通帳記帳の「ガチャガチャ」という音。

あの音を聞くと、なぜか働いた気になった。

近所のAさん(70歳・テニスおじさん)はこう言っていた。

「昔は通帳の厚みが人生やった」

今はスマホの残高画面である。

しかも数字だけ。

薄いし、軽い。
そして、すぐ不安になる。

(たぶん私の人生も軽量化されている)

■若い世代は銀行を意識しない

今の若い世代は、もっと自然だ。

  • PayPay
  • ネット証券
  • スマホ送金

銀行を使っていても、”銀行を使っている感覚”がまったくない。

もはや銀行は、空気とか水道のような存在だ。

止まると困るが、普段は意識しない。

そして私はその流れに一生懸命ついていこうとして、
アプリのログインでよく止まる。

■地下では静かに進んでいる

ただ——ここが厄介なところだ。

銀行はウリハムシと違って、食われる側でもあった。

融資、信用、決済、相続——社会の根を長年支えてきたのに。

今、その根の部分まで別の仕組みに侵食され始めている。

  • AI審査
  • 電子認証
  • デジタル通貨

気づけば支店だけが静かに減っている。

葉っぱは元気なのに、根だけ少しずつ弱っていく。

そして私は思う。

「これ、畑で見たやつと同じじゃないか」と。

そして毎年、同じ場所を見て、同じことを思っている。

(進歩していないのは虫なのか私なのか、たぶん両方である)

■そのうち孫は言う

「昔って、お金を紙やコインで持ってたの?」

「えっ、ATMって並ぶの?」

「印鑑って、スタンプ?」

私はたぶんそこでこう答える。

「うん、あれはね……ガチャガチャ鳴る機械でね……」

途中で自分でも説明が長くなり、
相手がもう興味を失っていることに気づく。

(このあたりで、だいたい人はスマホを見る)

■羽だけ進化している

畑では今日も、ウリハムシが自由に飛んでいる。

離陸は令和。

着陸は昭和。

飛び方だけ進化して、やっていることは変わっていない。

銀行も、たぶん同じだ。

スマホで離陸しておいて、大事なところは窓口に着陸する。

そしてその間を、何か別の仕組みが静かに進んでいる。

ウリハムシのように、気づかれない場所で。

■今日の気づき

人間も社会も、一気には変われない。

だからこそ、飛び方と着地点がズレる。

ウリハムシでさえそうだ。

そして私は今年も思う。

「またやられたな」

と。

そして畑で、見つけ次第ちゃんと捕殺している。

だが、かれらも離陸がうまい。