おはようございます。室温25.3℃、朝の血圧(146/96/65)。

暗中進化
目 次
- 今年も来た
- 飛んでいるのは、まだ可愛い
- あれ、銀行に似ていないか
- 離陸は令和、着陸は昭和
- 通帳の厚みが人生だった
- 若い世代は銀行を意識しない
- 地下では静かに進んでいる
- そのうち子どもは言う
- 羽だけ進化している
- 今日の気づき
■今年も来た
畑に出ると、きゅうりとスイカとカボチャの葉に、今年も”あいつ”がいた。
本葉が出たばかりだというのに。
苗を植えた翌日には、もういるのだ。
どこかでジー――ト監視しているとしか思えない。
ウリハムシである。
■飛んでいるのは、まだ可愛い
この虫、見た目は茶色でツヤツヤしていて、飛び方も妙に可愛い。
離陸はヘリコプター。
フワッと垂直に浮くのに、
着陸は飛行機。
前進しながら、滑走路みたいに降りてくる。
「あら、今年も来たのね」
そう思った時にはもう遅い。
たぶん本人は、ずっと先に来ている。
こちらが気づく頃には、もう“食事会の途中”である。
(そして私は毎年ここで気づくけど、だいたい遅い。)
葉の上を飛んでいるのは、いわば余興である。
本体はとっくに地下にいて、根を食い、茎を食い、
きゅうりとスイカの内臓をスカスカにしていた。
飛んでいるのは可愛い。
怖いのは、見えていない部分だ。
■あれ、銀行に似ていないか
見た目だけなら、最近の銀行は完全に未来型である。
- スマホ送金
- 顔認証
- AI相談
- キャッシュレス
CMでは宇宙船みたいな音楽まで流れる。
「窓口に並ばなくていい時代です」
なるほど、便利そうだ。
私はその言葉を信じて、今日もアプリを開く。
そしてだいたい途中で詰まる。
■離陸は令和、着陸は昭和
ところが——いざ大事な話になると、話は変わる。
- 相続
- 本人確認
- 代理人手続き
- 住所変更
「窓口へお越しください」
しかも、平日の15時まで。
ここで私は毎回思う。
“あ、まだ飛行機は降りる空港が決まってないんだな”と。
■通帳の厚みが人生だった
昔、銀行には妙な安心感があった。
- 通帳
- 印鑑
- 給料振込
「銀行に行く」それ自体が、生活の一部だった。
給料日の夜、ATMに並ぶ列。
通帳記帳の「ガチャガチャ」という音。
あの音を聞くと、なぜか働いた気になった。
近所のAさん(70歳・テニスおじさん)はこう言っていた。
「昔は通帳の厚みが人生やった」
今はスマホの残高画面である。
しかも数字だけ。
薄いし、軽い。
そして、すぐ不安になる。
(たぶん私の人生も軽量化されている)
■若い世代は銀行を意識しない
今の若い世代は、もっと自然だ。
- PayPay
- ネット証券
- スマホ送金
銀行を使っていても、”銀行を使っている感覚”がまったくない。
もはや銀行は、空気とか水道のような存在だ。
止まると困るが、普段は意識しない。
そして私はその流れに一生懸命ついていこうとして、
アプリのログインでよく止まる。
■地下では静かに進んでいる
ただ——ここが厄介なところだ。
銀行はウリハムシと違って、食われる側でもあった。
融資、信用、決済、相続——社会の根を長年支えてきたのに。
今、その根の部分まで別の仕組みに侵食され始めている。
- AI審査
- 電子認証
- デジタル通貨
気づけば支店だけが静かに減っている。
葉っぱは元気なのに、根だけ少しずつ弱っていく。
そして私は思う。
「これ、畑で見たやつと同じじゃないか」と。
そして毎年、同じ場所を見て、同じことを思っている。
(進歩していないのは虫なのか私なのか、たぶん両方である)
■そのうち孫は言う
「昔って、お金を紙やコインで持ってたの?」
「えっ、ATMって並ぶの?」
「印鑑って、スタンプ?」
私はたぶんそこでこう答える。
「うん、あれはね……ガチャガチャ鳴る機械でね……」
途中で自分でも説明が長くなり、
相手がもう興味を失っていることに気づく。
(このあたりで、だいたい人はスマホを見る)
■羽だけ進化している
畑では今日も、ウリハムシが自由に飛んでいる。
離陸は令和。
着陸は昭和。
飛び方だけ進化して、やっていることは変わっていない。
銀行も、たぶん同じだ。
スマホで離陸しておいて、大事なところは窓口に着陸する。
そしてその間を、何か別の仕組みが静かに進んでいる。
ウリハムシのように、気づかれない場所で。
■今日の気づき
人間も社会も、一気には変われない。
だからこそ、飛び方と着地点がズレる。
ウリハムシでさえそうだ。
そして私は今年も思う。
「またやられたな」
と。
そして畑で、見つけ次第ちゃんと捕殺している。
だが、かれらも離陸がうまい。





